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遠距離物語

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4年間の遠距離恋愛を終えた、私と恋人のこと
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#大学生

綿菓子と雨傘の夜

綿菓子と雨傘の夜

そういえば10月、恋人が地元に帰ってきていたのだった。

滞在期間1週間の間で私は彼の実家へ泊まりに行き、そして彼も私の実家に泊まりに来た。彼がやってきたのは、東京へ戻る1日前の夕方だった。

晩はみんなでごはんを食べながらお酒を飲んだ。食事を終えて、酔っぱらってお部屋に引き上げたあと、お布団の上でごろんと横になっている彼に、私はひとりで開けた缶チューハイを飲みながら、あれやこれや話しかけた。

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つかまえて、はなさない

つかまえて、はなさない

愛する誰かとずっと一緒にいるということは、たとえあたりまえに感じてしまう日が訪れるとしても、やはり特別なことなのだと思う。

連休の土曜日に保育園からのお友だちと会った。

私は昨年の夏、彼女と彼女の恋人についてのnoteを書いたから、もしかしたら記事を覚えてくれている方もいるのではないかと思う。

ふたりは中学3年生の春から付き合っていたけれど今年の夏に別れてしまった。あるとき、彼女のSNSの投

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ねてもさめても

ねてもさめても

夏が深まって、と書こうとしたけれど、果たして夏は深まるものなのだろうか。秋は深まるという表現を使うけれども、他の季節は「深まる」とは言わない気がする。

でも仮にそう言ってもいいなら、今現在夏は確実に深まっているし、それどころか盛りから少しずつ衰退していっているような気がする。

お盆が近いからだろうか。

私は昔から、胸のどこかで、お盆こそが夏の終わりの始まりを告げるものだと思っている。だっても

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お姫さまじゃなくても

お姫さまじゃなくても

物心ついてからずっと不思議に思っていたけど、いつもいつもお姫さまが王子さまの訪れを待たなくてはならないのはなぜだろう。

もし王子さまが来なかったら、お姫さまは待ち損じゃないのか。

いつ現れるかも分からないような知らない相手を待ち続けるだなんて、ある意味とても無謀なことなのに、なぜいつだって、お姫さまは甘んじてそれを受け入れるのだろうか。それがお姫さまがお姫さまたる所以なのだろうか。

ならば私

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やきもち

やきもち

私の恋人はやきもちを妬かない。

本当に妬いていないのか、それともすこしは妬いているけどあまり表に出てきていないだけなのか、どっち?と問われれば、おそらく、本当に妬いていないのだと思う。

私は以前、noteで「お月さまを追いかけて」という題の日記を書いた。
その目次の中に「マッシュボブの彼」という項目がある。

彼は私の大学の同級生で、同じ教授のもとで文学を学ぶ仲間であり、教員を目指す同志であり

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Butterfly Kiss

Butterfly Kiss

恋人の頬にまつげを軽く当ててぱちぱちとまばたきをすると、
「もう〜何してるの〜?何なのそれ?」と彼が笑うのがうれしくて、くっついていられるときにはしょっちゅうそれをしてしまう。

私は彼に対するとびきりの愛情表現のつもりでそれをしているけど、彼にとってはただ単にくすぐったいだけなのが、なんだかおっとりした感じで好ましい。

今年の夏やすみ、夜にお酒を飲んだあと、お布団のうえでじゃれ合いながらまばた

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甘やかな夕暮れ

甘やかな夕暮れ

おととい、いつぶりか分からないほど久しぶりに恋人以外の男の子の手に触れた。

正確には「触れてしまった」というのが正しい。印刷機のスタートスイッチを同時に押そうとしたせいで、うっかり手が当たってしまったのだ。

それで初めて気が付いたのだけども、どうやら私は普段、男の子の身体に触れないようかなり気を張って過ごしているらしい。

遠距離とはいっても立派に恋人がいるので、彼以外の男の子の身体に触れるの

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