パリの想い出は今、。 【ラ・ブティック(六本木)】
フランスに留学して良かったなと思う事は沢山あるけれど、特に喜びを感じるのが芸術をより楽しめるようになったこと。絵画や彫刻に限らず、食や音楽さらには文学を、留学前よりも愛するようになりました。
モネやシスレーなどの印象派の作品はずっと前から好きでした。柔らかな輝きの描写、踊るような色彩と揺れる輪郭。それらが放つ理屈抜きの美しさは私をうっとりとさせます。
しかし渡仏以来、パリの風景画を観るとこれまでの恍惚とは異る胸の高鳴りを感じるのです。パリの街並みは、都市改造が成された19世紀から今までほとんど変化がなかったのでしょう。私がパリに行ったのはほんの半年前のこと。100年以上前に写し描かれたパリの街並みも今とはあらかた同じです。「この道の手前には美味しいガレットのお店が。」「この橋の向こうにはルーヴル美術館が見えるはず」、まるで自分が絵の中に立っているような気持ちにしてくれます。記憶とイマジネーションが重なり合う瞬間、絵画を前にすると私は忽ちパリへとワープする。
文学もそう。目に見えているのは言葉だけなのに、自然とヨーロッパの景色が頭に浮かんで、まるで映像を見ているかのような気分になる。
原田マハさんという作家をご存知でしょうか。彼女の、人間が日々感じている自然の豊かさを丁寧かつシンプルに表現する描写がとても美しく、私の創作意欲を掻き立てる、まさにミューズのような小説家です。彼女の作品の多くはアートが題材になったもので、しばしば芸術の都市であるニューヨークやパリが舞台となります。先日図書館で手にとった彼女の短編集「シヴェルニーの食卓」に、南仏ニースが舞台となるお話がありました。その文章でも、ニースの可愛らしい街並みだけではなく、海の碧さや花々の美しさ、そこに住む人々を祝福しているかのような太陽の眩しさを彷彿とさせます。彼女の小説を読むと、私は異国の地に呼び寄せられるのです。
「旅はあなたの人生を豊かにする」
旅することに憧れを抱く人が増えてきた今日、誰しも1度は耳にしたことのある言葉だと思います。慣れない環境や言語、新たな出会い、困難、初めて感じる種の喜び。きっと、旅先で待ち受けるものに無駄なものなんてなく、全て私たちの世界を広げてくれるものなのでしょう。フランスに住んでいる時は観光の感覚で巡った美術館やカフェ、そこで眺めた景色の記憶が日本に戻ったいま、私の暮らしに「幸せ」となって残っています。
旅は私の人生を豊かにした。そんなことをリッツ・カールトン東京の45階、ラ・ブティックでティータイムを過ごしながら考えたのでした。
こちらはセサミレモンピラミッドというケーキ。国立美術館で行われているルーヴル美術館展に合わせて、ルーヴル美術館のエントランスにあるピラミッドを模した限定スイーツなんだとか。むしむしと暑い日の鬱気も吹き飛ばすほど爽やかなレモンキャラメル、びっくりするほど香ばしいセサミ、サクサクのタルトの組み合わせが最高で初夏の午後に御誂え向きです。
リッツ・カールトン東京 45階 ラ・ブティック
Tokyo Midtown 9-7-1 Akasaka Minato-ku Tokyo
11:00〜23:00
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