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落ち葉から作られた紙バッグが世界を変えていく

買い物したときに、何気なく受け取っている紙バッグ。そこには一体どれくらいの木が切られているのか、思いを馳せる人は少ない。

木を切らずに、落ち葉から紙を再生する。そんなウクライナのスタートアップ企業が、シャネルやサムソンといった世界的ブランドを顧客にもつ企業へと成長し始めている。その会社の名前は「Releaf Paper(リリーフ・ペーパー)」だ。

リリーフ(Releaf)とは、支援や救済という意味もあるけれど、同じ発音で綴りが違うリリーフ(relief)は、ほっとする安堵感や安心をも意味する言葉だ。リリーフ・ペーパーというネーミングからして的を得ていてすばらしい。

しかもリリーフ(Releaf)のRe は、繰り返しや再生の意味をもつ接頭語。つまり葉っぱであるリーフのアタマにReをつけて、落ち葉の再生を意味するという、なんとも見事なネーミングだ。

同社は世界初の技術で、紙をつくる時に排出するCO2の量を通常の78%、水の使用量を93%削減。価格は従来の紙よりは20~30%ほど高いけれど、他の代替品と比べると50〜70%ほどの低価格化が実現できる。

低価格化のポイントの一つは、原材料の調達方法だ。使用する落ち葉を、住宅街や公園といった都市の生態系の中から収集する。落ち葉は燃やすと一酸化炭素など大気汚染ガスが発生するけれども、燃やさずに回収することで、地球に優しい方法で再利用できる。


晩秋に地面を埋め尽くす落ち葉が雨に打たれるのを見て、同じように胸を打たれた若者がいた。リリーフ・ペーパーの共同創業者であるアレクサンダー・ソボレンコさんだ。

この美しい落ち葉はみんなただ、捨てられていく。なんてもったいないことか。彼の心にふっとわいたそんな思いが、後の事業のきっかけとなった。

わずかな資産ではじめた事業はすぐに投資家の注目を集めた。

リリーフ・ペーパーが世界に与える影響は、数字で見るのが一番わかりやすい:

* 落ち葉から作られたセルロース1トンあたり17本の木が節約される

* セルロース3トンあたり1トンの葉を、燃やしたり腐らせたりせずに利用する。
* 従来の木材を原料とした紙製造に比べ、CO2排出量を78%削減。

* 廃棄物製造に比べ、CO2排出量を36%削減。

* 従来の木質系製紙に比べ、水使用量を15倍削減

* 従来の木質系製紙に比べ、電力使用量を3倍削減



リリーフ・ペーパーの紙袋
「このバッグを作るのに一本の木も切られていない」というメッセージが印刷されている



「木材から紙を生産するというのは、一見すると持続可能なアイデアに見えるけれど、この生産方法がもたらす生態系の問題について、私たちは多くの疑問を抱いている」。ソボレンコ氏はそう語る。

このプロジェクトを作った第一の目的は、毎年、市のインフラに不便をもたらす、市の葉のリサイクル問題を解決することだとソボレンコ氏は言う。

排水溝の詰まり(葉が排水溝に流されると、窒素やリンを放出し、汚染物質のように働き、有害藻類の発生、水路のデッドゾーン、魚の死滅の原因となる)、トラム跡、燃焼、腐敗による不快臭、何十万トンの廃棄にかかる高い財政コスト(時には1トン70ユーロ、これは納税者のお金)などだ。

さらに生態系への配慮も成されている。木の葉はセルロース、ヘミセルロース、リグニン等から構成されているが、リグニンやその他の複雑な分子とは異なり、マグネシウムやカリウムなどの微量元素の供給源となり、樹木や草などを養うことができる。

そこで、リグニンやヘミセルロースを浮遊させ、その後濃縮してバイオ肥料(=消化の良いバイオヒューマスを同じ都市に戻す)として還元することができるのだ。

「そこで私たちは、紙を作るには木よりも葉っぱの方がずっと良いという考えを証明する数字と科学的根拠を集めた」。その技術の独自性と需要は科学界で確認されていて、欧州委員会、世界自然保護基金、Google、Canopy planetなどからも支持されている。

この落ち葉のリサイクル方法によって、紙の製造に使用されるような有害化学物質を使わず、しかも原生林で何百万本もの木を伐採することが防げる。

しかもこのスタートアップが、戦火の中にあるウクライナの起業家たちによって始められたことは特筆すべきだ。





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