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読書日記

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読んだ本の感想を時々書きます。
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記事一覧

『ユリイカ  総特集日本の男性アイドル』の感想②  カキン・オクサナ「日本の男性アイドルの文化人類学ーー「未熟さ」を愛でるファン文化の検討」

 タイトルの前半でおっ、と興味をひかれるも、タイトルの後半を読んでおう…となる。そんな人も多いのではないだろうか。「未熟さ」ときたか。アイドルは未熟であるがゆえに、ファンはその成長過程を応援する。そしてこうした未熟さを愛でる文化は日本古来のものだ…。まさかそんな話が続くわけではないよな…などとおもいながらページを繰っていった。

 そのまさか、だった。もちろん記述は整理されたものだし、慎重さも感じ

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『ユリイカ  総特集日本の男性アイドル』の感想①  筒井晴香「「推す」という隘路とその倫理――愛について」

男性である私が、女性アイドルのオタクで、推しがいることを口にすると、しばしば「付き合えないのになんで?」といったようなことを言われる。こういうときに「いや、そういうんじゃなくてさ」と、アイドルの魅力を語り始めるのはたぶん悪手だろう。そうではなくて、こう切り返すべきなのだ。「なんで付き合う可能性がなかったら愛は成立しないっておもってるの?」。

筒井がこの文章でやっていることは一貫し

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【感想】姫乃たま『アイドル病 それでもヤメない29の理由』+大木亜希子『アイドル、やめました。 AKB48のセカンドキャリア』

 姫乃たまの新しい本が出るということで迷わず発売日に購入し、今日読んだ。すると以前買ったまま放置していた大木亜希子『アイドル、やめました。』に連想が及んだので勢いで読んだ。両方を読み終わってから気づいたが、なんと対照的なタイトルであることだろう。でもどちらの本にもおおむね同じようなことが書かれていたような気がする。いやもちろん当然ながら、これら二つの本の中で取り上げられているアイドルや元アイドルた

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【書評】『柚莉愛とかくれんぼ』の「リアリティ」

【書評】『柚莉愛とかくれんぼ』の「リアリティ」

 困ったことになってしまった。『柚莉愛とかくれんぼ』、真下みことさんのデビュー作だ。これを書いているのが発売日当日ということもあり、著者のTwitterフォロワー数は100に満たない。私はすでにフォローしている。そして発売当日にデビュー作を読み、この感想を書いている。この記事を書き終えて公開した後、リンクを貼りつけてツイートすれば、リツイート、まぁ少なくともいいねはつく。これで私も立派な真下さんの

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【読書日記】島尾新『水墨画入門』(岩波新書)

【読書日記】島尾新『水墨画入門』(岩波新書)

 電子書籍はとても便利なものだが、まだまだ不便なところもあって、そのうちの一つに、立ち読みできないというところがある。最近では目次とかは買う前に覗けるみたいなこともあったりするが、そういうことじゃない。目次ももちろん大事だけど、そうじゃなくて全体をパラパラめくりながら眺めてみることで、その本の雰囲気を知ることもまた大事なのだ。

 少し前のこと、会社の帰りにいつものように梅田の紀伊国屋書店に寄った

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【読書日記】労働が気晴らしになるときーー川崎昌平『同人誌をつくったら人生変わった件について。』

【読書日記】労働が気晴らしになるときーー川崎昌平『同人誌をつくったら人生変わった件について。』

 働いているときにこれは気晴らしだ、とおもって働いている人なんかまあそうそういないだろう。でもそうおもえるようになるんじゃないかという可能性を見せてくれる本に出会うことができた。川崎昌平『同人誌をつくったら人生変わった件について。』がそれだ。

 実は以前に、この本のもとになった『労働者のための同人誌入門』の第一巻を電子書籍で読んだことがあった。続きが読みたいなぁ…とおもっていたら、気づけば幻冬舎

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【読書日記】カルロ・ロヴェッリ『すごい物理学講義』(河出文庫)

【読書日記】カルロ・ロヴェッリ『すごい物理学講義』(河出文庫)

 最近、書店でよく『時間は存在しない』という本を見かけた。哲学書コーナーにもあったので哲学者の本かとおもっていたら、よく見ると物理学者の本で、少し気になっていた。そんなとき、この本を書店で見つけた。どんなタイトルやねん…でもすごそう…とかおもいながら見ているとどことなく既視感が。そう、筆者のカルロ・ロヴェッリは、『時間は存在しない』を書いた人だった!

 しかも、訳者あとがきを覗いてみると、『時間

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