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【ブックカバーチャレンジ】女性リーダーシップ系

私は、DINKSで子どもがいないこともあり、また、仕事が嫌いでなかったこともあり、結構仕事を頑張ってきて、そこそこ成果をあげてきた。その結果、いつの間にか、それなりの数の部下を束ねる管理職ポジションに就き、女性リーダーと呼ばれることが増えた。外資系は成果主義であるとはいえ、ここ最近の「ジェンダーダイバーシティ」「女性活躍推進」の流れが追い風になったことは否めない。下駄をはかされて出世した、と皮肉を言われたことも少なくない。

今でこそ女性リーダーは増えてきたが、過去10年ほどを振り返ると、私の所属した複数の会社のリーダー集団では、課長、部長レベルでも、いつも女性は1割にも達しない少数派だった。役員レベルになると、ゼロとか、せいぜい1,2人という体たらくだった。

自分がその少数に入ったとき、猛烈な違和感と緊張を感じた。マイノリティーとは、こういうことだったか。ああ、あのときに似ている。20代で初めて海外(イギリスの地方でホームステイ)に行ったときに、アジア人が私ひとりで注目されすぎて怖かったことを思い出した。

黒一色の会議室で、何か意見が言いたくても、男性たちの同調圧力に圧倒され(と自分で思い込んでいただけだが。)、喉まで出かかっている言葉を飲み込む。その結果、ほかの男性に同じ意見を先に述べられ、ああ、しまった、やはり勇気を出して発言すればよかった、と後悔することも多かった。もちろん、これは、女性だから、というより、私が性格的に小心者であることにもよるのだろうが。

前置きが長くなったが、リーダーとして自信をもって行動したいと強く思うようになった私は、ロールモデルを探した。ただ、あいにく、ロールモデルにしたい先輩女性リーダーは身近にいなかった。そんななか、リーダーシップに関する色々な本を読んでみた。一般的に、良書とされて男女問わず広く読まれているリーダーシップ書籍も読んだ(これらについては追って別記事でまとめたい)が、女性であることを念頭に置いたリーダーシップについて書いた本を読み、心に残ったことを、備忘を兼ねてまとめておきたいと思った。

(※ブックカバーチャレンジとは何かについては、こちらの記事をご参照ください。)

1.『LEAN IN』(「リーン・イン」) (Sheryl Sandberg) (2013)

フェイスブックCOO、シェリル・サンドバーグさんの有名な本。これが出版された頃には大変な評判だった。このレベルのエグゼクティブのこれだけの大作を読んだのが初めてだったので、すべてが衝撃だったが、以下の2つのくだりが特に印象に残っている。

まず、Imposter syndrome(インポスター症候群)のくだり。とりわけ女性に多いらしいのだが、自分の仕事の成果を実際より低く見積もる傾向がある、ということだ。日本語版では、女性特有の詐欺師感覚、と訳されており、自分の業績を褒められると、詐欺行為を働いたような気分になる。自分を後押ししてくれた人や自分の成功についてお祝いを言ってくれる人に困惑や当惑を示してしまいがちだが、それは、自信のなさを暴露するのと同じことだ。その人に失礼である。「おめでとう」と言われたら、「ありがとう」と答えればよいだけのこと。

これには、大変こたえた。まさに自分がその症候群に陥っていると思った。出世が人より若干早かった分、周りから、すごいね、と言われることも多かった。そうすると、反射的に、「いえいえ、まぐれです」「たまたま幸運だったんです」と、謙遜する回答をしてしまっていたが、それではいけなかったのだ。自信のなさを暴露するし、自分自身にも、自分を取り立ててくれた会社や上司を裏切ることになるし、自分で自分の成功やポテンシャルに自信を持てなくて、パフォーマンスを発揮できるはずがない。これには、猛省した。

もうひとつは、メンターについてのくだり。外資系の会社で何度か経験したのは、人事部のお膳立てしたメンター制度である。女性リーダーが少ないから、女性をリーダーに育てるにはメンターが必要だ、だから先輩女性リーダーをメンターにあてがおう。そのように考えて、人事部がメンター、メンティーをマッチングさせ、月に1回などの決まったペースで自動的にミーティングを組んで会話していく。

しかし著者は言う。メンターを得れば群れから抜け出せる、というのとは話が真逆で、むしろ、群れから抜け出せばメンターが得られる、と。 メディア界大物のオプラ・ウィンフリーさんの言葉が引用されているが、メンターになってほしいと頼まれるのは気持ちのよいものではない。私がメンターになるのは、誰かに目を留め、あの子が成長するのを見届けたいと思ったときだけだ、という趣旨のことをおっしゃったということである。

これにも衝撃だった。会社のメンター制度も、メンティーとメンター側の両方の立場で経験し、それはそれでとても有益だと感じていた。ただ、これを読んで、本当のメンター・メンティーの関係は、受動的に与えられるものではなく、後輩が自発的に先輩に連絡して、助言やフィードバックを求めたりすることによって始まり、先輩のほうも後輩のポテンシャルを認めて積極的に見守りサポートする。理想的なメンター・メンティーの関係がその結果として自然にできあがるのだ。メンターに頼ってはいけないのだ。

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2.『Games Mother Never Taught You』(邦題:『ビジネス・ゲーム 誰も教えてくれなかった女性の働き方』)(Betty Lehan Harragan)(1978)

これは40年近く前に出版された本である。やはりちょっと古いなと思うところもあるが、なかなかどうして、なるほど、と納得する話が多く、どんどん心に刺さってくる。

ビジネスとは、ゲーム。女性は会社の「外国人」で、会社は「軍隊」。責任の範囲を超えると「食いもの」にされる。ビジネスはスポーツに似ている。男性は負けても自分をコントロールして平静な態度を取り続けることを学んでいる。失望、落胆、困惑、非力、批判などにどう対応するかを学ぶべき。男性だけのグループに女性が1人入ることは基本的に不愉快なものであることを受け入れること。それを考慮して感情をコントロールする必要がある。など。私がこの本に出会ったときは、たまたま、マイノリティーとしての様々な負の感情にうちのめされそうになったときだったので、一筋の光明が見えた気がした。

ユニークだと思ったのは、男性の弱点はここだ!というくだり。男性は、「女性も男性と同等の思考能力を持っている」ということを信じられず、多くの場合、女性をステレオ・タイプでしか見ることができず、「母親」「姉妹」「妻」「娘」もしくは「ガールフレンド」か「娼婦」のいずれかにあてはめなくては相手を認識できない。その結果、男性は女性を人間として見ない態度を取ってしまう。考えようによっては、こちらは相手のことが十分分かって、相手はこちらのことが分からないとしたら、断然こちらが有利。そこで、相手の頭の中にあるステレオ・タイプを利用して「娘」や「母親」のイメージを使って演じるのも一つの手だという。このくだりは、さすがに世の男性に失礼ではないかと思ったが、周りをよく見ると、特に年配の人には確かにこういう感じの人が一定程度いるような気もする。そういう人には「無邪気なかよわい娘」の役割を演じて、「無防備な父親」の協力を得るのもテかもしれないと思った(そういうの苦手なのであんまり実践できていないけど。)。

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3.『How Women Rise』 (Sally Helgesen and Marshall Goldsmith)(2018)

これは、比較的新しい洋書で、私の知る限り、まだ和訳されていないと思う(もし間違っていたらすみません)。この本の出版当時の勤務先の、海外親会社で活躍していた女性リーダーから薦められた。副題("Break the 12 Habits Holding You Back from Your Next Raise, Promotion, or Job")にあるとおり、女性の昇進の妨げとなっている12の習慣を打ち破ろう、というものである。とても平易な英語で書かれており、読みやすい。

そのうちの最初に出てくる習慣1が、"Reluctance to Claim Your Achievements"、つまり、自分の成果を主張することを躊躇すること、とある。上記Lean Inで出てくるインポスター症候群の話と似たような話であった。やはり、と膝を打った。やはりこれが、女性リーダーの成長を足止めする大きな要因なのだ。

これらの12の習慣の根は共通で、要は、女性は、真面目で、完璧を目指す傾向があり、他人の気持ちに配慮でき、競争を好まない、という共通のパターンに起因する。それらがこういった習慣になって現れ、女性が自分自身の出世の道を自ら閉ざしているというのである。

海外、特に欧米の企業では、日本とは比べ物にならないくらい女性活躍が進んでいる印象であったが、それでも、このような本が、つい最近出版され、既にグローバル企業の本社幹部として大活躍している女性リーダーがそれを読んで学んでいるというのだ。女性リーダーシップというのがまだまだ万国共通の課題なのだということがわかって、少しほっとするとともに、世界の女性リーダーの一員として頑張らなければならないな、と思った。

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4.『女性の品格』(坂東眞理子)(2006)

こちらも大変話題となった名著。出版された時代は、既に女性の社会進出が進みつつあった頃。そのころ、あえてなぜ女性の品格なのか、この期に及んで、前時代的で固定的な女性らしさをあえて論じようというのか?と疑問を持ちながら読み始めた。

読んでいて、あれ、と思った。ファッションや化粧のことなど女性特有のものも若干あるが、それ以外の、品格のある話し方、品格のある行動などは、むしろ性別に関係のない、責任感、優しさ、思いやり、丁寧さ、といった要素の、いわば人間の品格ともいうべき話が続く。書かれていることには全く違和感がないうえ、忙しさを理由におろそかにしていたことが多く、自分の行動には品がなかったかも、と素直に反省させられる内容だった。

ただ、最後の章で、女性に向けたメッセージがあった。「愛されるより愛する女性になる」というくだりでは、女性は愛されることが幸せと思いがちだが、そうではなく、女性はできるだけ周囲の人たちを愛しましょう、という。「内助の功」というくだりでは、女性は夫の内助に徹しろ、というメッセージではなく、むしろ逆に、行き過ぎた一心同体ぶりに気を付けて、自分は自分、夫は夫、とけじめをつけよ。という。「品格ある男性を育てる」というくだりでは、男性は、お金や資産や将来性だけで男性を選ぶのではなく、品格を重視せよ、それによって男性が品格を身に着けようと切磋琢磨して日本の社会を品格あるものにする、というのである。

結果的に、本のタイトルから私が勝手に想像したような、前時代的な女性的なイメージの押し付けとは真逆で、むしろ、女性の自立を促しつつ、ただし、急速に女性の社会進出が進んでも、勘違いせず、権力志向、拝金志向に陥ることなく、丁寧に、品よく行動しなさい、というアドバイスだと感じた。それなら素直に受け止められる。著者が日本における女性リーダーの先駆けのような方であるだけに、重みがあった。

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5.『THE RULES』 (邦題:『ルールズ 理想の男性と結婚するための35の法則』) (Ellen Fein, Sherrie Schneider)(1995)

これはやや番外編。ネタバレになるかもしれないが、理想の男性の心をつかむためには、一言で言って、男は狩人なので、追うのではなく、追われるようにしなさい、リードは男に取らせなさい。自分から男性に決して電話してはならず、なかなか落ちない女を演じなさい、というもの。日本語版が出た頃は、多分私はもう結婚していたと思うが、この本に出会い、自分がこのRulesとは正反対のことをしてきたことが分かり衝撃を受けた。だから学生時代に全然モテなかったのか!と目から鱗が落ちたのを覚えている。これを学生時代に知っていたら、もっと別の出会いがあったかもしれない???

企業で女性がリーダーシップを示すのに、何の関係があるの?と思うかもしれない。実際、多分あまり関係ないだろう。けれど、周りに女性リーダーのお手本が少ないと、周りの男性リーダーの男性的リーダーシップをついつい真似しがちになってしまう。だけどそれでは逆効果なのではないか。それよりも、この本の教えを応用して、男性リーダーに、彼女と仕事をしたい、と思わせるような、独自のスタイルを模索するほうが、マジョリティーである男性リーダーたちと賢くうまくやっていけるのではないかと思った次第である。うまく言語化できないが、自分の目指したいのは、冷静で、温かく、しなやかで、芯の通っている、竹のようなイメージかなと思っている(私の部下が聞いたら噴き出すのではないかと思うが…)。

6.『働く女性が幸せになるための60の約束』(鈴木由歌利)

天井をつくらない。会社の悪口をいわない。年上の女性とつきあう。言いにくいことは真っ先に言う。今の自分を肯定する。私なんて…といわない。まず感謝する。などなど、実践しやすいアドバイス満載。

7.『私の仕事道』(日本能率協会マネジメントセンター)

沢山の女性リーダーのインタビュー集。資生堂、IBM、日産自動車などの企業リーダーの数々のメッセージ。いつもいい人でなくてよい。船の居心地がよくなったら、次の船に移るとき。相手への期待値は極力低くしておく。仕事はやらされ感を持った時点で終わり。そこを超えたら、違う世界が広がっている。与えられたチャンスは断らない。CanではなくWill/Mustという発想。1つの扉が閉じたら100の扉が開く(イタリアのことわざ)、などなど。

8.『働く女性!リーダーになったら読む本』(太田彩子)

著者は、1975年生まれの営業畑の女性。バックオフィスの私には参考にならないか?と思ったが、共感するところは多かった。「嫌われたくない病」にかからない。上手に断る。意思決定の軸を「相手」ではなく「組織としてどうか」に合わせる。感情をコントロールするには、①まず心を落ち着け、②相手の立場になって考え、③すぐに結論を出さず、期限を決めて考えてみる。年上の部下には戦わずして勝つ(孫子)、頭を下げて「教えて下さい」「代わりに現場の意見が受け入れられるように精一杯努力します」というスタンスを取る、など。

9.『部下を好きになってください』(内永ゆか子)

日本IBMで女性初の取締役になった方。有名な方だし、カリスマ的で、私とは別世界のスーパーウーマンだと勝手に思っていたのだが、彼女のような方でも役員になるまでに苦労した様子や、つらかった様子が、リアルに綴られていて、身近に感じた。また、優しい語り口も素敵だと思った。

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以上、とりあえず思いつくまま記した。とにかくこの手の本は見つけ次第買ったり、図書館で片っ端から借りたりして読み漁ったので、また思い出したら、追加して更新したい。

以上は、私がこれらの本を読んだその時々につけた読書ノートをベースに再現した。こういう本を読むときは、そのときどきの自分が直面している課題について触れているくだりが自然と目に入ると思うから、切り取った部分が偏っているかもしれない。リーダーシップのステージが変わるとまた印象に残ることが変わるだろうから、時間を見つけて読み直してみたい。これは本のジャンルを問わず、あてはまることかもしれない。人生のステージに応じて、刺さる箇所、印象や記憶に残る箇所が変わるのも、読書の奥深いところ、素敵なところなんだろうな。

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