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短編小説

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#エッセイ

『その時差、7時間』

『その時差、7時間』

妻の桜子が、会社からのドイツのデュッセルドルフへの赴任を命を受けて、この部屋からいなくなったのは3年前。その前からふたりで借りていた部屋は、桜子がいないぶん、ひとりでは持て余すほどに広く感じる。たった1年ちょっとしか、ふたりでは居なかった。

こちらはいつものように仕事が終わるとすぐに、桜子に定型連絡のようなメールをする。"おつかれさん。今日はどんな感じかい? こっちは終わったぜ"と。

ドイツは

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『結婚式、準備しますよ』

『結婚式、準備しますよ』

「そろそろ打合せ行くで。準備はどや?」優斗が聞いてくる。あたしは「んー大丈夫」と答えて、少しの荷物をまとめて2人で部屋を出る。

今日は挙式前の最後の打合せだ。優斗は準備万端に資料を整えているようだった。マメというか細かいというか、あたしの出る幕はドレス選びぐらいのもんだった。後は全て彼が話を進めていた。こんなとこでもデキる男である必要はないけど、安心して彼の背中を頼りに見つめていた。

挙式会場

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『DINNER WITH FRIENDS・それぞれの場合 ~ジャズ研 恋物語 Another story 4~』

『DINNER WITH FRIENDS・それぞれの場合 ~ジャズ研 恋物語 Another story 4~』

 ある日の昼頃、大学で部活が一緒だった菊田から連絡が入った。オフィスを離れエレベーターホールで内容を思案しながら、電話を折り返す。
 「今度、数人で晩メシでもどうよ? 藤川さんも誘って、さ?」という中身。藤川は俺の彼女・桜子の苗字だ。二つ返事で快諾した。桜子もきっと喜んでくれるはず。
 オフィスに戻ると、営業課で直属の先輩の大貫さんが意地悪く言う。「篠崎、ヒマそうにしてっけど頼んだ資料終わってるん

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