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#小説
【応募作】ルネの首③
年下の三人とルネを対面させると、当然ながら子供たちは怯えて叫び声をあげた。
一番年下のエミルなど、大声で泣き出したくらいだ。
「やっぱダメだよ、生首は。きょうよーとやらよりも必要だろ、カラダ」
『必要ない。人間は知性とコミュニケーションで、社会性を築く生物だ。身体がなくても、社会性は失われない』
「しゃかいせー……」
『そうだ。人との関わりが大切ということだ。このカプセルに入っていれば、生首で
【応募作】ルネの首②
セツェンは、ナオたちのグループのリーダーだけども、他の子供たちとは少し違う。
読み書きもできるし、たくさんのことを知っている。そして仲間想いだ。髪を変な色に染めているのも、「俺が目立つと他のヤツらが逃げやすいから」らしい
セツェンは、基本的に仲間には「できること」しかやらせない。
彼のことは信頼しているし、任せておけば間違いはないと思っているけれど、セツェンが何でも危ないことを一人で引き受
【応募作】ルネの首①
ナオは、路地裏でそれを発見した。
奇妙な円柱形の物体で、持ち上げると意外に重い。
試しに揺すって見ると、チャプチャプと水音がした。そして、何かが中で動いた気配。
『おい、ソザツに扱うな』
「なんか聞こえた」
声がしたような気がする。正直、気のせいだと思いたい。だけど好奇心は刺激されてしまい、円柱をくるりと回してしまった。
後悔した。それと目があったからだ。
円柱の中には薄青い液体と、少
【応募作】切り裂きジャックの愛弟子(あらすじ・連載部門)
子供の頃から毒物を与えられて猛毒体質に育てられた少年、シア。シアはある日「顔のない男(ジャック)」と呼ばれる暗殺者に金で買われた。
ジャックはシアのことを暗殺の道具として使うのではなく、自分の弟子として育てるつもりのようだった。
ジャックに食事や寝床を与えられて、シアはジャックに少しずつ気を許していくようになる。毒で弱っていたシアが少しばかり健康を取り戻した後、ジャックはシアを外の世界に慣れさせる
【応募作】切り裂きジャックの愛弟子③
「シア・ティエはこの国の人間には発音しづらい。表向きの名前を別に考えよう」
シアの白い髪を染め粉で黒くしながら、ジャックは急にそうのたまった。
「サマー・バタフライだと直訳すぎるし、人名っぽくないな。こう、適当に語呂合わせをするか。サム……サミュエル・バートンなんてどうだろう?」
「……いいですけど」
「どうでもいいですけど、の間違いじゃないか? そう言う顔をしている」
「実際、どうでもいいです
【応募作】切り裂きジャックの愛弟子②
「『顔のない男』が、道楽で毒物を買いつけたって?」
「話が早いな、マスター」
パブの片隅でシェリーのグラスを傾けながら、『顔のない男』はマスターと小声で会話をしている。ざわついた店内で、聞こえるかどうかギリギリの声音で交わされた会話を、耳ざとく聞きつけるものはいない。
もっとも、本気で同業にすら聞かれたくない会話であれば、こんな場所では会話すらしない。別に適切な場所はいくらでもある。だからこれ
【応募作】切り裂きジャックの愛弟子①
自分はこのまま、どこかで見知らぬ誰かを殺して、自分も死ぬのだろうと思っていた。
そういう風に育てられた。『蠱毒』と呼ばれる子供たちの運命は、羽虫のように儚い。毒に慣らした子供の中から、生き延びて容姿が整っている者だけが売りに出される。
死にかけたもの、毒で皮膚がただれて見目が悪くなった者は、容赦なく殺されてその肉を別の用途に使われた。
殺されるか、死ぬかしかない。この場所に売られてきた子供