見出し画像

酔いどれ雑記 27 異国で読書


「旅行行くときって、何か暇つぶしに本とか雑誌持って行ったりするの?」と訊かれたことが多いのですが、正直いうと謎質問でした。ガイドブックは持って行くかな、と答えると「そうじゃなくて飛行機の中で読んだりホテルとかカフェとかで暇なときに読む雑誌や本!」って言われるんですけれども、旅行するのに日本から本や雑誌を持って行く理由が私にはないので、他の人って普通持って行くのかな?って思ったんですよね。飛行機の中で読む、これはまぁ理解できます。特に私はほぼ旅行は欧州ばかりでしたから、片道10数時間掛かりますので、ずっと寝ているわけにもいかないですし(なお私は飛行機ではほぼ眠れない性質です)、機内誌はすぐ読み終えてしまう、映画もなんだかつまらないのしかやっていなかったり。当時は機内でネットなども出来ませんでしたから(そもそも私は旅行にPCは持って行きませんでした。スマホも今より全然普及してなかった頃です)。けれどホテルやカフェで暇なときに日本から持ってきた本や雑誌を読むっていう発想が私にはありませんでした。そもそも暇と感じる時間なんてないですよ。本を読むより街を歩いたり、風景の美しさを堪能したいですからね。そのために旅行に行くんですし。この本を持って行かないと眠れない(ライナスの毛布的役割として)というような事情ならば別ですけれども。

私は日本から持ってきた本や雑誌を読むくらいなら、たとえ読めなくても面白そうだと思った現地の雑誌や本を買って見ます。記念やお土産にもなりますしね。旅行中は出来るだけ本屋に行くことにしています。国ごとの特色とか、どんな本が人気なのか見るのは最高に楽しいです。何階建てかの大型書店となると文房具売り場があったり知育玩具なども売られていてこれまたわくわくが止まりません。一日いても飽きないくらいです。小さい個人経営の書店もいいですね、ディスプレイに工夫を凝らしていたり、主人の趣味全開、なんかやたらこだわっていたり偏っていたり。

あるルーマニアの町に行ったときのことです。町の規模に対して、やたら本屋があるので現地の方にどうしてか訊いたことがあります。「独裁政権時代、テレビをつければどこもずっとつまらない政治家の演説ばかり流していたから、老いも若きも本を読んでいた。その名残で、今でも趣味が読書って人が多いんだ」とのこと......。ひょっとしたらこれはルーマニアだけのことだけではないのかも知れません。メディアがどうでもいい情報を垂れ流し、それにうんざりした人が読書に走るという傾向は。

旅行に行くのに日本から本や雑誌を持って行くのはナンセンスではと言いましたが、私的に例外があります。それは現地が舞台の作品を読んで浸りたいといった場合です。ヘッダー画像はポルトガルのホテルで撮ったものですが、フェルナンド・ペソアをヨーロッパ、ユーラシア大陸の最果ての地で読むなんて最高ではありませんか。

旅行のとき、本持って行く?という質問の亜種に「旅行中、音楽って聴く?」というのもありますが、これは現地で生演奏を聴くか?ということではなくて、旅先で日本で普段聞いているような音楽を聴くか?ということであることが多いです。これまた不思議な質問だと思ってしまう私はなんかずれているのでしょうか。本と同じで、別段理由がなければ、現地の音楽を聴く方が楽しくないでしょうかね。私はイスタンブルの露店で「伝統的クルド音楽」と書かれたカセットテープ(!)を買ったことがあります。どんな音楽か想像もつかなかったので気になってしまいまして。で、実際聴いてみたら、どこが伝統音楽じゃい!というようなものでした。なんて歌っているか分かりませんが、ラップ(ヒップホップ)でした。一体どんな社会問題や不満がぶつけられているのか大変気になるところでしたが、クルド問題はかなり複雑ですし、日本人の私が容易に立ち入れる領域ではありません。ですからイスタンブルで知り合いになった人たちに「これ、なんて言ってるの?」と訊くことも憚られました。見た目や会話でこの人はクルド人かだなんて分かりませんし、自分から名乗ることもあまりないでしょう。尤も、クルド語を話せるという人と何人も知り合いになりましたが、歌詞の内容を訊く勇気はありませんでした。

旅行中の、本に関する話はほかにも沢山あります。今私が忘れているだけで、ひょんなことからこんなこともあったなぁ......としみじみしてしまうエピソードを思い出すこともあるかと思います。その時にはまた書きたいと思いますが、今回はあと2つだけ。

ウィーンで一番格式あるホテル、Hotel Imperialに泊まった時のこと。部屋に入るとテーブルに雑誌が1冊置いてありました。それはPASHION Magazineという雑誌で’The Modern Arab Woman's Fashion Source’とありました。中を見てみますと、モード系の雑誌のようで、欧州の一流ブランドや装飾品などが掲載されていました。VOGUEとかELLEとか、あの系統の雑誌ですねーーただし雑誌のコピー通り、モデルはほぼアラブ系女性ばかりです。アラブ女性といっても、ヨーロッパ人のモデルと変わらない服装をした人ばかり。チャドルや伝統的な衣装を身につけてはいません。なぜこんな雑誌がテーブルに置かれていたかは分かりません。私の前に泊まった客の忘れ物でしょうか(でも、あんな目立つところにあって客室係が気付かないわけがありません)。ホテル側が用意したものとも思えないのでちょっと謎ですけれども、こんな雑誌を愛読するような人が泊まるホテルなんて、私なんかに相応しくないなとちょっとだけ落ち込みましたね。まぁ、そんな雑誌がなくとも私なぞお呼びでない、場違いだってことは分かっていましたが。

次はところ変わってインドのデリー。インドで車に乗って移動していると、信号待ちしている間にストリートチルドレンなのか、10歳くらいの少年少女が近づいてきて色々な品物を客を見定めて売りに来る光景がよく見られます。私は少年から一度、モードファッション雑誌マリ・クレールのインド版を買ったことがありました。定価+少しの額を渡したけれど、ちょっと不満そうでした。ちなみにビニールで包まれた新品。どこで手に入れたのでしょうかね。また、インドでこんな雑誌を読んでいる層、掲載されているような品物を購入できるのは一体どのような生活をしている方たちなのだろうかと考えてしまう出来事でした。



この記事が参加している募集