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「稚拙で猥雑な本能寺の変」14・15

●第7幕
○シーン14 安土城・祈りの間

フロイスがアメイジンググレイスを歌っている。信長、明神。

フロイス「主、デウスに栄光あれ。アメー」
信長  「フロイスどきなさい」

信長がフロイスを押しのけて司祭の位置へ。

信長  「デウス。やっぱりあなたは何もできないのね」
フロイス「・・・」
信長  「神は人の上に立ち、人のために為し、人に幸福をもたらさねばならない。私こそが神に相応しい。私はあなたに代わって神になるわ」

そこに来る蘭丸。

蘭丸  「御屋形様」
信長  「なに?」
蘭丸  「6月1日の茶会が決まりました」
信長  「そう。場所は?」
蘭丸  「それが・・・」
信長  「どこ?」
蘭丸  「本能寺です」
明神  「本能寺?」
フロイス「!」
信長  「そう!預言通りね・・・運命を感じるわあ」
明神  「本能寺かあ」
蘭丸  「信長様、本当に行かれるのですか?」
信長  「行くに決まってるでしょ。こんな面白いことないでしょ」
蘭丸  「はあ。しかし」
信長  「関白様もいらっしゃるのよ。中止にできるはずないでしょう」
蘭丸  「は」
明神  「関白様?」
信長  「どんぐりは関白も知らないの?白塗りの偉い人よ」
明神  「白塗り!」
蘭丸  「・・・」
フロイス「信長様は神になるために本能寺に行くのですね」
信長  「そう」
蘭丸  「しかし、預言通りにしなくても神にはなれるのではないですか」
信長  「蘭丸、これは私の運試しよ。命を懸けた運試し」
フロイス「信長様の思い、分ります」
明神  「フロイスさん、言ってること変わってません?」
フロイス「私はただ信長様に神になって欲しいのです」
信長  「フロイス、少しは賢くなったようね」
フロイス「ありがとうございます」

舞台裏からたまのアメイジンググレイスが聞こえてくる。

信長  「なにあの歌?」
明神  「ああ、たまさんです」
蘭丸  「光秀様の娘、たま様です」
明神  「マネをするな」
蘭丸  「マネではない。キリシタン故、こちらに来たのでしょう」
信長  「ふーん」

たまともち、能天気に入ってくる。
気付いて歌をやめて。

たま  「信長様!」
信長  「たま」
たま  「はい」
信長  「あんたも行く?」
たま  「え?どちらに?」
信長  「本能寺よ」
たま  「本能寺ですか?」
信長  「そう、偉い人がいっぱい集まるの」
たま  「しかし私が行くような場所ではないのでは?それに私の夫も毛利征伐に出陣するとのこと。そのような折に」
信長  「嫌なの?」
たま  「・・・いえ」
信長  「じゃあ行きましょうよ」
たま  「はい・・・」
信長  「行きましょう」
たま  「はい」

上手前へ信長に蘭丸、明神ついていく。その後ろをたま。

たま  「何をしてるのです」
もち  「私は・・・」

上手前に捌けて行く。フロイス、見送って。

○シーン15 秀吉の屋敷・一室

フロイスが待っていると上手奥より久作、下手より八方斎が現れる。
上手奥よりウロウロしていた体で秀吉が来る。

秀吉  「でかしたぞフロイス」
フロイス「ありがとうございます」
秀吉  「そうか。信長が本能寺に行くか・・・久作」
久作  「は」
秀吉  「お前の読みが当たったな」
久作  「は」
フロイス「織田信長は神を神とも思わない恐ろしい悪魔です。主デウスの名において秀吉様に成敗していただきますようお願いいたします」
秀吉  「分っておる。これは俺にとっても信長と光秀を葬る千載一遇の好機なのだ」
フロイス「はい」
八方斎 「あとは光秀がどう動くかですな」
久作  「光秀は情の厚い男。心配はないと思います」
八方斎 「万が一光秀が動かなかった場合はいかがなさいますか?」
秀吉  「その時は・・・俺がやるまでのこと」
八方斎 「はは」
秀吉  「久作、俺はワクワクしているぞ」
久作  「は」
秀吉  「失敗は許されぬ。支度をせよ」
久作  「は」

久作、八方斎、フロイス、下手に捌ける。
秀吉、ワクワクが止まらない。

秀吉  「偉くなっちゃうなー。はははははははははははははは」

笑いながら上手奥に捌けて行く。

<16>に続く


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