キャリアにおいて無駄に見えることは、実は無駄ではない
最近、日本企業でも外資系企業のように専門性の高い人材を育てたり、採用する「ジョブ型雇用」を導入し始めています。多くのサラリーマンがマーケティング、財務、広報、などその道のスペシャリストやリーダーになるべく、尽力しています。確かにあるひとつの分野を極めることは他人との差別化につながるので、自身の市場価値を高めます。
一方で、この「専門性を高めること」に集中しすぎて、専門外のことにまったく興味を示さない人もいます。特に職場にこのような人がいると、組織が効率的に機能しなくなります。
今日は、私自身の経験も交えて、専門外のことや通常業務以外の一見「無駄」に見えることが、キャリアにポジティブな影響を与えることについてお話しします。
最初の経験はMBA留学時代の失敗です。当時、自分は将来、外資系事業会社でファイナンスのリーダーになるため、財務、経理、金融といった科目を必死で勉強していました。逆に、それ以外の科目にはあまり身が入りませんでした。
今考えると高い授業料を払っていたにも関わらず、愚かですよね。
当時は2000年でまだアマゾンが「赤字のネット本屋」だった頃です。私がもっとITやサプライチェーン、マーケティングといった科目にも好奇心を持って知識を吸収していたならば、「アマゾンか。今は赤字だけれど将来有望な会社だな」と気づき、同社の株を底値で買い、今頃ウハウハだったかもしれません。
MBA後に米系企業の日本支社のファイナンス部門に転職しました。この会社ではマトリックス組織といって、どんな案件も部門横断し、ファイナンス、マーケティング、営業、法務のメンバーを含めたプロジェクトチームを組み、業務をすすめます。当時、専門バカだった私も、他部門のスペシャリストと働くうちにファイナンス以外の知識を得ることが他部門へのサポート業務に役立ち、最終的には自身の成長につながることに気がつきました。
それ以来、専門以外のことにも興味を持ち、勉強するようになりました。同僚たちとお互いに自分の専門外のことを学び合うことにより、立場の異なる相手をリスペクトすることに繋がり、自身の仕事へのモチベーションも高まったと思います。
長く働いていると、一見すると「寄り道」と思われることに遭遇します。陽の当たらない部署への異動、本社から支社への転勤などです。過去に、アメリカの親会社が投資した日本企業へ出向した経験があります。仲の良い同僚には「本社に帰って来れなくなるぞ。」と心配されましたが、会社からの出向の打診を受け入れました。
理由は好奇心。「投資先企業の再建ってよく新聞や本では読むけど、実際に体験してみたい」と常々思っていたからです。確かにやってみると苦難の連続で、夜、シャワーを浴びながら涙が出てくることもありました。ただ、のちにこの時の経験が自身を助ける事になります。
本社に呼び戻されてからは「ファイナンス部門で投資先企業の再建業務を本当に理解している人」として、他の社員との差別化に繋がりました。例えば、ある日突然、「ヨーロッパ支社で投資先の再建プロジェクトがあるから、数ヶ月間のあいだ、現地でサポートして欲しい」といった依頼が舞い込みました。もちろん現地でこのプロジェクトを経験しました。
こうなると、専門性×企業再建×海外プロジェクトといった感じで、レアな要素が掛け合わさり、社内での差別化が好循環で進みます。また、レアな経験をすると、レアな人脈を築くことができるため、社内だけでは知り得ない情報も得られるようになります。
おかげで、自分は特別有能な人材ではないけれども「希少経験を持つ便利な人材」として差別化できたので、大手外資系企業でクビにならず、役職もあがり、20年以上勤められたのかなと思います。
サラリーマンをしていると、本社移転、上場準備、上場廃止準備、社員満足度向上、就業規則変更など、パッと見、面倒くさそうで出世に直接関係のないプロジェクトのメンバーに任命されることがあります。でも、ぜひ挑戦してみてください。想像もしていなかった新たな発見があり、それが長期的にご自身の差別化につながる可能性があります。
ぜひ、好奇心を持って、未知の体験を楽しんでください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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