佐藤久

舞台演出家。ギター弾きます。HR/HM聴きます。偏愛するもの=人形/ロボット/ハードS…

佐藤久

舞台演出家。ギター弾きます。HR/HM聴きます。偏愛するもの=人形/ロボット/ハードSF/ステージ上の美しい人

記事一覧

嫉妬、歪み

羨ましい。 親や「旦那」に楽器を買ってもらったり、表現をするために資金を出してもらったりする人が羨ましい。 浅ましいほどに羨ましい。 自信なさげに出したものを褒め…

佐藤久
3か月前
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舞台芸術(音楽ライブ含む)の一回性について

昨今、音楽ライブを中心に、観客のスマートフォンによる静止画・動画の撮影およびネットへのアップロードが増えてきた。 禁止にする公演(主催者の意向かアーティストの意向…

佐藤久
6か月前
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丘の上の異界〜寺崎英子の写真によせて

宮城県北部にある、とある鉱山跡。 ここは、小学校高学年〜高校生までのわたしの大切な異界だった。 わたしが生まれ育った農村では、わたしは完全に余所者だった。彼らが…

佐藤久
7か月前
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【絵】20231120

佐藤久
9か月前
1

好きすぎて名前も言えない

わたしには敬愛するギタリストがいる。 別に隠す必要はないのだが、ファン仲間以外の前で彼の名前を言うことができない。言わなくてはならない場面では、彼の名前ではなく…

佐藤久
10か月前
5

星が堕ちたとき

あまりに心の穴が大きくて書き殴る。 こういう使い方はしたくなかった、でももう、だめだ。 hideが亡くなったとき、中学生だった。私にBLUE BLOODを貸してくれた友達が泣…

佐藤久
11か月前
4

41歳の声変わり

41歳2ヶ月で声変わりした。 コロナ禍によるライブの無い期間、および声出し禁止ライブ期間を経て。約3年。全力で叫んだことがなかった。 わたしは一番好きなバンドのライブ…

佐藤久
1年前

ピグリマリオン

人間に似た人間でないものが好きだ。 人形、ロボット、屍体。同じ理由で俳優もミュージシャンも、プロ野球のピッチャーも好きだ。磔刑のキリストも、天使や悪魔も好きだ。 …

佐藤久
1年前
2

恋愛詩①

ごく暗い部屋 私はあたたかい他人に守られている 侵さないという点で 他人はとてもやさしい 毒のある花を部屋に入れなくなり わたしは死にたくならなくなったが 宇宙の腹…

佐藤久
1年前

活動(演劇/音楽/文芸)

その① 演劇活動 演出家。1982年生まれ。古典や小説を、人形の体の一部を使う『擬人体』という特殊な手法(ほぼどんな場面も上演可能)で上演している。 演出作品 2016年1…

佐藤久
1年前
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きみどり〜新古今和歌集仮名序より

(だいぶ前にご依頼いただいて上演されたことばが出てきたので載せます。気に入っている作品です。) 人間が森の中で死んだ うずくまり すべてに恥じ入るように身体を曲げ…

佐藤久
1年前

両手に持ったままでは何も手に入らない

引っ越すことにした。二人から一人になったのと、異動希望を出したら叶ったので、異動先の近くに住もうと思ったのと、20年前に住んでいた街に最近行く機会があって、都心に…

佐藤久
2年前
1

『此処が底か?』

これはDIR EN GREYの名曲、“VINUSUKA”の歌詞の一節。 これ以上悪いことは起きないだろうということが数珠繋ぎにどんどん起こって、善くしようと思ってやったことが尽…

佐藤久
2年前
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絵「優秀さ」

佐藤久
2年前

死ぬ練習

何回か死のうと行動したことがあり、その中で一番やばかった時は、少しずつ3ヶ月くらいかけて身辺整理をした。ただ元々物が多かった上にコレクションに依存していたので、…

佐藤久
2年前
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Schadenfreude

佐藤久
2年前
嫉妬、歪み

嫉妬、歪み

羨ましい。
親や「旦那」に楽器を買ってもらったり、表現をするために資金を出してもらったりする人が羨ましい。
浅ましいほどに羨ましい。
自信なさげに出したものを褒められる人が羨ましい。
やり方を学校で習う人が羨ましい。
学校で習ったり、人に言われたり、親の影響だったりを、素直に受け入れられる人が羨ましい。それに不満を言える人が羨ましい。
与えられたチャンスをやりたくないと言える人が羨ましい。そのチャ

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舞台芸術(音楽ライブ含む)の一回性について

舞台芸術(音楽ライブ含む)の一回性について

昨今、音楽ライブを中心に、観客のスマートフォンによる静止画・動画の撮影およびネットへのアップロードが増えてきた。
禁止にする公演(主催者の意向かアーティストの意向かはケースバイケースだ)もあり、むしろプロモーションのため推奨する公演もあり、対応は別れている。どちらも間違いと正しさを含んでいると思う。また、禁止ではないが、できるならやめてほしいというニュアンスのお願いを出している公演もあるし、禁止に

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丘の上の異界〜寺崎英子の写真によせて

丘の上の異界〜寺崎英子の写真によせて

宮城県北部にある、とある鉱山跡。
ここは、小学校高学年〜高校生までのわたしの大切な異界だった。

わたしが生まれ育った農村では、わたしは完全に余所者だった。彼らが悪いわけではない。人の笑顔や手作り料理のやりとり、地元への愛着、家族など、ふつう安らぐものが、なぜかわたしは気持ちが悪く、不安になり、少しでも離れたいものだったというだけだ。

その時間は隔絶されていられるので、読書と、詩や小説を書くこと

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好きすぎて名前も言えない

好きすぎて名前も言えない

わたしには敬愛するギタリストがいる。
別に隠す必要はないのだが、ファン仲間以外の前で彼の名前を言うことができない。言わなくてはならない場面では、彼の名前ではなく単なる音の連なりだ、と一旦自分を説得してから言う。
そうでないと、呼吸が詰まってしまって名前が言えないのだ。戸惑って、でも話を続けるためにあの呪わしい言葉を使う。「推し」が、と。
理由はいくつか思い浮かばなくもないが、呼吸がつまるほどのこと

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星が堕ちたとき

星が堕ちたとき

あまりに心の穴が大きくて書き殴る。
こういう使い方はしたくなかった、でももう、だめだ。

hideが亡くなったとき、中学生だった。私にBLUE BLOODを貸してくれた友達が泣き崩れていて、隣で手を握った。
ピンクスパイダー。GOOD BYE。beauty&stupid。心の大きな部分にhideの形の穴が空いていた。自ら死を選ぶわけがないと私にはわかっていた。なぜなら、ピンクスパイダーを、聴いてい

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41歳の声変わり

41歳の声変わり

41歳2ヶ月で声変わりした。
コロナ禍によるライブの無い期間、および声出し禁止ライブ期間を経て。約3年。全力で叫んだことがなかった。
わたしは一番好きなバンドのライブではメンコ(好きなメンバーの名前を呼ぶこと)とアンコールに命をかけていて、ちょっと叩かれるくらい常に絶叫してきた。アンコールは本編終わってからメンバー出てくるまで本当に絶叫する主義だ。レスが欲しくてやっているわけではないが、指差しとか

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ピグリマリオン

ピグリマリオン

人間に似た人間でないものが好きだ。
人形、ロボット、屍体。同じ理由で俳優もミュージシャンも、プロ野球のピッチャーも好きだ。磔刑のキリストも、天使や悪魔も好きだ。

人体はとても美しいと思う。とくに十全でないときの。つまらない芝居を観ていなければならないとき、わたしは俳優の足首から下を眺める。足だけは、どんな人でも面白いから。視覚で切断して見ていれば美しいから。

絵の才能はないが、美術解剖学の教科

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恋愛詩①

恋愛詩①

ごく暗い部屋 私はあたたかい他人に守られている
侵さないという点で 他人はとてもやさしい
毒のある花を部屋に入れなくなり
わたしは死にたくならなくなったが
宇宙の腹を切り裂く力を失ったような気がする

私は二度と彼に会わない

恋はすぐに頭をもたげる
もし彼が今にも死にそうな顔をして
抱きしめてくれと泣き出したら
私はそれに抗えない
苦しみとストーリーがあれば
私はたやすく人を愛しうる
でも、抱き

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活動(演劇/音楽/文芸)

活動(演劇/音楽/文芸)

その① 演劇活動
演出家。1982年生まれ。古典や小説を、人形の体の一部を使う『擬人体』という特殊な手法(ほぼどんな場面も上演可能)で上演している。

演出作品
2016年1月 幻想擬人劇『志賀寺上人の戀』 作 三島由紀夫 池上・古民家カフェ 蓮月にて
2016年9月 「擬人体」クローズド試演会②
2015年8月 「擬人体」クローズド試演会①
2012年11月 The Three WithHISA

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きみどり〜新古今和歌集仮名序より

きみどり〜新古今和歌集仮名序より

(だいぶ前にご依頼いただいて上演されたことばが出てきたので載せます。気に入っている作品です。)

人間が森の中で死んだ

うずくまり すべてに恥じ入るように身体を曲げて

森の中の死体はいずれ苔むし 無数の芽を吹く

心にあらかじめ植え付いた種が芽を吹く

種はしろい根を出し 筋肉の隙間に 爪の隙間に びっしりと すきまなく張り

内側に詰め込まれた親の世代のエネルギーを吸って

それを守っていた

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両手に持ったままでは何も手に入らない

両手に持ったままでは何も手に入らない

引っ越すことにした。二人から一人になったのと、異動希望を出したら叶ったので、異動先の近くに住もうと思ったのと、20年前に住んでいた街に最近行く機会があって、都心に近い下町に住んで、劇場やライブハウスやミニシアターに行きまくっていた生活をもう一度送りたいと思ったからだ。

それを誇るような気持ちは本当に微塵もないのだが、何度も何度も、持っているものを全て手放して状況をナイフで切り裂くようにして外に行

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『此処が底か?』

これはDIR EN GREYの名曲、“VINUSUKA”の歌詞の一節。

これ以上悪いことは起きないだろうということが数珠繋ぎにどんどん起こって、善くしようと思ってやったことが尽く悪い方に転がって、悪いことが悪いことを呼んで、本当にもう何もしないことが一番よいのではないかと思うときがあった。鬱なんてものじゃない、自分が諸悪の根源で、腐った生ゴミに少しずつ変わっていくような感じ、そういうときがあった

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死ぬ練習

死ぬ練習

何回か死のうと行動したことがあり、その中で一番やばかった時は、少しずつ3ヶ月くらいかけて身辺整理をした。ただ元々物が多かった上にコレクションに依存していたので、整理しても整理しても身辺整理が終わらず、そのうち入院することになり、入院したら回復して死なないで済んだ。物が多いと死なないで済むことがある。

でも持っているものが少ないといつでも飛べる。

最初に上京した時は、服と本とCD、段ボール5箱で

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