『此処が底か?』

これはDIR EN GREYの名曲、“VINUSUKA”の歌詞の一節。

これ以上悪いことは起きないだろうということが数珠繋ぎにどんどん起こって、善くしようと思ってやったことが尽く悪い方に転がって、悪いことが悪いことを呼んで、本当にもう何もしないことが一番よいのではないかと思うときがあった。鬱なんてものじゃない、自分が諸悪の根源で、腐った生ゴミに少しずつ変わっていくような感じ、そういうときがあった。

あまり記憶がないが、その頃にこの曲が入っているアルバムを買ったらしい。

ここが底だ、あとは這い上がるだけだという言い回しがあるが、ここが底だと思うくらいつらいことがあった次の日にさらに悪いことが起きるので、そういう励ましにとても傷ついた。

隣家から聴こえる“当たり前“の日常音と、腐った自分の姿を照らし出す太陽の光から逃げた布団の中で、少しずつ落ち続ける人間に寄り添ってくれる言葉がイヤホンから聴こえた。
『此処が底か?』

京くんの歌“詩”は、メチャクチャで文語の用法が間違っていることも多いが、彼のヴォーカルと同じでそんなことはどうでもいい。
誠実に痛みを描写し、今、痛みの最中にいる人にどうしたら届くか、本当にずっと考え続けているのだと思う。

この曲のもう少し後に、また別の歌詞が出てくる。

『此処が真実だ』

運良く私は入院を経て少しずつ回復していった。
家族と医者が私の命を救ってくれたように、京くんの唄は私の魂を救ってくれた。

そういうことが出来るようになりたいと思う。

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