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【光る君へ】第30回「つながる言の葉」感想

 まひろが宣孝と死別して3年が経ちました。都は夏に旱魃に襲われますが、道長の必死の依頼により、晴明が雨ごいをすることで恵みの雨が降ります。まひろは公任の屋敷である四条宮で、女性たちに和歌を教える会を主宰し、そこにはあかね(和泉式部)も顔を出し、彼女は官能的な独自の感性をのぞかせながら、和歌を紡ぎだしてはその場の面々を魅了します。まひろはその会で自身の書いた「かささぎがたり」と呼ばれる物語を披露し、家に帰ってはその続きを執筆に勤しむ毎日を送っていますが、我が子の賢子とは心を通わ

    • 【光る君へ】第29話「母として」感想

      まひろの夫にして最大の庇護者であった宣孝が突然亡くなってしまいました。父・為時の再任がならなかった中、まひろは娘の賢子を抱えながら、悲しむのもそこそこに経済的な危機に直面します。 宮中では、前年に定子が亡くなったことで一条天皇が打ちひしがれています。そんな中、不調の詮子は道長に、定子の忘れ形見である敦康親王を中宮・彰子のもとで養育させることを進言します。そこには親王を「人質」として天皇と幼い彰子の関係を向上させるねらいがありました。天皇が彰子のもとを訪れないことに倫子、道長が

      • 【光る君へ】第28話「一帝二后」感想:ふたりの妻をめぐって

        道長の娘・彰子の立后は、道長本人は勿論のこと、一条天皇の母・詮子や側近である蔵人頭・行成らの尽力もあって実現されます。后を迎える天皇個人は、中宮・定子への思いゆえに彰子立后には前向きではありませんでしたが、彰子の人となりにふれて立后を受け容れるのでした。大仕事を成し遂げた直後に病に倒れてしまう道長ですが、明子の献身的な看病…と、夢枕に立つまひろの呼びかけもあって快復します。一方で、彰子立后への天皇の決意を汲み背中を押す定子でしたが、彼女は出産の際、清少納言の支えもむなしく崩御

        • 【光る君へ】第10話「月夜の陰謀」感想:「観察者」としてのまひろの志

          まひろと道長がついに男女の仲となる、そして花山天皇が兼家の策略によって出家させられる、という2つの大きなクライマックスがあった贅沢な回でした。 今回描かれた中で、まひろと道長の個人的関係は確かにとても重要だとは思います。しかし同時に、今回はまひろが偉大な小説を書くに至る上でひとつの道標となるような回だったと思っており、その点の感想を(今更…)書いていきたいと思います。 「観察者」としての小説家  このあとまひろが書く「小説」という文学においては、人の営みや心の動きが散文で

        【光る君へ】第30回「つながる言の葉」感想

          【光る君へ】第9話「遠くの国」感想

           道長は家人の手前、そして何より直秀個人に対する怒りから一味を見逃すことができませんでした。彼は直秀らに私刑を加えようとする家人をいさめつつも、検非違使に引き渡すことにします。散楽の住処を訪れたまひろもまた、検非違使にとらわれてしまいますが、そこは道長によって救われます。道長は検非違使に賄賂を渡して一味の助命も試みますが、それも虚しく一味は殺されてしまうのでした。政治力を発揮して直秀らを救ったかに見えた道長にまひろは感服しましたが、彼らを喪った悲しみを共有し、一緒に散楽一座を

          【光る君へ】第9話「遠くの国」感想

          【光る君へ】第8回「招かれざる者」おさらい

          先週感想を書くことができなかったので、第9回の直前ですが感想をメモ程度にまとめておきます。 今回は中盤の兼家の卒倒から、ドミノ倒しのように人間関係が変化していきましたね。右大臣家の去就が内外で話題の的となる中、道兼は、兼家の元の去った為時に急接近し、あまつさえ為時(とまひろ)の自宅を訪問までします。この前の場面で兼家が道兼の目の前で目を覚ましていることから、あえて為時を訪ねる道兼には思惑がありそうです。その思惑に気づきもしない為時とまひろ、そして自分がかつて殺したのがこの家

          【光る君へ】第8回「招かれざる者」おさらい

          【舞台】三谷幸喜脚本『オデッサ』感想

          注意:標題の演劇について、重大なネタバレは避けて書いているつもりですが、「一切内容を知りたくない」という方はお引き返しください! 三谷幸喜さんが脚本を手掛けた演劇『オデッサ』を観てきました。とても面白かったので、感想を書いていきます。 あらすじ 舞台となったテキサスの街が名前になった、ある老人の殺人事件の捜査を描いています。主軸となるのは事件関与の疑いがある日本人旅行客への取り調べです。ところが取り調べられるのは英語を話せない日本人、取り調べるのは日本語を話せないアメリ

          【舞台】三谷幸喜脚本『オデッサ』感想

          【光る君へ】第7回「おかしきことこそ」感想:現実を直視し、思い人から目を反らすまひろ

           花山天皇の寵姫である忯子の死は、宮中に大きな影を落とします。花山天皇は意気消沈すると同時に「右大臣が忯子を呪い殺したのではないか」という疑念にかられ、疑心暗鬼からますます殆どの公卿を遠ざけます。帝の蔵人として仕える為時は花山天皇の苦悶と孤独、そしてそれゆえに一層自分に寄せられる信頼に心を痛め、右大臣家の間諜としての職務を辞めることにします。  まひろは道長との関りを避けることを改めて決意し、代わりに取り組むこととして散楽のストーリーを考えることにします。面白さを志向して彼女

          【光る君へ】第7回「おかしきことこそ」感想:現実を直視し、思い人から目を反らすまひろ

          【光る君へ】第6回「二人の才女」感想:文学、政治とロマンスの原動力に

           宮中の政治的争いは構図を変えながら深まっていきます。円融天皇期に重きを成した頼忠、雅信、そして兼家らはそれまで決して一枚岩ではなかったものの、花山天皇期になって台頭してきた義懐・惟成への対抗を強めるべく歩み寄ります。一方で義懐・惟成は自らの立場を盤石にすべく、公任と斉信という青年貴族の取り込みを図ります。若い公達を取り込みたいのは右大臣家も同じです。長男の道隆は、兼家流の強硬策ではなく学問に励む彼らを招いて漢詩の会を開くという、婉曲的ながら彼らの心を掴む方法を採りました。

          【光る君へ】第6回「二人の才女」感想:文学、政治とロマンスの原動力に

          【光る君へ】第5話「告白」感想:まひろ世代の今後を"占う"回

           幼い日に会った「三郎」の正体が右大臣家の三男であったこと、そしてその次兄こそが母・ちやはの命を奪った「ミチカネ」であることをまひろは知って寝込んでしまいます。快復したまひろは為時を問い詰めますが、為時は「惟規のため」として改めまひろに忍従するように言いつけるのでした。一方、道長は悩んだ末にまひろに手紙をよこし、ついに2人はある晩に会うことになります。まひろは道兼のしたことを道長に語り、道長はまひろを信じ、帰宅した際に道兼と争ってしまいます。  折しも内裏では花山天皇の専制君

          【光る君へ】第5話「告白」感想:まひろ世代の今後を"占う"回

          【光る君へ】第4話感想:緊迫と緊縛

          紫式部…このドラマでいうまひろが藤原道長の娘に仕え、道長と関りを持つことはこのドラマにおいて欠かせない(であろう)史実です。また、まひろの母を殺した道兼が道長=三郎の兄であることは、このドラマで打ち出された設定です。ということは、まひろはいずれ知己の三郎の素性を知り、そしておそらく三郎と道兼の間柄を知ることになるだろう...とは想像していました。 そして今回、この両方の出来事が同時に起きました。五節の舞を、舞を苦手とするまひろが舞う本番の緊迫感というスパイス、夜空の下で着飾っ

          【光る君へ】第4話感想:緊迫と緊縛

          【光る君へ】第3話感想

          大河ドラマの序盤の回での楽しみに、「若年期の主人公に記録らしい記録が乏しいとき、主人公と史実の結び付きをいかに補強するか?」という課題への演出上の取り組みがあります。例えば『青天を衝け』の際には、幼い日の渋沢栄一が、獄に繋がれた高島秋帆と窓越しに会話してそこから国づくりへの動機を得たというストーリーが挟まっていました。場合によってはトンデモなことになってしまう一方で、今回は面白かったです。 内裏では円融天皇の体調や動向が取り沙汰され、師貞親王の即位がいよいよ現実味を帯びてき

          【光る君へ】第3話感想

          【光る君へ】第2話感想【ネタバレ含む】

          今回の裏のテーマを敢えて見出すならば、「真実と偽りの姿」というところかな?と思いました。 前回の時点から6年が経ち、今回から吉高由里子によるまひろが登場しました。吉高まひろが最初のセリフから衣裳の重さ、儀式ばかりの生活への不満をブーたれていて笑えました。これだけでもキャスティングの妙に満足してしまいます。 そんなまひろは6年前に母を喪った事件、そしてその際の父の対応への不満を引きずっています。父や、父のいる家への反発もあって、恋文として書く歌の代筆業に邁進する日々を送って

          【光る君へ】第2話感想【ネタバレ含む】

          【大河ドラマ】『光る君へ』第1話感想【ネタバレ含む】

          そ、そうきたか。 やっと言葉にできる感想はこんなところです。 今日から今年の大河ドラマ『光る君へ』が始まったわけですが、まさかしょっぱなからヒロイン・紫式部―役名:まひろ—の母であるちやはが亡くなって、しかもそれが藤原道兼によって殺されたのだという展開になるとはまったく予想しておらず…。 振り返れば、確かに紫式部の母親は彼女が幼いころに亡くなっているものの、具体的な没年や死因ははっきりと分かっていなかったように思います。それを逆手にとってこんな展開にするとは本当に驚きで、そ

          【大河ドラマ】『光る君へ』第1話感想【ネタバレ含む】

          【旅行記】バルト三国:旅の始まりに寄せて

          バルト三国に行ってくる、と知人に言うと必ずといっていいほど「え、なんで?」というリアクションが返ってきた。イギリスやイタリアに行くようなときは発されない類の疑問である。 ここで、他にバルト三国について私が尋ねられた質問への答えを要約すると以下の通りである。 1. バルト三国とはどの3か国のことを言うのかというと、北から順にエストニア、ラトビア、リトアニアである。 2. バルト三国がどこにあるかというと、ヨーロッパである。近隣国を用いていうならば、「フィンランドの南」「ロシア

          【旅行記】バルト三国:旅の始まりに寄せて

          【鎌倉殿の13人】検証!義時の「おなごは皆キノコ好き」はどこから?

          本日このあと最終回を迎える『鎌倉殿の13人』だが、作品が終わるまでにどうしても検証しておきたいことがある。それは、義時が作品を通じて誤解し続けた「おなごは皆キノコ好き」という愚かな思い込みがなぜ生まれたのか?という問題に他ならない。以下、ここでは ①トンデモ帰納法説 ②嘘/偽情報吹き込まれ説 ③大人の事情説 の3つの説を立て、それぞれを検証していきたい。 ①トンデモ帰納法説  この説は、きのこが好きな女性に義時が1人ならず接した結果「あの人もきのこが好きで、この人も好き

          【鎌倉殿の13人】検証!義時の「おなごは皆キノコ好き」はどこから?