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もっと欲して、もっと発して


開口一番、怒鳴り声。

聞き取れない、なにを怒っているのか解らない。 ただただ怒鳴り続ける人。 こういう人は割と多い。 耳につけたイヤホンですら耐えられないと音を割る。 感情に任せて怒鳴り続ける、それで解消されるならいい。 もっともっと怒鳴り続けて。


キャパオーバーしてまでも生きなければならないのか、とため息をつく。 “死にたい” と口にするのは “死にたい” からじゃない、今そこから “消えてしまいたい” のだ。死ねば救われると信じたいからだ。 それでいいよ、何度だって言っていいよ、死にたいと。

満たされない心を言葉にすることで、なんとか立っていられる。 わたしもそう。 こうやって書き殴る散文に意味なんて求めてない。 ただそう思った、それだけ。 わたしにとって生きる方法、息をする時間。 大切な言葉。 わたしを助けてくれるもの、わたしの武器であり盾。


魔法の言葉があればいいのに。


その一言で誰かの心を軽くできるような、ドロドロとした淀みを浄化できるような、そんな魔法の言葉を昔も今もわたしは欲している。 助けたいや救いたい、なんて生温い。 全てを一瞬で沸騰させるような熱さも、全てを一瞬で凍らせるような冷たさも欲しい。 言葉に乗せて届けたい。


人の話を聞くのが好き。

誰かの人生の一部分、誰かを形成する一欠片。 わたしに話してくれるならわたしはいくらでも聞いていられる。 人によって変わる言葉、文脈、言い回し。 それら全てが愛おしい。 優しく救いあげて宝箱に入れておく。 わたしはそれを一生忘れない。



だけど、自分のことを自分から話すことが下手。とんでもなく下手。 致命的に下手。


別に神妙な顔や悲しい顔をして欲しいわけではないのに、させてしまう。 わたしの言葉を聞いてくれる人はみんな優しい。 だから自分からは話さない、語らない。 そういうスタンスを取るようになってからは心が軽い。 無理に繕う言葉も減った。 そうやって生きていく方がわたしには合っている。


いい匂いだと感じる相手とは相性がいいらしい。


それと同じで、いい声だと感じる相手とは波長が合いやすいと思う。 だから いい声ですね と言われると嬉しい。 わたしの言葉が届く証拠のような気がする。 自分勝手かもしれないけど。 


言葉がほしい。

何故こんなにも言葉が好きなのか解らない。 わたしを救いあげてくれた人たちの言葉が忘れられないからだろうか。 優しい言葉も冷たい言葉も強い言葉も弱い言葉も、なにもかもが愛おしい。 言葉で人が殺せるならば、言葉で人を生かすことだってできるはず。 わたしが生かされたように。


軽率に言ってほしい。 死にたいも嫌いも消えたいも、生きたいも好きも傍にいても。 夜しか言えないならもっともっと軽率に言葉にしてほしい。 タイムラインを埋め尽くしてくれ。 夜を埋め尽くしてくれ。 もっともっと軽率に夜を求めてくれ。


何度だって傷ついて、何度だって死にかけて、何度だって絶望して。

それでも生きてるって叫んでほしい。


夜は長いから。 夏は短いから。






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