マガジンのカバー画像

蟻を見つめていた頃

79
20年前に書いたエッセイ。一部加筆修正。 ★は2017年以降、新たに書き下ろしたエッセイ。
運営しているクリエイター

#生き方

★「楽しく生きる」か「楽に生きる」か

★「楽しく生きる」か「楽に生きる」か

皆さんは、「楽しく生きていますか?」と質問されたとき、自信を持って「はい!」と言いきれるだろうか。

私の周りの多くの人は、「本当は○○がやりたいのだけれど、それでは食べていけないので、何となく今の仕事を続けています」と答える。つまり、「楽しく」生きるよりも「楽に」生きる道を知らず知らず選択している。あるいは、選択しなければ生きていけないと、思い込んでいる。

彼らに「人生やりたいことをやって生き

もっとみる
多数決の恐怖

多数決の恐怖

★この文章を書いてから20年。全く進歩が感じられない世の中に愕然とする。先日行われた衆院選。多数決が出した結果は、前政権の継続である。私はこれが最良解であるとはどうしても思えない。

無関心は民主主義を麻痺させる。投票率が50%に満たない選挙では真の民主主義は機能しない。政権与党はそれが分かっていてあえて何も手を打とうとしない。60年、70年安保の時代。多くの大学生が政治に反発して行動した。今より

もっとみる
★宗教と人間 ~創価学会考~

★宗教と人間 ~創価学会考~

私の叔父は創価学会員である。幼い頃から叔父は仏法の話をしてくれた。教員になってからも、折伏を受けた記憶がある。

私が小学校3年、4年の時の担任も熱心な創価学会員である。やはり何回かお誘いを受けて、若い頃は集会にも参加した。「創価学会という宗教の本質とは何か?」を知りたかった。

一度、巣鴨の大講堂に行ったことがある。200畳はあろうかという広間に、信者がびっしり座っている。壇上に久本雅美氏が登場

もっとみる
★思考フレーム

★思考フレーム

人は誰でも、今まで生きてきた経験に基づいて、おのおの思考のフレームを持っている。経験は人生の長さに応じて増えるので、年長者は若年者より比較的広めのフレームを持っているのが「普通」である。

しかし、これは、あくまで「普通」なのであって「絶対」「必ず」ではない。人の中には、自分に厳しい経験を糧にして自己研鑽できる人と、他人のせいにしてスルーしてしまう人がいる。前者は常に成長を続けて思考のフレームを広

もっとみる
★慇懃無礼(いんぎんぶれい)

★慇懃無礼(いんぎんぶれい)

 慇懃無礼とは、言葉や態度などが丁寧すぎて、かえって無礼であるさま。あまりに丁寧すぎると、かえって嫌味で誠意が感じられなくなるさま。また、表面の態度はきわめて礼儀正しく丁寧だが、実は尊大で相手を見下げているさま。

 私は約30年教師をしている。学校で働いている限り、あまり、慇懃無礼な人物に出会ったことがない。しかし、役所で働いたとき、あるいは、役所の人間と関わるときに、慇懃無礼な人物に遭遇する確

もっとみる
★次元上昇を阻むもの

★次元上昇を阻むもの

 本田健さんのセミナーに行ってきた。今回で三回目。テーマは「次元上昇」について。

 社会で成功を収めている人は、それまでの人生で何度か次元上昇を体験している。次元上昇とは今まで生活していたレベルから一つ上のステージへ引き上げられる現象である。日本の平均サラリーマンの生涯年収は2億円程度と言われている。それ以上の収入を望むなら、"普通”の生活をしていては難しい。

 次元上昇に伴い、物事の考え方が

もっとみる
★「以心伝心」神話

★「以心伝心」神話

 「以心伝心」という四字熟語がある。中学校の国語資料集に掲載されていて覚えたという方が多いのではないだろうか。「人は、親しい関係になれば、言葉にしなくても気持ちが伝わる」という意味である。

 「察する」「慮る」という言葉がある。「相手の行動などの様子を見て、気持ちを忖度する」という意味である。「以心伝心」と「察する」力があれば、最高の人間関係が築けるような気がする。間違いない。

 しかし、現実

もっとみる
★道徳専門教師

★道徳専門教師

 区の道徳教育の研究会に参加した。

 私は、以前から道徳の時間の指導が大切だと思い、個人的に研究している。平成20年度には東京都教員研究生という制度を利用して、学校を離れ、東京都教職員研修センターに勤務しながら道徳指導の研究をした。研究テーマは「対話を重視した道徳指導の工夫-互いを尊重する豊かな話合い活動を通して-」

http://www.kyoiku-kensyu.metro.tokyo.j

もっとみる
★人権感覚

★人権感覚

 12月4日から人権週間が始まった。教育界では「人権感覚」と言う言葉をよく耳にする。教師の「人権感覚」を高めるための研修が、東京都では、毎年2学期の終業式の後に行われている。

 「人権感覚」とは、人が生まれながらに持っている、何人からも侵されることのない「基本的人権」をきちんと理解し、様々な差別、例えば、女性蔑視、いじめ、障害者差別、外国人差別、最近ではLGBT差別、パワーハラスメント等、人権侵

もっとみる
★組織的に機能できない学校

★組織的に機能できない学校

 学校は長く鍋ぶた型組織であった。校長、教頭の二人の管理職以外は、教諭という一段階の職層しかなかった。結果、長くその学校に在籍したり、年長のベテランだったりする教諭が、校長以上の権力を握り、学校を牛耳ってしまうという悪習が常態化していた。私が着任した平成2年頃の盲学校では、一人の事務職員が、職員会議で、儀式で日の丸を掲揚するか否かで校長に私見を述べ、会議を紛糾させていた。

 今から10年程前から

もっとみる
★学校は、なぜ、ブラック職場なのか

★学校は、なぜ、ブラック職場なのか

 最近、教師の仕事がブラックであることが連日報道されている。先日の新聞には教師の労働時間に上限規制を設けるべきという中教審の意見が掲載されていた。

 教師の給料にあらかじめ残業代が支払われていることは余り知られていない。1971年に「公立学校教育職員の給与等に関する特別措置法」が制定され、一律、給与の4%が支給されることになった。田中角栄内閣の頃ではないか。4%の根拠は、40年以上も前の残業時間

もっとみる
精神的成長のレベル(スコトーマ)

精神的成長のレベル(スコトーマ)

 人間は誰しも一年に一つずつ歳をとる。子どもから成人になりやがては老いを迎える。社会的には年齢を重ねるごとに責任が重くなる反面、様々な権利も取得できる仕組みになっている。しかし、精神的な成長は必ずしも肉体的成長には比例しない。年齢的には成人でも精神的には大人になりきれないこともある。そんな人が最近増えてはいないだろうか。

 精神的成長のレベル(以降心のレベル)は、目に見えにくい。ペーパーテストを

もっとみる
★哲学フィルター

★哲学フィルター

 人はそれぞれ、個人の哲学を持って生きている。哲学とは、自身の、善悪、好き嫌い、行動するしないの判断基準である。あるいは、「こだわり」と言っても良い。

 日々様々に身の回りの起こる出来事、他人から聞く話を、私たちは、この「個人哲学フィルター」にかけて自動的に分類している。

 政治の出来事、時事問題、他人からの相談事、平凡な日常に起こる出来事。経験のあることなら、おおむね、悩むことがなく即座に判

もっとみる
見えない心

見えない心

 人間の心はよく氷山に例えられる。我々が普段学校や会社で他人に接していて見えている部分は、氷山でいうと海面上に出ているほんの一部分である。そして、本当は海面下に、その何倍もの目に見えない部分が存在する。だから、本当にその人を理解しようと思うなら、「目に見えない部分を見ようとする努力」が必要になる。

 最近の日本の社会を見渡してみると、どうも海面上に出た氷山の一角のみを見て、その人全体を評価しよう

もっとみる