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筋トレのコツ47:血管を労るための「運動時の呼吸」

運動をする際、しっかりと呼吸ができていますか?

これから運動を始めようとしている初心者の場合、「運動=激しく体を動かす」という固定概念があり、最初から自分の体力に合っていない激しい運動を行おうとしてしまったり、運動中、無意識の内に力んで、呼吸を止めてしまいがちです。

そのような運動の仕方をしていては、いつかは嫌になって、身になる前に止めてしまいます。運動は継続してこそ意味のあるものです。せっかくやる気になっている訳ですから、その労力は効率良く使わなければ損です。

そこでこの記事では、運動を続けていく上で必要になる「呼吸のとり方」についてまとめています。

尚、この記事は前回の『筋トレのコツ46:「オーバーユース」を防ぐには?』の続きになっています。そちらも合わせてお読み下さい。


動脈と静脈の違い

体には大きく分けて「動脈」と「静脈」という2種類の血管があります。簡単に言うと、「動脈」は心臓から送り出された血液が流れる血管の事、「静脈」は血液が心臓に戻る時に通る血管の事です。

一般的には静脈よりも動脈の方が血液の流れは速く、また流れる血液の量も多いです。このため動脈はその血管自体が太く大きくなっており、その壁も非常に分厚くなっています。つまり動脈は元々の強度、及び弾力性が高く、多少大きな圧力がかかっても簡単に破ける事はありません。

一方、例えば太い動脈から枝分かれする交差点の部分や、枝分かれした先の細い血管などの場合、どうしても弱い場所があります。何らかの原因でそこに大きな力が加わった場合、破けてしまう事があるのです。

特に動脈はそのように血液の流れる勢いが速く、量も多いので、そうして破けた瞬間には大量の血液が失われます。もしそれが重要な組織、あるいはそれに近い血管で起こった場合、命に関わる事もあります。

ちなみに静脈の方は、心臓からの力が伝わりにくいので、血液の流れが遅く、血液の量も少なくなっています。また静脈は体の表面を通っている事も多いので、心臓に直接繋がっている動脈と比べると、全体としては血管が細く、その壁も薄くなっています。

もちろん脳や臓器など重要な組織に近い静脈なんかでは、血液の流れが速く、血液の量も多いので、そのような血管が破ければ大変な事になりますが、少なくとも体の表面にある静脈に関しては、少し破けても大した事にはなりません。


「血管の強さ」は見た目だけでは誰にも分からない

血管は心臓の脈動に合わせ、自らでも波打つように脈動しており、それによって血液をスムーズに送っています。つまり末梢にある細胞まで血液をスムーズに送るためには、心臓自体の強さはもちろんの事、血管自体の強度や弾力性も重要になります。

また運動などをして心臓の脈動が強くなり、血管の弱い部分に大きな力がかかる場合、そのように血管に十分な強度と弾力性があれば、その場所まで力が分散していくので、簡単には破けなくなります。

しかしそのような動脈の状態、あるいは静脈の状態というのは、見た目では誰にも分かりません。特に「自分は健康という自信が強い人」ほど、「血管に不要な負担をかけるような癖」を持っている事が多いです。

その「癖」については改めて後述しますが、例え元々血管が丈夫で、弾力性が高い人でも、負担をかけるような生活習慣が積み重なれば、血管が破けるリスクは高くなっていきます。

特に血管へのダメージの蓄積に大きく影響するのが「遺伝」です。

少し怖い言い方になりますが、もし貴方の親族に、例えば動脈硬化、動脈瘤、動脈解離、脳梗塞、心筋梗塞などを発症した事のある人がいた場合、貴方自身も同じ病気にかかるリスクがあると言われています。

これは何故かというと、「血管の厚さ」「血管の太さ」「血管の弾力性(細胞の構造)」「全身にどのように血管が張り巡らされているか」などという事に、「遺伝」が大きく関係していると言われているからです。

血の繋がった親子では「見た目が似る」という事はあると思いますが、実は体の内部にある「血管も似る」という事があるんですね。

もちろんそれが症状として出ない事もあります。しかしたまたま現在は症状として出ていないだけであって、前述のように動脈や静脈の状態は見た目では誰にも分かりませんから、そのまま出ないのか、出るならいつなのか・・・というのは誰にも分からない訳です。分からないからこそ、できる対策をしておくのです。地震と同じです。


「力む」事による血管へのダメージの蓄積

例えば腕や足などを使って大きな筋力を発揮する時、強く顎を噛み締めたり、呼吸を止めたりして、「力む」という人も多いかと思います。ここでは「力む」事で体にどういう変化が起こるのかについて考えてみます。

まず、力んでいる間は呼吸を止める事になるので、一時的に血流が滞ります。血液には水分、各種栄養、酸素、あるいは老廃物や二酸化炭素などが含まれており、心臓や血液にはそれを循環させる役割があります。つまり力む事ではその循環が滞り、各種細胞の機能が低下する可能性があります。

もちろん「呼吸を止める」とは言っても、通常は数秒程度なので大した問題にはなりませんが、特に脳や心臓・肝臓などの各種臓器、あるいは筋肉は元々必要となる血液の量が多いです。このため短時間とは言え、それが頻繁に繰り返され、毎日積み重なっていけば、健康上良くない事は明らかです。

またその「力み」から開放された瞬間には、それまで滞っていた血流が一気に開放され、大量の血液が流れる事になります。つまり一時的にではありますが、いつも以上に血流が速くなり、血液の量が増えるので、血管に大きな力がかかりやすくなります。

もちろん元々太い血管は丈夫にできているのですが、弱い場所が必ずあり、そこにダメージが蓄積すれば、いつかは破れてしまいます。それが脳や心臓などの重要な臓器、あるいはそれらの組織に近い血管で起こる可能性はゼロではありません。そのような太い血管では起こらなくても、枝分かれした細い血管で起こるリスクは当然高まります。

繰り返しになりますが、「自分は健康」と考えている人ほどアクティブです。しかしそのアクティブさが仇となって、知らず識らずの内に、血管にダメージを蓄積させてしまっているのです。その意味で「健康に対する根拠のない自信」は持つべきではないと私は思います。


血管の健康を保つ方法を考えてみよう

ここでは簡単に箇条書きにしてみます。

・蛋白質を摂取する。ただし動物性脂肪はなるべく避ける
・9種類の必須アミノ酸をバランス良く摂取する
・可能ならばコラーゲンやアルギニンを摂取する
・糖や脂肪を一度に大量に摂取する事は避ける
・糖や脂肪は1回の量を減らし、摂取する場合、間隔を空ける事
・6種類の必須脂肪酸をバランス良く摂取する
・特に必須脂肪酸の中でも、ω-3脂肪酸を意識的に摂取する
・ビタミンCを意識的に摂取する。可能ならサプリメントも利用する
・ビタミンCと合わせ、ビタミンEも意識的に摂取する
・ビタミンB群を摂取する。可能ならサプリメントも利用する
・食物繊維を摂取する。食物繊維はビタミンB群の元にもなる
・ビタミンAを摂取。ただしβ-カロテンだけでは不十分、レチノールも摂取
・塩分(ナトリウム)は適度に摂取する。
・塩分(ナトリウム)は過剰摂取は良くないが、過度な制限は逆効果
・カリウムを意識的に摂取する
・カルシウムは適度に摂取する
・マグネシウムを意識的に摂取する。可能ならサプリメントも利用する
・タバコやアルコールの過剰摂取を避ける、もしくは止めてしまう
・心臓あるいは全身をよく動かすような適度な運動を習慣的に行う
・小まめな水分・栄養補給をする(発汗時、過労時、ストレス時、運動前中後、入浴前後、起床直後、就寝前)
・睡眠の質を高める(毎日同じ時間に寝起き、明るくなったら寝る、暗くなったら寝る、十分な睡眠時間、寝る際の環境)
・ストレスコントロールをする(内外問わずメンタル的なもの、活動と休息のメリハリをつける、紫外線対策、過度な食事制限を避ける)
・変化のない生活を避ける(時には異なる環境に慣れる事も重要)
・力まない(トイレ、意識的な運動、日常生活の些細な動作、感情の変化)

・・・と箇条書きにしてみると、かなり細かいのですが、このように血管を労るためには様々な心がけが必要になります。

ただ、いきなり全てを意識的に行うのは難しいと思うので、まずはできる所から少しずつ改善していきましょう。「生活習慣を改善する意識」が強くなればなるほど、時間が解決してくれます。最初は意識的にしかできなかった事も、いずれは意識せずともできるようになっていきます。

またそうして意識せずに行える事が増えたら、再び意識的に行う事を少し増やすようにします。そうして毎日少しずつ積み重ねていくと良いでしょう。決して焦る必要はありません。


初心者にオススメの「筋トレを行う際の呼吸法」

今まで不摂生な生活を続けてきた人が、生活習慣の改善を目的にして筋トレを始めようとする場合、いきなり「力む」ような、大きな重量を扱う筋トレを行うのは大変危険です。まずは前述の箇条書きのように、運動以外の生活習慣、すなわち食習慣や睡眠習慣などを改善する事が先でしょう。

またそうして生活習慣を改善しても、筋トレを行う度に力んでしまっては意味がありません。続いて「効率の良い力の入れ方」を覚えましょう。実際に筋トレを行うのはそれからです。

簡単にその方法を挙げると・・・

・筋肉を収縮させて力を入れる時、ゆっくりと息を吐く
・一気に力強く息を吐かない
・また息は完全には吐ききらないようにする。ちょい残し
・体を元に戻す時、及び筋肉を伸ばす時、ゆっくりと息を吸う
・一気に力強く息を吸わないようにする。
・胸やお腹を大きく膨らませ、八分目ぐらいまで吸う。リラックス
・そのゆっくりとした呼吸ができないほどのスピードでは体を動かさない
・その呼吸のスピードに合わせて、動作自体も緩やかに行う
・敢えて逆に呼吸を行う。すなわち力を入れる時に息を吸い、力を抜いていく時に息を吐いてみる。それによって「力を入れる時に呼吸を止める」という癖をなくしていく
・顎を強く噛み締めない。常に上下の奥歯が接しないように意識する
・舌、喉、首などにも同様に力を入れない
・肩や肩甲骨を上に上げない
・とにかく「呼吸」と「目的の筋肉を収縮させる」事に集中する

慣れるまでは、まずはこれらの事を意識して筋トレを行うようにします。

初心者にとっては意識する事が多いと思うので、いきなり本格的な筋トレを行うよりも、「一つの関節を動かすような筋トレ(アイソレーション種目)」から始めるのがオススメです。それを行いながら、呼吸と体の使い方を覚えましょう。

また初心者だと「運動=体を素早く動かせば痩せる」という固定概念を持っている人が多いのですが、そのように「ゆっくりとした呼吸で、ゆっくりとした動作で筋トレを行う」事をオススメします。

素早い動作で行ったり、大きな重量のあるダンベルなどは、呼吸の仕方を身につけてからでも遅くないと思います。もし道具を使うなら、自分で負荷を調節できる「ゴムチューブ」から入るのがオススメです。

ちなみに高重量を扱うトレーニングにおいては、敢えてお腹に空気を貯めるようにして行う呼吸法(バルサルバ法)もあります。これは腹圧を高め、臓器や骨の位置を安定化させ、筋力を発揮しやすい状態にする効果がありますが、初心者が行うと単なる「力み」になるのでオススメしません。



以上です。お役に立てれば幸いです。よろしければ「スキ」「フォロー」をお願いします。

尚、「筋トレに関する考え方」については、この記事で一区切りにしようと思っています。次回からは「ダイエットに関する考え方」を中心に書いていきます。

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