さんごの暮らし相談室

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あらゆる年代の女性と母子のこころとからだの健やかな育みを応援するカウンセリングルームです。

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  • 心が深まる本たち

    選りすぐりの一冊をご紹介しています。

  • 心と社会の研究室

    心と社会について、様々な角度から書いています。書く文章は、ひとりごとみたいなもの、エッセイ的なものから学術的なものまで、幅広く。

  • 母子のこころとからだを健やかに育む

  • こんなことでお悩みの方へ

    カウンセリングって、私も受けて平気? 日本では、カウンセリングやセラピーへの敷居がまだ少し高いようですが、どうぞご安心を。暮らしのそばにある、そのお悩みをお聞かせください。

  • ハーブのある暮らし

最近の記事

ジェネラリスト・ソーシャルワークと学校という場

最近、スクールソーシャルワーク領域でホットな観点に、ジェネラリスト・ソーシャルワークというものがあります。 ジェネラリスト・ソーシャルワークは、ご本人のストレングスに着目し、主体性を尊重するものです。 なるほど、これまでの対人援助はいわゆる「お仕着せ」のもので、支援先につなげたところで逆に傷ついてしまって、支援を拒絶したくなるような体験をされた方というのは、思いの外、多くいるのです。 とはいえ、ご本人が主体的に何かを選択するというのは、難しい場合も多くあります。 主体

    • 子どもが教えてくれる「喜びを他の誰かと分かり合う」こと

      夕暮れどき。たくさん遊んだあとの、お友だちとのしばしの別れ。 ある子は「ジュースを買いたい」と言い、お母さんからもらった150円を握りしめて自動販売機に駆けてゆく。 お気に入りの、あのジュースを買うために。 もうひとりの子も、お母さんに「買いたい」と言うけれど、赤ちゃんを抱っこしているお母さんは、お財布を取り出す暇もない。 「ゴトン」と出てきたジュースのあとに、自動販売機がピカピカ光る。「何これ?」と驚く子ども。 「当たり」だった。 もう1本も「ゴトン」と出て来て

      • 野口整体が考える「健康」について

        野口晴哉さんという方が創始した野口整体は、いまでは自然健康法として知られています。 私が10年ほど前に、野口整体(なお、野口体操ではありません)を知ったとき、『風邪の効用』という本に自分をより整えて健康にするために風邪を引くのであって、だから自ら風邪を引けるのは力なのだと書かれていたことに、とても驚きました。 いわゆる健康観とは大きく異なるので、安易に世間でこういう話をすると誤解を招くことがあるかもしれません。それに、私は西洋医学も東洋医学もどちらも大切に思っています。

        • 冬支度と『資本論』

          急に寒くなったので、慌てて冬支度。 東南アジアの暖かい国で働いていたある日本人が、「資本主義は南国には根づかない」と言ったことがありました。「なぜなら、一年中、食べ物に困らないから」だと。なるほど~、と思ったことがあります。 資本主義の生産様式に基づく工場で、低賃金で働いていた現地の人たちは、お昼どきになると、自宅の庭から持ってきたたくさんのフルーツや食べ物を、いわゆる先進国から来た駐在員に笑顔で分け与えていました。 「どっちが豊かなのかわからない。」 と言った、先進

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          『ゴジラ-1.0』と戦争の記憶

          いま、上映中の『ゴジラ-1.0』。前知識がないまま行ったものだったので、一番の感想は「そういう話だったのか・・・」と、いろいろ想い出しながら考えてしまいました。 私の祖父の家には、第二次世界大戦で戦死した祖父の兄弟のモノクロームの写真が飾られていたのですが、親族の誰もが、彼のことを話しませんでした。端正な顔をした彼の名前すら私は知らないままで、祖父が他界すると同時に、同居する親族は壁からその写真を外しました。 祖父が他界する半年くらい前、祖父は私に一枚の写真を見せてくれま

          『ゴジラ-1.0』と戦争の記憶

          「歴史への真摯さ」について

          テッサ・モーリス=スズキさんは『過去は死なない』という本の中で、「歴史への真摯さ」について書いています。 「たったひとつの権威ある歴史的真実がある」というのが近代の考えでした。 けれども、そうではなくて、「現在の人びとが過去をどのように理解しようとするのかというプロセスが大事なのであって、そこに、過去の出来事と人びととのあいだに発展的な関係が開かれてゆく」ということが書かれた本です。 テッサさんは、「歴史への真摯さ」は、私たちのうちなる過去、周囲の過去の存在にたいする注

          「歴史への真摯さ」について

          金融職の方の感覚がするどいことについて

          長く金融業に従事されていた方がいるのですが、その方の人間を観察するするどさが素晴らしいのです。 何か、人間の心の奥にある「動き」のようなものをパッとつかむ方で、ご自身も、「その人がお金にまつわる悩みがあるかは顔を見ればわかる」とおっしゃっていました。 それで、先日もその方のするどさに触れることがあって、改めて、心の問題とお金の問題は切っても切れない問題だと感じたのです。 心理職に従事されている方が、お金のことについて学ぶ機会はほとんどありません。 けれど、他の職種で従

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          ケアの手触りが抜け落ちた社会の中で、できることについて

          戦後、日本では人間が「生まれる場所」と「死にゆく場所」が自宅から病院へと大きく転換しました。 「生まれる場所」は、統計によると1960年に病院と自宅・助産院とでちょうど半々くらいの割合でしたが、1970年には80%以上の人が病院で生まれています。 「死にゆく場所」は、統計によると1975年に病院と自宅とでちょうど半々くらいの割合でしたが、1990年を過ぎるころには病院で亡くなる方が80%近くになりました。 人間が、自然に死んでゆくとき、その数日前あたりから食事や水分を必

          ケアの手触りが抜け落ちた社会の中で、できることについて

          リフレクション(内省すること)と世間体(周囲に合わせてしまうこと)

          海外ではカウンセラーやセラピストはとても身近な相談相手ですが、日本ではまだそうでもありません。 その理由のひとつには、精神分析的セラピーやカウンセリングで自分の抱えているどんな悩みがどんな風に解決するのかがイメージできないということもあるのかもしれません。 なぜなのでしょうか?? 確かに、昔の私も、カウンセラーは正直なところ、自分の大切な悩みを相談できる存在ではありませんでした。私の場合、その理由は、自分の悩みが「心そのもの」にあるというよりも、「関係に由来」していたか

          リフレクション(内省すること)と世間体(周囲に合わせてしまうこと)

          「何かあったらここに来ればいい」

          と、ご来談者さまが言ってくださるのは、とても嬉しいことです。 ある程度、定期的に通われて、ご来談者さまの最初のお困りごとがだいぶ整ってきてからなのですが。 「生きている意味がない」と思うくらいにまであられた方や、「自分なんて価値がない」と思われていた方が、世界という大海原に、自分で舵をとる小舟を出していかれる姿を見るのは、こちらの方が感動してしまう体験でもあります。 カウンセラーとクライアントさんの間には、ときに、関係を続けることが難しくなってしまう局面が訪れることがあ

          「何かあったらここに来ればいい」

          若き勇敢な女性について――村八分にされたとしても

          先日、若き「勇敢な女性」に会って、私はすごく感動したのです。それで、そこから思いついた、日本社会によくある悩みを書いてみようと思います。 日本社会では、とりわけ、女性のカルチャーに多いことなのかもしれませんが、言葉にして言わないまま、確認しないままで何かトラブルや思い違いがあったときに、突然、手の平を返したように敵対化するというのがあると思います。 あるいは、「やろうやろう」と言っていながら、誰もが誰かがやってくれるだろうと思って何もやらない。そして、実際にやり始めた誰か

          若き勇敢な女性について――村八分にされたとしても

          自分で決めることの難しさ

          何かを決める。例えば、面接の日時とか。この人のカウンセリングを受けようかとか。働き方とか。結婚・離婚するとかしないとか。 こうしたことを、「自分の意思で決めた」と言える人は、どのくらいいるのでしょうか。 誰かが、自分の何かを決めてくれることは、ある意味、とても楽なことです。 でもそのとき、自分のほんとうの気持ちが置いてけぼりになっていないかどうかは、確認する必要があるでしょう。 私たちは、家庭や教育の中で、誰かの言う通りにすることが正しいことだと学んできたハビトゥスが

          自分で決めることの難しさ

          ノイマン『女性の深層』と個性化

          神話とか昔話とかを、人間の心の発達という観点からみるのは、けっこう面白いと思います。 人間の心理的発達についてユング派のエーリッヒ・ノイマンさんは神話との関連から書かれています。 私などは、ノイマンさんの本を読んでも、たぶん全然理解できていないのですが、それでも、何か「なるほど」と思ってしまうことがあります。 「個性化」、すなわち、――自分の個性が表に出てきてほんらいの自分にまとめあげられていく――と、言うのは簡単ですが、なかなか難しいプロセスでもあるように思います。特

          ノイマン『女性の深層』と個性化

          スベリヒユ(野草)とブリコラージュ(野生の思考)

          先日、鎌倉の市場に立ち寄ったら、スベリヒユが売られていました。スベリヒユもついに鎌倉ブランド野菜の仲間入りかぁ、と嬉しくなって思わず購入すると、隣から「これってどうやって食べるの?」というお客さんもおられました。 スベリヒユは、そこらへんに生えているいわゆる「雑草」や「野草」と呼ばれるものです。けれども、栄養化は高く、また、ねばりのある食感は夏にはぴったりのおいしい野草です。地方によっては、一般的に食べられてもいます。 昔、私は「野草マップ」なるものを作って、街中に生えて

          スベリヒユ(野草)とブリコラージュ(野生の思考)

          「ひとりの人間にとって大切な問題は、必ず多くの人間にとって、大切な問題とつながっている」

          と言ったのは、社会学者・見田宗介さんです。見田さんは、真木悠介というペンネームをもっていて、そちらの名でも素晴らしい本を書かれています。 見田宗介さんは、多くの社会学者のみならず市井の人びとから愛された人で、彼に負けまいとした社会学者はいましたが、彼を悪く言う人を私は知りません。 その見田宗介さんが書かれた本の中に、『社会学入門――人間と社会の未来』という本があります。 その中で、彼は「越境する知」とは、「現在の人類にとって、切実にアクチュアルであると思われる問題につい

          「ひとりの人間にとって大切な問題は、必ず多くの人間にとって、大切な問題とつながっている」

          JFPSPアナリスト特別企画・公開収録――開業・私設臨床家に必要なこと

          7月30日(日)19:00~21:00、Zoomオンラインにて、「JFPSPアナリスト特別企画・公開収録――開業・私設臨床家に必要なこと」が開催されます。 JFPSP(日本精神分析的自己心理学協会)さんは、「自己心理学や間主観性理論の立場を中心に、さまざまな考え方や方向性の心理療法家」の方々が集う団体です。 当相談室も、当日の対談に参加させていただきます。ご興味・ご関心がおありの方は、ぜひいらしてください。 詳しくは、下記をご覧ください。お会いできますことを、楽しみにお

          JFPSPアナリスト特別企画・公開収録――開業・私設臨床家に必要なこと