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心と社会の研究室

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心と社会について、様々な角度から書いています。書く文章は、ひとりごとみたいなもの、エッセイ的なものから学術的なものまで、幅広く。
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記事一覧

「甘え」がもたらす癒し――アラン・N・ショア『右脳精神療法――情動関係がもたらす…

いま、心理療法の世界ではパラダイムシフトが起きていると言われます。 一言でいえば、「情動…

自己(Self)の暗黒面――D.カルシェッド『トラウマの内なる世界』より

D.カルシェッドは、日本ではあまり有名ではないのですが、カルシェッドの言う「セルフケア・シ…

解離の癒し――関係療法的な取り組み

解離は、今日とても多いテーマですが、取り扱いがたいへん難しいものでもあります。 解離とは…

精神と社会との関係――人間であることについて(ライト・ミルズ『社会学的想像力』よ…

「陽気なロボット」という言葉は、資本主義が隆盛し行き着く先にあるものとしての「人間の人間…

病態水準を見極める――本来の言葉を語ること

人と人との対話は、共同構築される面があると考えるのは社会学です。 カウンセラーでさえも、…

隠れ型の自己愛性パーソナリティ障害への取り組み

自己愛性パーソナリティ障害と聞くと、どんなことを思い浮かべるでしょうか。 誇大感や万能感…

救済のひとつの道――グッゲンビュール‐クレイグ『結婚の深層』を読む

A.グッゲンビュール-クレイグはユング派分析家のひとりで、この本は、深層心理学的な観点から結婚について書いてあります。 子どもをもつことや結婚・離婚は、誰にとっても大きなテーマで、多くの方が悩まれていることでもあります。 社会学的には、結婚することは「自立」として周囲から承認される機能をもつとか言われたりもしてきました。一方で、フェミニズムからは、結婚しなければならないという強制からの解放が謳われたりしてきました。 様々な考え方がありますが、グッゲンビュールークレイグに

"The Art Of Loving"(エーリッヒ・フロム『愛するということ』より)

エーリッヒ・フロムは、社会(心理)学・精神分析・哲学とを通して、「人間」について深く考察…

絵本が伝える生きる知恵――「フクロウの声が聞こえる」

絵本の読み聞かせは、小学校の教育委員会でも研修しているテーマです。絵本に描かれていること…

昭和の人生すごろく――『草むらにハイヒール』への違和感

小倉千加子さんというフェミニストで心理学者で医学博士で、いまは家業の保育園を経営されてい…

情報の味わいについて

年末の大掃除で、もう20年以上前に傾倒したある学者の本が出てきたのでちらりと読んでみたら、…

ボーエンから読み解く自己分化と自律的な協働

多くの方が感じていることだと思うのですが、日本の組織や集団に所属していると、いわゆる「同…

いまもある中世からの自由と平和の力

子どもたちの遊びには、誰が教えたわけでもないのに、昔々から続いているものがあって。 「エ…

久しぶりに、小沢牧子さん『「心の専門家はいらない」』を読む

この本を読むにあたっては、小沢さんがどういったタイプの「心の専門家」をいらないと言っているのかを、明確にしなければならないと思うのです。 小沢さんが批判している心の専門家は、権力関係の中で適応していくことを促すものであって、しかもその適応は国家権力の思惑が背後にあるものです。かつ、ここが重要なのかもしれませんが、その権力関係というのが、いわゆる暴力的なものではなく、やわらかいもの――つまり、自らを管理化してゆく――というものだということです。 心理学と戦争との関係には、私