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心が深まる本たち

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記事一覧

目の言葉と耳の言葉――1つのものを2つに分けないことの効用

少し前から、本を読んでいても頭に入ってこないことがあって、私が変わったのか、それとも外が…

サステイナブル・ライフとマルチチュードーー上野千鶴子『サヨナラ、学校化社会』より

社会学者のT.W.アドルノらは、権威主義パーソナリティという概念を提唱しました。権威主義パー…

母なるものからの社会批評――中村佑子『マザリングーー現代の母なる場所』より

社会学者ジョン・アーリは『社会を越える社会学』という本の中で、もっぱら男性の時間となって…

「甘え」がもたらす癒し――アラン・N・ショア『右脳精神療法――情動関係がもたらす…

いま、心理療法の世界ではパラダイムシフトが起きていると言われます。 一言でいえば、「情動…

自己(Self)の暗黒面――D.カルシェッド『トラウマの内なる世界』より

D.カルシェッドは、日本ではあまり有名ではないのですが、カルシェッドの言う「セルフケア・シ…

救済のひとつの道――グッゲンビュール‐クレイグ『結婚の深層』を読む

A.グッゲンビュール-クレイグはユング派分析家のひとりで、この本は、深層心理学的な観点か…

絵本が伝える生きる知恵――「フクロウの声が聞こえる」

絵本の読み聞かせは、小学校の教育委員会でも研修しているテーマです。絵本に描かれていることは、そもそもは、口承文化でした。そこには、人間が成長する過程についての知恵と真実が描かれていました。 けれども、現代に流通している絵本と、そもそもの原話となっているグリム童話や日本の昔話とでは、大事なところが省略されてしまって描かれているのがとても残念に思います。 日本の昔話研究の第一人者といえば、小澤俊夫さんです。 最近は、『シンデレラ』の原作が『灰かぶり』であることを知らない方も

野口整体が考える「健康」について

野口晴哉さんという方が創始した野口整体は、いまでは自然健康法として知られています。 私が…

ノイマン『女性の深層』と個性化

神話とか昔話とかを、人間の心の発達という観点からみるのは、けっこう面白いと思います。 人…

「ひとりの人間にとって大切な問題は、必ず多くの人間にとって、大切な問題とつながっ…

と言ったのは、社会学者・見田宗介さんです。見田さんは、真木悠介というペンネームをもってい…

ホスピタリティ(もてなし)とヴァルネラビリティ(傷つきやすさ)の力について

随分前に、繰り返し読んだ本の中に、哲学者・鷲田清一さんの『「聴く」ことの力』があります。…

『君に友だちはいらない』(瀧本哲史)の意味

エンジェル投資家であり京大で研究・教鞭をとっておられた瀧本哲史さんは、これからの時代を生…

田中美津『かけがえのない、大したことのない私』より

昔、私に田中美津さんを教えてくれたのは、FTM(Female to Male)のゼミ仲間でした。彼のこと…

『普通という異常』(兼本浩祐)が示している社会的事実について

社会病理学やラベリング理論が明らかにしたのは、「マジョリティがそれを定義するから逸脱や病理になる」ということでした。 私の知人で、生き辛さを抱えてきたが発達障害という診断を得て、「ほっとした」と言われる方がありました。「自分が生き辛かった原因が解明された」というスッキリ感なのだろうと思います。 人は、原因を知りたがります。自分が辛くてしんどい原因を知りたがる。それがわかり、それがなくなれば解消するという医学モデルの考え方は、しかしおそらくきっと医学者らが一番よくご存じであ