母性をめぐる誤解と対立を超えて――「良質な母性」とは
第二次大戦後(もっと言えば明治期から)、日本社会は西洋近代文化を取り入れていくという方向を選んだ。生活様式や生活水準という物理的側面は劇的に変わった。しかし、心性など内的側面はまだ追いついてきていない。いまなお過渡期だ。
西洋の個人主義が取り入れられていく過渡期の時代に、日本では「母性」についてアカデミズムや社会運動で議論が盛んにおこなわれた。平塚らいてうなどの初期の女性運動家の中には、「母性」を尊重することを主張する人もいたが、その後の議論のほとんどは「母性」は社会的に構