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複雑な時代を生きる――エナクトメントをどう考えるか

現代は複雑で不確実で不安に満ちた社会です。

これまでの価値観では通用しなくなってきたことから、現代をVUCA(ヴーカ)時代と呼ぶことがあります。Volatility(不安定さ、変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑さ)、Ambiguity(曖昧さ、両義性) の頭文字を組み合わせた造語です。

「前例がないからやらない・できない」では、これまでのようには進まなくなってきたのが現代です。ですから、トライ&エラーで挑むしかなく、失敗すらを前提に物事に対峙する姿勢が必要ともいえるでしょう。

そこには、ある意味で、「崩壊と再生」がつきものです。もっと言えば、崩壊の中に、再生の萌芽を見ることができるかどうかといえるかもしれません。

カウンセリングの場面では、エナクトメント(再演)と呼ばれる時空間がありあります。最も傷ついてきた部分、最も癒されたい部分が、関係の中に顔を出すのです。

エナクトメントという言葉には、「行為・行動(act)」が含まれています。エナクトメントは、カウンセリング場面において、マイナスなことと考えられてきましたが、実は好機でもあるのです。

このときの鍵のひとつは、カウンセラー自身が傷ついてきた部分、すなわち、カウンセラー自身の脆弱性(ヴァルネラビリティ)です。そして、相手に対する、自分自身に対する、お互いへの尊重と敬意です。

こうした非言語的で非意識的なものが、実際のところは、絶えず交流しています。

行為や行動することは、失敗がつきものです。残念なことに、日本社会では、失敗するのは恥ずかしいこととしてきた歴史的土壌があります。失敗すると世間から嘲笑され恥をかくので、多くの人は恥をかかないようにし、一方で他人の失敗は嘲笑してきました。ルーズルーズを促進するような関係性が培われてきました。

これらは、主体性のない生き方といえるでしょう。自分の人生を自分で考え行動することなく、誰かがどうにかしてくれるだろうという、いわば思考停止の妄想に基づく生き方です。

とはいえ、失敗にめげず行為・行動するのは、なかなか難しいものです。これは信頼に基づく重要な他者との間での練習を経ないと、ほんとうに難しいもの。

つまり、心理的に安全な環境(他者)があることが必要なのです。また、主体性を育み応援してくれる環境(他者)も必要です。そして、遊びも必要です。

当相談室は、複雑で不確実な現代という時代の中で、自分らしく力を出して生きたいと思うあなたを、心から応援します。

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