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「共依存」と「相互依存」――高機能依存症の苦しみ
「依存症」は、何かに甘えているとイメージされやすいのですが、実は、人にまっすぐ甘えられない人が陥りやすいことをご存じでしょうか。
依存症の人は、人との関係を相互依存的につくることができないために、代わりにアルコール、ドラッグ、買い物、ネットゲーム、ギャンブルなどのモノや行動に依存してしまいます。
相互に依存できない人たちから成る関係が、共依存です。共依存関係は、回避的で寄生的です。そこには、真の信頼関係がありません。
依存症の人たちの中にも、自分の苦しさを隠すのがうまい人たちがいます。経済的には裕福である、生活は管理できていたり成功している、仕事や勉学に励んでいる、回復のための助けを避ける、身の回りの所属先からあなたは依存症者ではないという継続的な否認の言葉を経験しています。
表では成功し続けることができるため、高機能であるからこそ、人に言えずに隠しもっていることが多くあります。いわゆるアダルトチルドレンや摂食障害の方にも同じように高機能な方がいます。
依存症は、自我親和的になってしまうため、それをやめることは自分の一部をもぎ取られるような感覚をもつので、回復するのはたいへん難しいものです。
自我親和的とは、その人のアイデンティティやパーソナリティの一部となっているので、普通で当然のことと感じられてしまうのです。つまり、自明さゆえに内省することができず、ブレーキをかけられないのです。
こうした自明性そのものを問うてきたのは現象学です。
依存症からの回復には、底つき体験というのが必要と言われてきました。けれども、依存症の回復には、人間はひとりでは完結しようがない存在であると知り、人間はそのような無力な存在であるという諦念の先に、良質な依存先をつくっていくこと――相互依存――が、近年のアプローチ方法のひとつです。
相互依存は、弱さを見せることができ、まっすぐに助けてと言える関係です。そこには、相手をコントロールしようとするメタ・メッセージはありません。
相互依存は、精神分析家のハインツ・コフートの言う自己対象が参考になります。しかし、そのような良質な依存先を見つけ、関係を築いていくことはなかなか難しいように思います。
難しさのひとつには、「関係性の渇望」への解離があることです。
「どうせこれを求めても、応えてくれないんじゃないか」というような思いがあると、相手にうまく求めることができません。ずっと空虚なままです。ここには、関係性への不信感がありますし、傷つきがあります。
自分が関係性への渇望をもっているんだということを感じられ、現実の相手との関係の中で、しっかりやりとりができるためには、確かに、解離があると難しい面があります。
社会学者のアンソニー・ギデンズは、嗜癖や共依存を時代性にともなう親密性の変容との関連で考察しました。
現代においては、誰にとっても、大なり小なり共依存のテーマは関係してくるのかもしれません。弱い自分、強い自分、バラバラになりそうな自分を、収めてくれるコンテイナーやスペースが提供されることが大切になります。
共依存のテーマは、これまで主に福祉領域で取り組まれてきましたが、当相談室では、心理面からも取り組んでおります。
*この記事は、IPP研究所(インスティチュート オブ プロフェッショナル サイコセラピー)の勉強会での知見とディスカッションを参考に書かせていただきました。記して、感謝申し上げます。
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