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短編エッセイ

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ちょっぴりフィクションを混ぜたエッセイ集
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#コーヒー

それでも私は深呼吸する/短編エッセイ

それでも私は深呼吸する/短編エッセイ

息をとめたくなるような毎日
川のほとりでコーヒーを片手に私は座っていた

流行り病の後遺症によって
嗅覚のおかしくなっていた私は
座っている時間が長くなっていた。

たくさん動くと呼吸をしないといけないから
今は息をするのが億劫、
それくらい嗅覚の状態にまいっていた。

一口またコーヒーを飲んだ。
苦さが口に広がる。
だけど香りはうまく届いてはくれなかった。

そのとき優しい風がふいて頬を撫でた。

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香りの消えた朝と1通の…/短編エッセイ

香りの消えた朝と1通の…/短編エッセイ

朝目覚めると、電気ケトルに水をはりスイッチを入れる。
特別な何かではなく去年ふるさと納税か何かで買ったコーヒーの封を開けて
いつものカップにセットをする。

朝を食べないようになってから随分たつが、
朝にコーヒーを飲むことだけは昔から変わらない習慣だった。

自己流でいれるなんてことないコーヒー。
それでも自分が自分のために行う優しい行動としては十分で、
「丁寧な暮らし」を感じるにも十分すぎる行動

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