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短編小説

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1〜2分で読める短編小説集です。
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#日常

雨が降っているうちに....../短編小説

雨が降っているうちに....../短編小説

鉄の味が口の中にひろがる。
慣れっこの味だ。

今朝の天気予報は雨だったっけ?
その規則に従うかのように
窓にうちつける雨の音が室内に響く。

乱雑にみえて一定に聞こえる雨の音が
少しずつ私を現実へと戻してくれたのだった。

この大雨ならまだ帰ってこないだろう。
雨が止むまでにこの部屋を何とかしなくてはと思った私は、
机に手をかけながら立ち上がり、口元に流れる水滴を袖で拭った。

皮膚に擦れた瞬間

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これは、あなたの開放宣言/短編小説

これは、あなたの開放宣言/短編小説

PM3:00 
公園のベンチでコーヒーを飲んでいた2人。
さっきまでアニメの話なんてしていたから笑顔の残る表情まま
今日の夜ご飯の提案をするかのように私は話した。

 
「無理に私に会おうとすることを辞めなよ」

風が吹き肌を撫でた。
やっと言えた言葉に私はどこかホッとしていた。
でも彼の顔を見ることはできなかった。

見てしまったら「おわる」事がわかっていたからだろうか。
少しでもこの時間を伸ば

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2日目:真夏のジャケットと着信音/3日小説

2日目:真夏のジャケットと着信音/3日小説

~2日目:真夏のジャケットを片手に~

朝から蝉の声が元気だ。
7日という使命をわかっているからだろうか?
それとも地上に出たら鳴き続けるとプログラミングでもされてるのだろうか

そんなことを頭に浮かべながら、
ジャケットを腕にかけ私は道を歩いた。

最高気温40度。
湯船の温度に飛び込むなんて正気の沙汰ではない。
ましてやスーツのジャケットなんてなおさらだ。

では着なければいい話なんだけれども

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