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2日目:真夏のジャケットと着信音/3日小説

~2日目:真夏のジャケットを片手に~

朝から蝉の声が元気だ。
7日という使命をわかっているからだろうか?
それとも地上に出たら鳴き続けるとプログラミングでもされてるのだろうか

そんなことを頭に浮かべながら、
ジャケットを腕にかけ私は道を歩いた。


最高気温40度。
湯船の温度に飛び込むなんて正気の沙汰ではない。
ましてやスーツのジャケットなんてなおさらだ。

では着なければいい話なんだけれども、
今日だけはそうはいかなくてジャケットを手にした。
大事な面談があるのだ。

しばし効率化も考えてオンラインで済ましていた仕事だったが、
今日だけはオフラインを選択せざるを得なかった。
その結果が真夏のジャケットというわけだ。

かつ、いつもは乗らない朝の電車にも向かっている。
全く今日という日はいつもと違いすぎてわらけてくる。。

時刻は7時台。
最寄りの駅ではラッシュになる手前の時間だ。
だから押し込まれることはないが、余裕があるわけでもない。
そんな状態の電車だった。


普段電車の人を見ることはない。
だが何というか空気は重く感じた。
その光景を見ていると自分の仕事に自信がもてなくなりそうだった。

キャリアコンサルタントとしてサポートした人たちは
こんな顔で出社しているのだろうか、、、、、?
自分のサポートはあっていたのだろうか、、?
こんな不安になるのは久々だ。

そんな時、斜め前に座っていた人の画面が目に入った。
そこには転職サイトがひらかれていたのだった。
同時に見えたのはカバンから少しはみ出そうになっている資格の本。


彼女の顔は強く見えた。
この電車内にいる誰よりも。


自分がサポートをしているのは、こういう人のためだ。
この仕事についたきっかけを、こんな場所で感じるとは思わなかった。
でも、気づけてよかった。


くそ暑い中着るジャケットも誰かの明日になるためなら
今日くらい頑張って着よう。

仕事のやりがいなんてたいそれた事ではないけれど、
今日電車にいたあの人のために今日は頑張ろう。


それと昼過ぎのアイスコーヒーを楽しみに。
ついでに今日はケーキもつけようかな。


よし、間もなく最寄り駅。
お姉さんがんばってね。自分も今日できることをやろう。
では、行ってきます。

~2日目 おわり~

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