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無免許講師が往く、ドラム講義④<スティックの握り方編>

第4回目なのにまだ握り方の話をしている。お金を取ってこんなことやっていたら、今頃大変なことになってます。勿論、記事をマネタイズすることもできるのですけど、noteを始めた理由ってそこではなかったので。初志貫徹の構え、石頭が石頭のまま前に突き進む。論理の飛躍が止まらない握り方編どうぞ酒の肴にお楽しみ下さい。

握り方なんて、どうだって良い。

いきなり結論から書いちゃいました。レギュラーグリップだのマッチドだのと難しい話については各自調べて下さい、利き手に応じてなんて書いてあると思いますがぶっちゃけ何の関係もないです。主宰は左利きの後輩ドラマーを、右手レギュラーグリップで育成することに成功した実績を持ってます。これは後世まで語り継ぎたい自慢話。これ以上に誇らしい話はない。

レギュラー/マッチドに両対応できるとなお表現の幅は広がります、むしろ着目すべきなのはこちらの方。本講義の合言葉は「大は小を兼ねる」。武器を増やして音楽を一層楽しみましょう、そういう気概の方は必ず上達する。主宰は信じてやみません。ただ、講義テーマを「どうだって良い」の一言で終わらせてしまうのはあまりに無理がありますので。

マッチドグリップに的を絞って、以下、お時間の許す限り。

主宰が考えた理想的な3ステップは「手の甲を上に」→「親指を上に」→「掌を上に」です。何の暗号か。手の甲を上にしてスティックを握るメリットは「手首の可動域を制限する」ことにあります。初心者の方ほど叩いていると手先が暴れてしまうもの。そこにあえて制約を加えることで、スティックの入射角や軌道、腕の動きもいくらか安定させることができるという見立て。

親指を上に握るのは一般的にティンパニグリップなんて呼ばれます。対照的に「手首の可動域が広」く、表現にも幅が出る。スティックと打面の角度が鋭角になるほどコツコツした音、鈍角になるほど音域を広げることが可能。これは手の甲を上にした場合でも同様です。後述する「掌を上に」の形へと近似していくほど、スティックの入射角や軌道も細かく微調整できる。

ジャズドラマーに多いのが「掌を上に」。

これはかなり難易度が高い奏法、初心者の方は迂闊に手を出すと手先が大変なことになりますので注意。3ステップ目とあり「最も可動域の広い」叩き方で、手首や腕の力だけでなく、スティックの重みや握り方の浅い/深いによっても音色が大きく変化します。打面に添えてやるイメージも、思い切り叩きつけるイメージも自在。繰り返しますが、あくまで発展的奏法です。

スティックを何本の指で支えるか、これについても諸説分かれる部分です。主宰は親指+人差し指の2本から始めることにしましたが、現在は必要に応じ中指や薬指を使い分ける場面もあります。あくまで支点を何本にするかの話で、残りの指は添えてやることもあれば、掌がスティックに干渉しないよう指先だけでグリップしてやることも。必要な音色に合わせてどうぞ。

本稿で最も大切なことを伝えます。絶対に握り過ぎないで下さい。

主宰にとってビッグバンド在籍中の3年間はハードヒッターの時代でした。演奏中に痛みを感じ、舞台袖にはける途中で掌が血まみれになっていることに気付いたなんて事件もありました。両手の親指以外全て、付け根部分には血豆の後が今も痛々しく残っています。腱鞘炎は練習量の証とか、令和4年になるのにまだそんなこと言っている大人達がいますが大きな間違いです。

脱力すればするほど良い音になる、次回講義のテーマに繋がりますがこれはキチンと証明可能です。例えば長い一続きの廊下の端に立ち、手拍子の練習を始めたとします。力一杯に叩いた手拍子は、音のリーチが短く詰まった鈍い音が飛び散るだけ。しかし脱力した手拍子は廊下の向こう端までしっかりと音が届き、澄んだ甲高い音が響く。是非お試しを。

この仮説を、スティックを握った場合に置き換えて考えてみます。

指や掌との接地面積が少なければ少ないほど、音が良くなる。さらに言えばスティックと打面の接地時間が短ければ短いほど音量や音域が鋭く高音に。高校時代の先輩からこの話を聞いた時はもう本当に目から鱗でした。指や掌の感覚が、ここまで音に直結しているものなのかと。当然、この考え方にも逆択が生まれてくるわけで。

つまり、敢えて鈍い音が欲しい場面ではガチガチに握り込んでみたり、接地時間を増やしてみたりできるということです。冒頭の「握り方なんて~」の意図はここ。究極的には、良い奏法/悪い奏法なんてものは存在してない。その奏法を「採用する/しない」という二択が常に発生し、それが樹形図のように延々続いていく。重要なのは「意図的に選び取った手法か」の一点。

次回テーマを決めかねています。かなり複合的な内容となる予感。

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