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クリスマスジャズで棚からひとつかみ。2023


"昔取った杵柄"

なんか2年前の今日にも似たような記事を書いてめちゃくちゃバズった覚えがあるから、今年もやっちゃる!!前回はアルバム単位でのご紹介でしたが、今回は楽曲単位の8品フルコース仕様で存分にお楽しみいただきます。皆様のお気持ちを先に代弁しておきますと、なぜに会席料理みたいな目次を付けてしまったのか。今となっては主宰にも全然わかりかねます…!!

先付:「Christmas Time Is Here」3種盛り

Braxton Cook、Phony Ppl、Gregory Porter。いわばクリスマスの"三鉄人"によります珠玉のハーモニーから。年々クリスマスソングを扱った作品群は、早ければ9月初旬〜遅くとも11月中旬頃には大方出揃ってくる傾向が強まっている。もうハロウィーンすら追い越す勢いなのですよね、複雑な反面しかし素晴らしい出来栄えであることは疑いのないところ。

椀物:Laufey & Philharmonia Orchestra/Let You Break My Heart Again(2021)

図らずも本稿は20年代以降の楽曲ばかりが並びました。アイスランド出身、飛ぶ鳥を落とす勢いでヒット街道を驀進中のLaufeyはやはり外せませんね。ジャジーポップとベッドルームポップのマッシュアップ、イギリスの名門・フィルハーモニア交響楽団を従えて堂々の歌い回し。コロナの最中出会った楽曲達の中でもとりわけ、印象深い1曲。

向付:stories ft. Jake Sherman/When You Wish Upon A Star(2022)

こちらも説明不要のスタンダード「星に願いを」。幼少期からScott Joplinの楽曲に親しんでいたそう。ラグタイムを契機に深くジャズの世界へとのめり込んだ彼だからこそ出せる「さりげないリハーモナイズ」が強く胸を打つ。近年ではMeshell NdegeocelloやNick Hakim、後述のBenny Singsらと共演を果たすなどこの先もますます目が離せない存在です。

鉢肴:Stefan Mahendra/Would You Be Mine(2023)

主菜が続きます。2023年上半期のベストソングを挙げるなら間違いなく彼。スリランカとドイツの血を引くサウス・イースト・ロンドン育ちの若き新生が放つサウンドは、まさに「ディアンジェロ直系」と称するにふさわしい。ゴスペル音楽が血となり肉となって湧き上がってくるよな感覚に惚れ惚れ、サックスソロ入りで思わず叫んでしまったあなたとは趣味が合いそう。

強肴:Sam Greenfield ft. Phoebe Katis/Cheeks(2023)

一方、下半期で強烈なインパクトを残したのがSam Greenfield。これは驚きました。華やかなストリングスとは対照的にど下ネタ全開のリリックが独特の「アクの強さ」を生み出していて。クリスマスジャズ風刺とまで取れる、そのバランス感覚に魅了された。なお先月発売されたばかりのアルバムではアカペラ・バージョンも聞けますので、気に入った方は是非。

止め肴:Benny Sings with the Metropole Orkest/Love Will Find A Way(2023)

主菜ゾーンを締め括るのはご存知Benny Sings。ピエトロ・マスカーニの歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」を彷彿とさせる印象的なイントロから、夢の世界へとあなたを誘います。なるほど同郷のオランダ・メトロポールとフィルハーモニアでは同じ「オーケストラ」とは言えど味付けが全然違う。会席料理では御法度ですがここは一度、Laufeyとの聞き比べも良いのかと。

ご飯:Cory Weeds/Thedia(2023)

今年7月に先行リリースされたシングル。カナダを代表するリード奏者Cory Weedsが名手Thad Jonesを取り上げた120点満点のビッグバンドアレンジをピックして、いよいよコース料理の〆に向かいたいと思います。クールも、ハードバップも感じられる両対応っぷりで、「はじめてのジャズ盤」としても申しぶんのない仕上がりではないでしょうか。

水菓子:Martina Dasilva, Michael Stephenson, Jon Thomas/What Are You Doing New Year's Eve(2023)

主宰イチオシのジャズ・ヴォーカルで〆。Martina Dasilva。Steven Feifkeとの共演作「Stardust」で初めて彼女の名を知りましたが本当に素晴らしい。
ブラジル人の父とアメリカ人の母との間に生まれ、幼少期からミュージカル出演経験を持ち。高校時代にはクラシックとジャズのダブルメジャーだったというのですから只者ではない。リーダー作『The 1905』も必聴です。

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