見出し画像

【創作大賞2023】さらぬわかれ 序


 池上栄子は、7歳の時、家族とある村に引っ越してきた。
 1つ歳上の姉・桂が、丘の上に生えている木に触れた時、桂は倒れてしまう。
 実はその木は、心中をはかった男女が命を落とした祟りの桜とされていて、村人に忌み嫌われていた。
 桂はそれから時が止まったかのように8歳の姿のまま眠り続け、栄子は15歳になった。
 村に越してきた当初は、祟りを受けた子の妹として、学校で冷遇されていた栄子だったが、村の権力者の息子・恒太のお陰で、一人ぼっちにならずに済んだ。
 桂が倒れて丸8年、丘の上の桜の木が仄暗く光っていた。栄子はそこで女の幽霊に出会う。
 彼女は桂の前世で、かつてこの木の下で心中し息絶えた女だった。

 序

 
 その桜は、もう数百年もその丘に立っていた。
 しかし、その村の者は花が咲いたところを誰も見たことがなかった。

 村の伝承によると、江戸の頃、桜の下で心中をはかった男女がいて、その事件があって以来、蕾すら付けなくなってしまったのだという。
 村人は花が咲かなくなった木を何度か切ろうと試みたが、その度に災いが起こった。 
 そのうち、誰もその不吉な桜に近寄らなくなってしまった。
 彼女たちが現れるまでは…。

#創作大賞2023










読んで下さり、ありがとうございます。いただいたサポートは、絵を描く画材に使わせていただきます。