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上野 紗妃
2021年9月5日 20:14
前編はこちら7【それぞれの秘密】「どうも刑事達が毎日、尾行している様だよ」「そうみたいね。私のところにもいる。出したゴミなんかも袋ごと持ち帰って調べてるみたい。気持ち悪いわ」「行動には気を付けた方がいい。あらぬ疑いを掛けられたら損だ」「そうだけど……」「暫くは用心して会わない方が良いな」「どうして? 何か後ろ暗い事でもあるの?」「いや別にないけど、余計な疑いを掛けられるのは嫌だし
2021年7月23日 21:22
1 星祭り「いいかね、今宵は星祭りの夜だ。広場からは一夜限りで番外地行きの列車が復活するそうだ。その列車はだね、伝説の鉄道と呼ばれていて……」担任の教師・小狡井(こずるい)は延々とどうでもいい説明を続けていたが、生徒達はとにかく今夜の星祭りが待ち切れなくてそわそわしていた。「その列車に乗る時は必ず保護者同伴で乗ること。いいかね」小狡井先生の言葉に、ひとりの生徒が手を上げた。「オイラ、保
2021年6月12日 17:26
注 この作品はある有名な小説と酷似していますが、全くの別物です。信州の財閥、大神家の当主、大神佐文次(おおかみさもんじ)が大往生の末、その天寿を全うした。それに伴い、遺言状が大神家にて公開される事になって、関係者一同が大広間に顔を揃えた。広間には佐文次の娘、松代、竹代、梅代という3人の娘(結構おばさん)が並んだ。この3人の娘(結構おばさん)にはそれぞれ跡取りの息子が存在し、それぞれ、佐巨
2021年7月2日 22:57
迷探偵でその名も高い万画一道寸(まんがいちどうすん)が警視庁捜査一課の小泥木警部(こどろきけいぶ)に呼び出されたのは、六月のしょぼしょぼ雨が降る梅雨の最中であった。大森の山の手にある割烹旅館『潮月(ちょうげつ)』の離れに間借りさせて貰ってる万画一は出掛けに女将さんに呼び止められ、番傘を差し出された。しかし、万画一はさっと空を見上げると、「いやいや、この程度の雨なら、そんなもの必要ありませんや。