シェア
上野 紗妃
2022年4月14日 19:58
【辰也】 Y県M村からひと山越えた辺りに、通称『八ツ橋村』と呼ばれる村があった。大きさは東京ドーム36個分と聞いていたが、私にはどう見ても両国国技館48個分位にしか思えなかった。 私は普段、東京都六丈島という大都会に住んでいるので、こんな田舎を訪ねるのは随分と久しぶりの事であった。「えー、コンビニもないのかよ」私がその村に一歩足を踏み入れた時の第一声がそれであった。 今回私がこの村にや
2022年4月13日 20:05
【解決編】 ホームスの働きもあり、幸にして原賀減太と飯尾来栖は一命を取り留めた。 そして、その翌日の晩、再び原賀家の広間に事件関係者達が集められた。 広間に顔を揃えたのは、原賀減太、原賀辰也、屋良世手代、飯尾九央、飯尾久枝、飯尾来栖、薮医師、口部田弁護士、そして、万画一道寸の9名、勿論この中に犯人がいる。 病み上がりのうえ、ヘルニアを抱える減太は奥に布団を敷いて横たわった状態。来栖は両親
2022年4月12日 20:05
【万画一】 さて、時間を少し巻き戻すとしよう。 小泥木警部と万画一探偵は飯尾家のリビングに腰を据えて、飯尾九央が受け取ったという怪文書を前にして腕組みしていた。「しかし、一体だれが、こんな……」 警部は今日何度目かの同じ言葉を繰り返した。「九央さん、ここに書かれている事は本当ですか?」「いや、滅相もない、万画一さん、そんな事言わんで下さいよ。根も歯もない出鱈目です」 怪文書は次の様に
2022年4月11日 20:10
【万画一】 さてさて、ここで再び、カメラは万画一探偵に切り替えて話を進めて参りましょう。 原賀家の一室を借りて捜査本部が置かれ、事件の状況を細密に改められ、葡萄酒に毒物を仕込んだ可能性のある者のリストを作成した。 しかし、それは厳密に考えると、昨夜、あの部屋、または調理場にいた全ての人間に可能性があると言わざるを得ない。しかも、外部の犯行であっても不思議ではない。それほど、多勢の人が行き来し
2022年4月10日 19:20
【辰也】 さて、ここで再び、私、辰也が語り手を引き継ぐことにしよう。 八ツ橋村にやって来てそうそう大変な事ばかりが起きている。 相続分だけ貰ってちゃっちゃと六丈島へ帰ろうと思っていたのに、双子の兄がとんでもないデブでヘルニアで死にそうだからと、いきなり当主にされてしまった。 ただちょっと屋良世手代というお姉さんは色っぽいので、ここにいる間になんとかならないかなとは思っている。ちよっとやらせ
2022年4月9日 20:09
さてさて、このままこの調子で書いていると万画一探偵の出番が無くなってしまいそうなので、ここらでカメラを万画一探偵側に切り替えてお伝えしたいと思いまーす。【万画一】 万画一道寸が相棒の白猫ホームスと共に八ツ橋村を訪れたのは、口部田弁護士からの依頼である。 依頼内容は八ツ橋村で起こる原賀家の遺産相続を巡る連続殺人事件を解決し、辰也の身柄を無事に六丈島に送り返す事とされていた。「なあ、ホーム
2022年4月8日 18:44
2022年2月26日 17:55
【ここまでのお話】『あなたの死体写真を撮影致します』この様な広告を出したのは、乙骨写真館の店主乙骨鱗詩郎だった。コスプレとしての擬似死体写真は好評を得て、多くの若い人達がインスタやSNSに自分の死体画像を投稿して楽しんだ。ところがある日、その死体写真と全く同じシチュエーションで本物の殺人事件が連続して2件発生し、若い女性が変死体となって発見された。事件を追う小泥木警部は万画一探偵に応援を
2022年2月25日 17:29
『あなたの死体写真を撮影致します』 ある日、このような怖ろしいキャッチコピーの広告が新聞、雑誌、インターネット等に流れ出た。 初めの内こそ、スルーされていたが、誰かがその死体画像をインスタグラムにアップさせると一気に火がついた。 もちろん、本物の死体ではない。死体に扮装したコスプレ写真なのだ。 やがてYahoo!Newsにも取り上げられ、一躍トレンド記事のトップに踊り出た。 広告記事を
2022年1月16日 11:47
探偵・万画一道寸が離れを借りて居候しているのは、大森の山の手にある『潮月』という割烹旅館である。 探偵の仕事もそうそう毎日ある訳でも無く、万画一は大抵部屋でゴロゴロしながら書物文献を漁り、文机に置いた原稿用紙に向かって筆を走らせているのだ。 何も世間に轟かせるような論文を発表しようと目論んでいるのでは無い、詰まらぬ日々の徒然をたらたらと認めているだけである。さしづめ日記、または随筆とでもい
2022年1月15日 10:59
1/3へ2/3へ 3 次の日は朝から忙しく都内を東奔西走した。 公生の手帳メモから拾い出した五件の消費者金融らしき事務所に実際に出向いて見ることにしたのだ。 メモには住所がないので、電話をして相談したい事がありましてと、客を装いアポイントメントを取って、所在地を聞き出した。 五件の内訳は次の通り、名前の横の数字はおそらく借りた金額と思われる。 中島 300 花沢
2022年1月14日 11:31
前のお話 2 その日、万画一は加奈子にいくつか質問をした。 夫・公生の失踪前の様子、失踪に至る心当たりはないか、趣味や交友関係など、細かく質問した。 結果として、加奈子の夫・公生は無趣味で友人も少なく、仕事一筋の超真面目な男性であると、そう思わざるを得ない印象に落ち着いた。 それにしても、二千万円もするダイヤを持って失踪だなんて、普通ではあり得ない。何かの事件に巻き込まれたという可能
2022年1月13日 11:21
1 探偵・万画一道寸が離れを借りて居候しているのは、大森の山の手にある『潮月』という割烹旅館である。 探偵の仕事もそうそう毎日ある訳でも無く、万画一は大抵部屋でゴロゴロしながら書物文献を漁り、文机に置いた原稿用紙に向かって筆を走らせているのだ。 何も世間に轟かせるような論文を発表しようと目論んでいるのでは無い、詰まらぬ日々の徒然をたらたらと認めているだけである。さしづめ日記、または随筆
2021年6月12日 17:26
注 この作品はある有名な小説と酷似していますが、全くの別物です。信州の財閥、大神家の当主、大神佐文次(おおかみさもんじ)が大往生の末、その天寿を全うした。それに伴い、遺言状が大神家にて公開される事になって、関係者一同が大広間に顔を揃えた。広間には佐文次の娘、松代、竹代、梅代という3人の娘(結構おばさん)が並んだ。この3人の娘(結構おばさん)にはそれぞれ跡取りの息子が存在し、それぞれ、佐巨