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万画一探偵シリーズ

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迷探偵 万画一道寸が活躍するコメディミステリー作品
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#推理小説

死体写真館 後編

死体写真館 後編

【ここまでのお話】
『あなたの死体写真を撮影致します』
この様な広告を出したのは、乙骨写真館の店主乙骨鱗詩郎だった。
コスプレとしての擬似死体写真は好評を得て、多くの若い人達がインスタやSNSに自分の死体画像を投稿して楽しんだ。
ところがある日、その死体写真と全く同じシチュエーションで本物の殺人事件が連続して2件発生し、若い女性が変死体となって発見された。
事件を追う小泥木警部は万画一探偵に応援を

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死体写真館 前編

死体写真館 前編

『あなたの死体写真を撮影致します』

 ある日、このような怖ろしいキャッチコピーの広告が新聞、雑誌、インターネット等に流れ出た。
 初めの内こそ、スルーされていたが、誰かがその死体画像をインスタグラムにアップさせると一気に火がついた。
 もちろん、本物の死体ではない。死体に扮装したコスプレ写真なのだ。
 やがてYahoo!Newsにも取り上げられ、一躍トレンド記事のトップに踊り出た。
 広告記事を

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お化け屋敷の殺人 後編

お化け屋敷の殺人 後編

前編はこちら

7【それぞれの秘密】
「どうも刑事達が毎日、尾行している様だよ」
「そうみたいね。私のところにもいる。出したゴミなんかも袋ごと持ち帰って調べてるみたい。気持ち悪いわ」
「行動には気を付けた方がいい。あらぬ疑いを掛けられたら損だ」
「そうだけど……」
「暫くは用心して会わない方が良いな」
「どうして? 何か後ろ暗い事でもあるの?」
「いや別にないけど、余計な疑いを掛けられるのは嫌だし

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お化け屋敷の殺人 前編

お化け屋敷の殺人 前編

【プロローグ】
 
「君の気持ちは嬉しいけど、僕には……」
 男の目は長く伸ばした前髪に隠れて見えない。
「やっぱりあの子の事が好きなのね」
 女はひきつった笑顔を見せて俯いた。
「すまない……」
「謝らないで。余計みじめになるわ」
 無機質な狭い部屋。およそ恋の告白をするには不似合いな場所だ。
 たまたまバイト終わりの片付けがいつもより手間取って、彼と2人きりになれるチャンスが巡って来た。
 思

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贋作 『大神家の一族』 作 木黄溝正史 (ききみぞせいし)

贋作 『大神家の一族』 作 木黄溝正史 (ききみぞせいし)

注 この作品はある有名な小説と酷似していますが、全くの別物です。

信州の財閥、大神家の当主、大神佐文次(おおかみさもんじ)が大往生の末、その天寿を全うした。
それに伴い、遺言状が大神家にて公開される事になって、関係者一同が大広間に顔を揃えた。
広間には佐文次の娘、松代、竹代、梅代という3人の娘(結構おばさん)が並んだ。
この3人の娘(結構おばさん)にはそれぞれ跡取りの息子が存在し、それぞれ、佐巨

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迷宮happy?

迷宮happy?

迷探偵でその名も高い万画一道寸(まんがいちどうすん)が警視庁捜査一課の小泥木警部(こどろきけいぶ)に呼び出されたのは、六月のしょぼしょぼ雨が降る梅雨の最中であった。
大森の山の手にある割烹旅館『潮月(ちょうげつ)』の離れに間借りさせて貰ってる万画一は出掛けに女将さんに呼び止められ、番傘を差し出された。しかし、万画一はさっと空を見上げると、
「いやいや、この程度の雨なら、そんなもの必要ありませんや。

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