見出し画像

【毎週ショートショートnote】無情会館

お題:無情会館


「では両名、ご入室ください」

 裁判官の声で一組の男女が両開きの扉を開ける。ぎいっと年季の入った音を立てて開いたその扉は、何の変哲もない一室を広げていた。だがそこに一歩足を踏み入れると、ぼろぼろと涙を流していた女性はぴたりと涙腺が閉まり、鶏冠を立て地団駄を踏んでいた男性もぴたりと足を揃える。

「無情会館の儀、滞りなく終えました事をご報告いたします」

 裁判官の声が再度響く。男女は眉ひとつ動かす事なく離婚届に判を捺し、帰路へと就いた。

 この無情会館の儀は、各所裁判所に併設された無情会館によって執り行われる。理屈は説明出来ないが、ここに入ると情が消えるのだ。愛も憎も関係なく、どんな激情だろうとなんだろうと、綺麗さっぱり消してしまうのだ。
 一体誰が何の目的でこれを作ったのかは分からない。ただ僕は、情を消すそれは酷く恐ろしいものだと感じる。

「いや、もしかしたら人間があまりにも醜過ぎて、神様が授けた神器なのかもしれない……」


もう離婚で揉めないっ!!!


下記に今まで書いた小説をまとめていますので、お暇な時にでも是非。


この記事が参加している募集

「ほら餌の笹代だ」的な感じでサポートよろしくお願いします! ポチって貴方に谢谢させてください!!!