読書記録(2023/6)
●TIMELESS 石岡瑛子とその時代
(著) 河尻 亨一
2020年に東京都現代美術館で開催された石岡瑛子さんの個展「血が、汗が、涙がデザインできるか」に衝撃を受けて本を購入したものの読む勇気が持てず…(自分が自信を失いすぎる事を懸念した)やっと本に向き合える心が整ったので読みました。パワフルなエネルギーに溢れて尊敬しかない分、どうしてもいまの自分と比較してしまう。石岡瑛子さんは圧倒的レジェンド。でも、たまたまそんな人と同じ仕事を選んだ自分に出来ることは、自分の色で心の炎を燃やし続けること、絶やさないこと。そう思ったら、沢山のことが学べた。
●「自傷的自己愛」の精神分析
(著) 斎藤 環
自分が嫌いという人たちの深層心理について、引きこもりについて研究する専門家の視点で客観的に書かれた本。自分が嫌いと思っている人々が、その視点を変化させられるきっかけになることを目的に書かれた本ではあるものの、いざ当事者の方が読んだときに、辛くなってしまう要素が含まれているのでは?とも感じた。ただ、自分が自分を好きになれないのは自分の責任ではなくて社会側に問題がある、というのは私自身イギリスに住居を移したことで感じた体験もあるので、改めて社会問題について考える時間が持ててよかった。
●自分の中に毒を持て
(著) 岡本 太郎
芸術は爆発だ、の意味は自分の人生にちゃんと向き合えよって意味だってことを知った。彼の言葉が何十年も前に語られた事実と、石岡瑛子さんが広告に込めた世の中への批評を照らし合わせると、第二次世界大戦後から平成にかけて日本で駆け抜けた人たちの多くが、今自分が現代に感じている違和感に警鐘を鳴らし続けていて、そして世界は変わることなく続いてきたんだと悟った。それは少し悲しいこと。彼の言ってることはとっても令和的だなあと感じた。私が見据えなくてはならない未来はもっとずっと遠い先だった。
●体は全部知っている
(著) 吉本 ばなな
ずっと前から、吉本ばななさんの書く小説の世界にはすこし彩度の高い色がついているように感じる。だけど、彼女の描くストーリーにはしょっちゅう死が訪れる。大学時代、その不思議な世界にぐいぐい引き込まれるようにして、彼女の本をいっぱい読んだ時期があった。当時は不思議なコントラストと思ってた。久しぶりに短編小説を読んで、もしかしたら、彼女の描く世界が、彩度が高く映るくらいにリアルなだけかもしれないと思った。