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御代替わりの儀式──践祚、大嘗祭そして改元まで

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平成の御代替わりでの議論は徹頭徹尾、政教分離がテーマでした。そして令和の御代替わりもまたしかりでした。天皇がなさる儀礼には宗教性があるということなのですが、それは如何なるものなの…
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#創作大賞2024

「昭和天皇の忠臣」が語る「昭和の終わり」の不備──永田忠興元掌典補に聞く(「文藝春秋」2012年2月号)

「昭和天皇の忠臣」が語る「昭和の終わり」の不備──永田忠興元掌典補に聞く(「文藝春秋」2012年2月号)

 昭和から平成への御代替(みよが)わりから20年あまりが過ぎた。今上陛下は78歳(当時)。推古天皇以後では、江戸期の霊元天皇と並ぶ、歴代第4位の御長寿となられた。歴代天皇は若くして退位されており、75歳を超えてなお皇位に就かれているのは、昭和天皇と今上天皇以外にはない。

 陛下はまだまだお元気だが、ご高齢なうえにガンを患われ、療養中だ。15年には前立腺ガンの手術をお受けになり、20年には不整脈を

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「天照大神、また天神地祇、諸神明」を祀る天皇の「資格」(令和5年1月15日、日曜日)

「天照大神、また天神地祇、諸神明」を祀る天皇の「資格」(令和5年1月15日、日曜日)

知り合いの経営者と皇位継承について、ちょっとした議論をした。「愛子さんは天皇になれないのか? 愛子さんで良いではないか?」と言う。「そのあとはどうなるのか?」と聞き返すと、返答に窮している。「愛子さま天皇」の是非で、思考が止まっている。

「愛子内親王が継承すれば、あとは女系化することになる」と指摘すると、「それで良い。日本を変えよう」と来た。要は、安易な気分優先の革命論である。それで良いのかどう

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一条兼良は「大嘗祭の祭神は皇祖天照大神」と主張していない──真弓忠常「大嘗祭」論の資料の誤読(令和4年12月18日、日曜日)

一条兼良は「大嘗祭の祭神は皇祖天照大神」と主張していない──真弓忠常「大嘗祭」論の資料の誤読(令和4年12月18日、日曜日)

真弓常忠・皇學館大学名誉教授(故人)は著書の『大嘗祭』で、大嘗祭の大嘗宮の儀で祀られる神について諸説あることを解説し、その筆頭に天照大神説を掲げている。その根拠とされているのが、室町時代の公卿で、古今の有職故実に通じた不世出の古典学者・一条兼良の「代始和抄」であった。

兼良といえば、青年期に将軍から「白馬の節会はなぜアオウマノセチエと読むのか?」と訊ねられ、古典を引用して、たちどころに解答し、感

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《再掲》「米と粟の祭り」──多様なる国民を統合する新嘗祭(令和3年11月23日、勤労感謝の日)

《再掲》「米と粟の祭り」──多様なる国民を統合する新嘗祭(令和3年11月23日、勤労感謝の日)

本日夕刻から、陛下は宮中の奥深い神域・神嘉殿で、皇祖神ほか天神地祇を祀り、新穀を供し、みずから食される新嘗祭を親祭されます。陛下がなさる新嘗祭とはいかなる祭りなのか、以下、斎藤吉久の「誤解だらけの天皇・皇室」メールマガジン(2007年11月20日号)から転載・再掲します。

▽1 見落とされている粟の存在

毎年11月23日の夜に宮中で行なわれる新嘗祭、あるいは天皇が天皇となって初めて行なう大嘗祭

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少し見えてきた非宗教的な昭和天皇「大喪の礼」の経緯──皇室の伝統を無視する政教分離厳格主義者たちの創作(2019年12月30日)

少し見えてきた非宗教的な昭和天皇「大喪の礼」の経緯──皇室の伝統を無視する政教分離厳格主義者たちの創作(2019年12月30日)

(画像は外務省。同HPから拝借しました。ありがとうございます)

一昨日、時事通信が、昭和天皇の大喪の礼に関する、興味深い記事を配信しました。昭和57年に外務省が宮内庁と極秘に協議していた。外務省外交史料室が秘密指定を解除した記録から明らかになった、というのです。〈https://sp.m.jiji.com/article/show/2320998

記事によると、その経緯は以下のようなものでし

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皇室の伝統破壊を記載する皇統譜──保守派人士たちはなぜ怒らないのか(2019年12月28日)

皇室の伝統破壊を記載する皇統譜──保守派人士たちはなぜ怒らないのか(2019年12月28日)

一連の御代替わりの儀礼がすべて終了した。報道によると、宮内庁は27日夕刻、今上天皇のために新調された大統譜に「即位」のことを記載した。

毎日新聞電子版には喜屋武真之介氏撮影による画像が7枚載っている。真新しい大統譜(天皇・皇后の皇統譜)は和綴で、表紙には「第百二拾六代 大統譜」と楷書で記されている。

中の記載は漢字カタカナ混じりである。歴史仮名遣いで、句読点はない。2枚目と3枚目の写真は同じペ

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やはりそうだったか、令和大嘗宮の違和感──宮内庁さま、経費節減はまだしも政教分離違反では?(2019年12月08日)

やはりそうだったか、令和大嘗宮の違和感──宮内庁さま、経費節減はまだしも政教分離違反では?(2019年12月08日)

前から気になっていたことがありました。大嘗宮周辺の地面の色です。

遠目で見ると廻立殿と大嘗宮の周りだけが白く見えます。プレハブ幄舎の屋根のように、白いビニールを敷いたのか、まさかそんなことはないだろうと疑っていました。

それで方々に話を聞いてみたところ、前回同様、細かい白い砂(砂利)を敷いたというのです。もともと芝生があったところなどは、「歩くとフワフワする」ようです。

でもヘンなんです。中

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「皇室の伝統」は国民主権主義と対立するのか──朝日新聞の「新元号」関連企画を読む(2019年4月21日)

「皇室の伝統」は国民主権主義と対立するのか──朝日新聞の「新元号」関連企画を読む(2019年4月21日)

5年前の今日、午前0時をもって、皇位の継承が行われました。元号は平成から令和へと改まりました。本来はお祝いの日なのに、混乱した議論ばかりが続き、なんとも暗い気分に苛まされたことを思い出します。
ここに1本の拙文を転載し、2度とあってはならないと肝に銘ずる次第です。(令和6年5月1日)

▽1 いまごろ決まった「賢所の儀」

 先週15日の月曜日、宮内庁で第6回大礼委員会が開かれ、践祚の式(賢所の儀

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問われているのは民主主義のあり方だ──御代替わり儀礼違憲訴訟はどこまで正当か 3(2019年3月24日)

問われているのは民主主義のあり方だ──御代替わり儀礼違憲訴訟はどこまで正当か 3(2019年3月24日)

 ずいぶんご無沙汰ですが、昨年暮れに御代替わり儀礼違憲訴訟を東京地裁に提訴した市民団体の言い分は妥当なのか、検証を続けます。誤りがあるなら、何が原因なのか、深く掘り下げるのは意味があることだと、私は考えています。

 ご存じのように、この訴訟は裁判所によって二分され、国費支出の差し止めに関しては、門前払いとなりました。東京地裁は口頭弁論も開かないまま、2月上旬、納税者として支出差し止めを要求できる

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靖国訴訟原告団が作成したパンフレット序文の「偽善」──御代替わり儀礼違憲訴訟はどこまで正当か 2(2019年1月4日)

靖国訴訟原告団が作成したパンフレット序文の「偽善」──御代替わり儀礼違憲訴訟はどこまで正当か 2(2019年1月4日)

 明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

▽1 正面から向き合い、学ぶ姿勢は立派

 さて、昨年12月、御代替わり儀礼違憲訴訟を東京地裁に提訴した市民団体の言い分は妥当なのか、吟味を続けます。

 前回は、提訴の前に13人の「呼びかけ人」が原告団への参加を広く一般に募った「委任状」の文章を材料に、原告らが、古来の天皇のあり方を否定し、日本国憲法の規定に厳格な解釈・運用を要求

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憲法は宗教の価値を否定してはいない──御代替わり儀礼違憲訴訟はどこまで正当か 1(2018年12月23日)

憲法は宗教の価値を否定してはいない──御代替わり儀礼違憲訴訟はどこまで正当か 1(2018年12月23日)

 今日は天皇誕生日です。今上陛下には宝算85、先帝に次ぐ歴代2位のご長寿となりました。そして、平成最後のお誕生日でもあります。

 お誕生日に当たり、例年どおり記者会見のお言葉が公表されました。平成27年以来、代表質問は一問のみとなり、今年は「現在のご心境」がテーマとされましたが、陛下はいつものように、まず災害の犠牲者や被災者に深く心を寄せられました。

 その上で、「譲位の日」まで、象徴天皇とし

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30年前と状況は変わっていない──「周回遅れ」神社関係者の御代替わり論議 4(2018年12月16日)

30年前と状況は変わっていない──「周回遅れ」神社関係者の御代替わり論議 4(2018年12月16日)

 この夏、御代替わりをテーマに、國學院大学で開かれた、神社本庁の研究大会の批判を続けます。今回は最終回です。

 その前に、前回のメルマガ(ブログ)のタイトルが誤っていました。正しくは「朝儀を復興させた近世と何でもありの現代の違い」です。失礼しました。

 さて、9月3日付神社新報の報道によると、浅山雅司神社本庁総合研究部長心得の報告、齊藤智朗國學院大学教授および松本丘皇學館大学教授の発題にひき続

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朝儀を復興させた近世と何でもありの現代の違い──「周回遅れ」神社関係者の御代替わり論議 3(2018年12月9日)

朝儀を復興させた近世と何でもありの現代の違い──「周回遅れ」神社関係者の御代替わり論議 3(2018年12月9日)

(画像は昭和の大嘗宮)

 今夏、渋谷の國學院大学で、御代替わりをテーマに、神社本庁の研究大会が開かれました。その批判を続けます。

 前々回(当メルマガ9月17日付)は浅山雅司神社本庁総合研究部長心得の報告、前回(同10月8日付)は齊藤智朗國學院大学教授の発題を取り上げました。

▽1 朝廷の権威向上が図られた近代

 9月3日付神社新報の一面トップ記事によると、齊藤教授のあと、松本丘皇学館大学

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現代にふさわしい大嘗祭のあり方とは?──秋篠宮文仁親王殿下の「大嘗祭」発言に思う(2018年12月2日)

現代にふさわしい大嘗祭のあり方とは?──秋篠宮文仁親王殿下の「大嘗祭」発言に思う(2018年12月2日)

 秋篠宮文仁親王殿下がお誕生日会見で、大嘗祭のあり方について、率直に疑義を示されたというので話題になっている。

 殿下は、大嘗祭は「ある意味の宗教色が強いもの」で、したがって「国費で賄うことが適当かどうか」と仰せになった。「宗教行事と憲法との関係はどうなのか」「やはり内廷会計で行うべきだ」「身の丈に合った儀式にすれば」というのが「私の考え」とのことである。

 関連質問に対してのお答えだが、殿下

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