斎藤吉久

昭和31年、崇峻天皇の后・小手姫が養蚕と機織りを教えたと伝えられる福島県・小手郷に生ま…

斎藤吉久

昭和31年、崇峻天皇の后・小手姫が養蚕と機織りを教えたと伝えられる福島県・小手郷に生まれる。弘前大学、学習院大学を卒業後、雑誌編集記者、宗教紙編集長代行などを経て、現在フリー。著書に『天皇の祭りはなぜ簡略化されたか』など。「戦後唯一の神道思想家」葦津珍彦の「没後の門人」といわれる

最近の記事

神奈川県護国神社と戦没者慰霊堂──宗教的祭儀と非宗教的行事の間(「神社新報」平成12年6月12日から)

今週の金曜日に、神奈川県戦没者追悼式が行われる。 〈https://www.pref.kanagawa.jp/docs/r6w/prs/r0613007.html〉 いまは県民ホールでの開催だが、以前は上大岡の慰霊堂が会場だった。以下は、そのころに書いた拙文である。テーマは政教分離である。 上の画像はいまの追悼式で、県のHPから拝借した。HPに載る式次第を見ると、いまは宗教者の参加がなくなっている。非宗教化の結果であろうか。(令和6年5月6日)  JR横浜駅で京浜急行の下り

    • 生々しい天皇意識を感じない?──過激派もネトウヨも神道学者も(令和3年1月31日、日曜日)

      いまやSNSの時代、誰でも自由に情報を発信できます。天皇・皇室についても、その悠久なる歴史と伝統への知識や理解がどの程度のものなのか、慎重さや自制心があるのかないのか、勝手気ままな議論が展開されています。百花斉放とはまさにこのことでしょう。 我こそは主権者であり、天皇・皇室のあり方を決めるのは自分だと言わんばかりの高慢な論調は何とかならないものでしょうか。ということで、以前書いた拙文を転載します。(令和6年5月4日) 前回、SNS時代の天皇論、天皇研究のあり方について書きま

      • 伝統主義者たちの女性天皇論──危機感と歴史のはざまで分かれる見解(「論座」平成16年10月号から)

        以前は圧倒的多数派だった「女系継承容認」派が、このごろはむしろ「男系維持」派が勢いを増しているようです。政府部内の考え方も様変わりしていると聞きます。 以下は20年も前に、「論座」編集部の依頼で書いたリポートです。(令和6年5月3日) ▢ 報道されなかった意見陳述  今年(2004年)5月、衆院憲法調査会は「天皇」をテーマに、参考人の意見陳述と質疑、自由討議を行いました。新聞各紙は「女性天皇容認論相次ぐ」などの見出しで、参考人や出席議員から 「早く皇室典範を改正して、女

        • 「愛子さま天皇」か旧皇族復帰か、皇位継承問題を単純化する現代人の3つの病理(2020年4月26日)

          いよいよ国会で皇位継承論議がスタートするようです。焦点は安定的な皇族数の確保で、政府内には具体的な方法論が検討されているとも聞きます。一方では、相変わらず「愛子さま天皇」待望論が根強いのはどういうことなのでしょう。 以下は以前書いた拙文です。(令和6年5月3日) さて、今日は三題噺を書きます。無機質論的な議論への違和感、性急に解決法を求める悪癖、議論の主体の不在の3つ。ひとまとめにするなら、現代人の病理というようなものでしょうか。 ▽1 Y染色体の維持が目的ではあり得ない

        神奈川県護国神社と戦没者慰霊堂──宗教的祭儀と非宗教的行事の間(「神社新報」平成12年6月12日から)

        • 生々しい天皇意識を感じない?──過激派もネトウヨも神道学者も(令和3年1月31日、日曜日)

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        • 「愛子さま天皇」か旧皇族復帰か、皇位継承問題を単純化する現代人の3つの病理(2020年4月26日)

          どうしても女性天皇でなければならないのか。男系を固守することは不正義なのか。なぜ男系の絶えない制度を考えようとしないのか?《斎藤吉久のブログ 令和2年2月9日》

          国会論議が始まる前に、基本的な論点を整理してみます。 以前書いた拙文の転載です。(令和6年5月3日) 女性天皇容認のみならず、「万世一系」とされる皇統に根本的変革を招く女系継承容認論が沸騰している。現在の皇位継承順位を一変させる「愛子さま天皇」待望論までが飛び出して、かまびすしい。 古来の男系継承を堅持することがまるで不正義であるかのような口吻である。男系男子をもって皇位が継承され続けることは正義に反することなのだろうか。検討してみたい。 ▽1 皇室のルールをなぜ変える

          どうしても女性天皇でなければならないのか。男系を固守することは不正義なのか。なぜ男系の絶えない制度を考えようとしないのか?《斎藤吉久のブログ 令和2年2月9日》

          基本を忘れた女系継承容認論──小嶋和司教授の女帝論に学ぶ(2011年12月31日)

          国会は連休明けから、皇室に関する協議を開始させると伝えられます。皇室の歴史と伝統を軽視する、過去の混乱した論議を思うと、一体どうなるものかと心配です。 ということで、以前、書いた拙文を転載します。(令和6年5月3日、憲法記念日)  今年最後のメルマガです。  今日は小嶋和司東北大学教授(故人)の憲法論をご紹介します。以前、政教分離論について取りあげたことがありますが、今回は女帝論について、です。  報道によると、羽毛田宮内庁長官が10月上旬、野田首相に「女性宮家」創設を

          基本を忘れた女系継承容認論──小嶋和司教授の女帝論に学ぶ(2011年12月31日)

          憲法は政府に宗教的無色中立性を要求していない──小嶋和司教授の政教分離論を読む(2011年10月16日のメルマガから)

          憲法は政府に宗教的無色中立性を要求していない──小嶋和司教授の政教分離論を読む(2011年10月16日のメルマガから)

          「皇室の伝統」は国民主権主義と対立するのか──朝日新聞の「新元号」関連企画を読む(2019年4月21日)

          5年前の今日、午前0時をもって、皇位の継承が行われました。元号は平成から令和へと改まりました。本来はお祝いの日なのに、混乱した議論ばかりが続き、なんとも暗い気分に苛まされたことを思い出します。 ここに1本の拙文を転載し、2度とあってはならないと肝に銘ずる次第です。(令和6年5月1日) ▽1 いまごろ決まった「賢所の儀」  先週15日の月曜日、宮内庁で第6回大礼委員会が開かれ、践祚の式(賢所の儀、皇霊殿神殿に奉告の儀)の時刻および式次第が決まりました。  御代替わりでもっ

          「皇室の伝統」は国民主権主義と対立するのか──朝日新聞の「新元号」関連企画を読む(2019年4月21日)

          伊勢神宮「神田」で誕生した「驚異の稲」イセヒカリ─コシヒカリまっ青だから出まわらない(総合情報誌「選択」平成11年3月号)

          近所の蕎麦屋さんに、イセヒカリで醸したという日本酒が置いてある。県内のワイナリーで醸造された酒だという。〈https://musashiwinery.com/2023/02/02/aenohikari_r4by/〉 イセヒカリの酒といえば、元山口県農業試験場長の岩瀬さんが試作した酒の強烈な印象が忘れられない。いままで飲んだ日本酒のイメージを完全に覆すような聖なる飲み物だった。 ということで、イセヒカリについて書いた拙文を転載します。(令和6年4月29日、昭和の日)  日本最

          伊勢神宮「神田」で誕生した「驚異の稲」イセヒカリ─コシヒカリまっ青だから出まわらない(総合情報誌「選択」平成11年3月号)

          皇祖と民とともに生きる天皇の精神──宮廷行事「さば」と戦後復興(「神社新報」平成10年6月8日号)

          今日は「昭和の日」なので、戦後復興の先頭に立たれた昭和天皇について、以前、書いた拙文を転載します。(令和6年4月29日)  明治時代に惜しくも廃止されてしまいましたが、千年にわたって続いた「さば」と呼ばれる宮中行事があります。  漢字では「生飯」などと書き、梵語(ぼんご)だといわれます。仏教に由来するとされ、仏教辞典には食事のときに少しの飯粒をとりわけて鬼界の衆生(しゅじょう)に施すこと。あまねく諸鬼に散ずるために「散飯」。最初に三宝(仏法僧)、次に不動明王、鬼子母神に供

          皇祖と民とともに生きる天皇の精神──宮廷行事「さば」と戦後復興(「神社新報」平成10年6月8日号)

          神道人が体験したシベリア抑留──封印を解かれたロシア公文書(「神社新報」平成15年8〜9月)

          毎日の青島顕記者が昨日付で「シベリアの戦友に無名戦士などいない 割り出した4万6300人の名前」を書いている。民間人が挑んだ、シベリア抑留者の名簿作成のリポートである。 〈https://mainichi.jp/articles/20240427/k00/00m/040/145000c?utm_source=article&utm_medium=email&utm_campaign=mailasa&utm_content=20240428〉 いまでは厚労省のサイトにも、犠牲者

          神道人が体験したシベリア抑留──封印を解かれたロシア公文書(「神社新報」平成15年8〜9月)

          永田忠興元掌典補ロング・インタビュー──「昭和天皇の忠臣」が語る「皇位継承」の過去と未来

          以下は「文藝春秋」2012年2月号に掲載された永田忠興元掌典補インタビューのロング・バージョンです。聞き手は私です。(2012年2月1日) ▽1 家族的だったあの頃の宮内庁 ──昭和三十八(一九六三)年に國學院大學神道学科を卒業されたあと、宮内庁掌典職に務める国家公務員となられたそうですが、掌典職とはどのようなところですか? 永田 天皇陛下の祭祀を担当する部署で、掌典長以下、掌典次長、掌典五名、内掌典五名、掌典補六名からなります。  戦前は国家機関でしたが、現行憲法下

          永田忠興元掌典補ロング・インタビュー──「昭和天皇の忠臣」が語る「皇位継承」の過去と未来

          鎌倉のセンセの思い出 5 私を育てた人(令和6年4月28日)

          センセに出会ったのは、私が総合情報誌の編集記者をしていたころだった。全ページをスクープで埋める月刊誌で、若気の至りもあって、かなりしつこい取材をしていたのだが、印象にも残り、気に入ってもくれたらしい。ネタを取りに行くと、嫌な顔ひとつせずに対応してくれた。 靖国神社宮司インタビュー 昭和60年の夏、「戦後40年」で靖国問題が話題となっていた。4ページの記事を予定し、通信社の社会部デスクに発注済みだった。下取材は私が行った。終戦の日には中曽根首相が「公式参拝」し、大騒動に発展

          鎌倉のセンセの思い出 5 私を育てた人(令和6年4月28日)

          男女平等を説く神道講師「賀屋鎌子」──数千の聴衆を酔わしむ熱誠(「神社新報」平成12年11月13日号)

          朝ドラ「虎の翼」が高視聴率を稼いでいるらしい。 モデルは日本ではじめての女性弁護士。女性の社会進出、男女雇用機会均等がテーマなら、いまの視聴者にウケると踏んだのだろうか? 同じ発想から女性天皇待望論も高まっているので、時流に乗り、さらにこれを後押ししようとの深謀遠慮かとも邪推する。だとすると、あまりいい気分ではない。 女性解放といえば、教科書には平塚らいてうの青鞜社しか載っていないが、じつはまったく別の、知られざる先駆的運動が神社界のなかにあった。 それが以下、転載する賀屋鎌

          男女平等を説く神道講師「賀屋鎌子」──数千の聴衆を酔わしむ熱誠(「神社新報」平成12年11月13日号)

          女系は「万世一系」を侵す──「神道思想家」葦津珍彦の女帝論(「論座」1998年12月号特集「女性天皇への道」から)

          安定的な皇位継承のためには、皇族数の確保が必要だとする党の考えを、自民党が衆参両院議長に提出したと伝えられる。 考えのなかには、いわゆる「女性宮家」創設案も含まれているらしい。 いずれにしても、連休明けから、いよいよ与野党の協議が始まるという。 そこで、もう一度、議論のスタート点に立ち返ってみたい。 以下は私が、女性天皇論について、はじめて書いた記事である。25年前、有楽町のマリオンで、当時の「論座」編集長から執筆を依頼された日のことが鮮やかに甦ってくる。以来、私は皇室問題に

          女系は「万世一系」を侵す──「神道思想家」葦津珍彦の女帝論(「論座」1998年12月号特集「女性天皇への道」から)

          「答礼」として始まった!?天皇の外国御訪問──高橋紘『人間 昭和天皇』を読む(2016年2月17日)

          佳子内親王殿下のギリシャ公式御訪問が正式決定されたと伝えられる。皇室外交が完全に定着しているということだが、本来、皇室外交なるものは憲法には定めがない。にもかかわらず、誰も異議を挟むものがいないように見えるのはどうしてだろうか? 以前、書いた拙文を転載、再掲し、問題提起としたい。  戦後随一の皇室ジャーナリストと思われる、といっても、皇室ジャーナリズムなどというのは、戦後にしか存在しないのだが、共同通信の皇室担当記者だった高橋紘さんの著書に、総ページ1千ページを超える『人間

          「答礼」として始まった!?天皇の外国御訪問──高橋紘『人間 昭和天皇』を読む(2016年2月17日)