マガジンのカバー画像

式典準備委員会資料を読む

7
令和の御代替わりを前に式典準備委員会が開かれました。その資料を精査します
運営しているクリエイター

記事一覧

保守政権にして平成の悪しき前例が踏襲される!?──式典準備委員会の配付資料・議事概要を読む(2018年02月05日)

保守政権にして平成の悪しき前例が踏襲される!?──式典準備委員会の配付資料・議事概要を読む(2018年02月05日)

 1月9日、天皇陛下の御退位および皇太子殿下の御即位に伴う式典準備委員会を内閣に設置することが閣議決定され、その初会合が同日、開催されました。

 公表された資料を読むと、案の定、さまざまな不都合が指摘された、平成の悪しき前例が繰り返されるのではないかと強く懸念されます。

▽1 前回指摘の不都合に目をつぶる?

 メディアの報道によると、菅内閣官房長官を委員長とする同委員会は、月1回程度、非公開

もっとみる
石原信雄元内閣官房副長官の意見への3つの疑問──宗教性の否定、退位と即位の分離、賢所の儀(2018年03月05日)

石原信雄元内閣官房副長官の意見への3つの疑問──宗教性の否定、退位と即位の分離、賢所の儀(2018年03月05日)

 遅ればせながら、2月20日に開かれた、第2回目式典準備委員会について書きます。案の定というべきか、悪しき前例の踏襲が行われることとなりそうです。

 指摘したいことは何点かありますが、公表されている議事概要に沿って、ここでは有識者ヒアリングについて、とくに石原信雄元内閣官房副長官の意見について、考えてみることにします。

 政府の説明によると、前回、1月の初会合で、何らかの儀式を行うことが望まし

もっとみる
どこが皇室の伝統の尊重なのか──賢所の儀の途中で朝見の儀が行われる!?(平成30年3月15日)

どこが皇室の伝統の尊重なのか──賢所の儀の途中で朝見の儀が行われる!?(平成30年3月15日)

 前回、言い尽くせなかったこと、正確でないことがありましたので、補足します。

 まず、陛下の退位(譲位)の式典に関する政府の基本的な姿勢です。

▽1 「何らかの儀式」を行う法的根拠

 陛下の退位の日取りが二転三転したのは、何らかの儀式が想定されていたからです。昨年12月の皇室会議で「国民生活への影響等を考慮」「静かな環境の中で、こぞって寿ぐにふさわしい日」「慌ただしい時期は避ける」などという

もっとみる
天皇の祭祀について提言する有識者がいない!?──新儀を提案し、新語を多用する歴史家たち(平成30年3月21日)

天皇の祭祀について提言する有識者がいない!?──新儀を提案し、新語を多用する歴史家たち(平成30年3月21日)

 第2回式典準備委員会はたったの40分しか時間がありませんでした。政府の会合は所詮、そんなものなのかも知れませんが、そうなると実質的な検討が根回しの段階で行われるのは必定です。したがって有識者のヒアリングはきわめて重要です。

 けれども残念なことに、機能を十分に果たしていないのではありませんか。皇室の伝統である祭祀について深く語れる適任者が見当たらないからです。以前、石原信雄元内閣官房副長官のヒ

もっとみる
大嘗祭は稲の祭りではなく、国民統合の儀礼である──第2回式典準備委員会資料を読む 9(2018年6月5日)

大嘗祭は稲の祭りではなく、国民統合の儀礼である──第2回式典準備委員会資料を読む 9(2018年6月5日)

 平成の御代替わりには様々な不都合が指摘されましたが、これを基本的に前例踏襲する次の御代替わりも当然にして、同様の不都合が指摘されます。次もそうなら、次のまた次も同様でしょう。不都合なる事態が固定化しないよう一縷の望みをかけて、あえて批判を続けます。

 なぜ不都合なる事態が起きるのか、その原因を、2月に開かれた第2回式典準備委員会に提出された資料のなかから探り出す作業をこれまで行ってきました。前

もっとみる
「退位の儀式など歴史にない」と明言した有識者は皆無──第2回式典準備委員会資料を読む 11(2018年6月25日)

「退位の儀式など歴史にない」と明言した有識者は皆無──第2回式典準備委員会資料を読む 11(2018年6月25日)

 有識者ヒアリングの2番目の設問は、「天皇陛下の御退位に伴う式典のあり方」でした。

 これに対して、政府がまとめた資料によれば、4方とも共通して「国事行為として、国の儀式とする」「剣璽を安置する」と述べ、園部、所、本郷の三氏は「退位の事実を広く明らかにする儀式とする」「陛下のお言葉がある」いう意見で一致し、さらに石原、園部、所の三氏は「平成31年4月30日昼に実施」で一致したのでした。

 誰一

もっとみる
「大嘗祭は第一級の無形文化財」と訴えた上山春平──第2回式典準備委員会資料を読む 13(2018年7月16日)

「大嘗祭は第一級の無形文化財」と訴えた上山春平──第2回式典準備委員会資料を読む 13(2018年7月16日)

 政府は、大嘗祭について、「稲作農業を中心とした我が国の社会に古くから伝承されてきた収穫儀礼に根ざしたもの」であり、「皇位継承に伴う一世に一度の重要な儀式」だと理解しています。

 この解釈には、何度も申し上げたように、2つの問題点があります。(1)大嘗祭を「稲作の儀礼」と解釈すること、(2)稲作儀礼と皇位継承儀礼とを直結して理解すること、の2点です。

 誤った理解の原因はいうまでもなく、稲と粟

もっとみる