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天皇および天皇制─天皇とは公正かつ無私なる祭り主です

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天皇は1年365日、祭りをなさいます。皇祖神ほか天神地祇を祀り、「国中平らかに民安かれ」と祈られます。あらゆる神を祀り、国と民のために無私なる祈りを捧げるのは、日本の天皇だけです
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宮中祭祀を「法匪」から救え──Xデーに向けて何が危惧されるのか。昭和の失敗を繰り返すな(「文藝春秋」2012年2月号)

宮中祭祀を「法匪」から救え──Xデーに向けて何が危惧されるのか。昭和の失敗を繰り返すな(「文藝春秋」2012年2月号)

 昭和から平成への御代替わりは、本誌(「文藝春秋」2012年2月号。http://gekkan.bunshun.jp/articles/-/255)掲載の永田忠興・元宮内庁掌典補インタビューが浮き彫りにしているように、悠久なる皇室の歴史と伝統にそぐわない、さまざまな不都合がありました。

 それらはつまるところ、3点に集約されます。

(1)皇室の伝統が側近によって断絶された戦後史の事実が見落とさ

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社会党議員が持ち出した「国事」「私事」の対比──歴史的に考えるということ 8(2013年06月09日)

社会党議員が持ち出した「国事」「私事」の対比──歴史的に考えるということ 8(2013年06月09日)

▽1 皇太子殿下の御結婚から20年

 20年前の今日(平成5年6月9日)、皇太子殿下の「結婚の儀」が行われました。

 殿下は宮内庁を通じて、「月日のたつのは早いもので……」とご感想を発表されましたが、ご実感でしょう。

 宮中三殿・賢所大前で行われる「結婚の儀」は、「朝見の儀」「宮中饗宴の儀」とともに、今上陛下の先例を踏襲して、「国の儀式」として行われました。

 平成5年4月13日の「朝日新

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田植えをなさる世界唯一の君主(平成19年5月16日水曜日)

田植えをなさる世界唯一の君主(平成19年5月16日水曜日)

(画像は宮内庁HPから拝借しました。ありがとうございます)

 今上天皇はきのう、皇居内の水田でみずから泥田に入り、田植えをなさいました。今朝の新聞には第三社会面あたりに、ほんの申し訳程度にベタ記事で載っています。何と扱いの小さいことでしょう。

 天皇がみずから稲作をはじめられたのは昭和天皇が最初で、今上天皇はその精神を受け継がれ、田植えと稲刈りだけでなく、播種も行われるようになりました。

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「象徴」天皇論の宣教師──『検証「女性宮家」論議』の「まえがきにかえて」 6(2017年4月29日)

「象徴」天皇論の宣教師──『検証「女性宮家」論議』の「まえがきにかえて」 6(2017年4月29日)

まえがきにかえて──宮中祭祀にも「女性宮家」にも言及しない前侍従長インタビュー

▽6 「象徴」天皇論の宣教師

 渡邉前侍従長(いまは元職)は、日経ビジネスの連載企画の趣旨に沿って、「陛下のメッセージ」に言及しています。

「僕が推測するに、天皇陛下がもし仮にここで次の世代に伝えたいことがあったら何かという質問があったら、先の大戦のことをおっしゃると思うんです。80歳のお誕生日のときに、80年で

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社会的に活動なさるのが天皇ではない──『検証「女性宮家」論議』の「まえがきにかえて」 4(2017年4月27日)

社会的に活動なさるのが天皇ではない──『検証「女性宮家」論議』の「まえがきにかえて」 4(2017年4月27日)

まえがきにかえて──宮中祭祀にも「女性宮家」にも言及しない前侍従長インタビュー

▽4 社会的に活動なさるのが天皇ではない

 渡邉前侍従長(いまは元職)はインタビュー記事のなかで、「無私の心」の現れとして、陛下のご活動に言及しています。

 若いころに親族と離ればなれになったハンセン病患者の療養所を訪ねられ、老後を心配され、1人1人に親しく声をかけられ、そのお姿に看護師たちがもらい泣きするという

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歴史的天皇像の喪失──『検証「女性宮家」論議』の「まえがきにかえて」 1(2017年04月24日)

歴史的天皇像の喪失──『検証「女性宮家」論議』の「まえがきにかえて」 1(2017年04月24日)

(画像は令和の大嘗祭で、令和元年11月14日に行われた大嘗宮の儀(悠紀殿供饌の儀)。宮内庁HPから拝借しました。ありがとうございます)

「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」の座長代理を務めた御厨貴東大名誉教授が新聞各社のインタビューで、「女性宮家」創設への施策を進めるよう安倍政権に要求している。新聞記事によると、その目的は「皇族数の減少への対応」とされている。

 消化剤をかけられて鎮火

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宮中祭祀「破壊」の背景に憲法問題あり──原武史「宮中祭祀廃止論」を批判する(2008年4月29日)

宮中祭祀「破壊」の背景に憲法問題あり──原武史「宮中祭祀廃止論」を批判する(2008年4月29日)

(画像は宮中三殿。宮内庁HPから拝借しました。ありがとうございます)

 ひき続き、原武史教授の宮中祭祀廃止論を批判します。

 原教授は月刊「現代」5月号掲載の論考で、昭和天皇の時代、「高齢を理由に宮中祭祀が削減または簡略化されて」いった、と書いています。

 これに対して、昭和天皇は「いいがたい不安」を覚えていた。今上天皇は先帝以上に祭祀に「熱心」だが、皇太子はどうだろう、「新しい神話」を模索

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4段階で進んだ宮中祭祀の「空洞化」──原武史「宮中祭祀廃止論」への批判 (2008年5月7日)

4段階で進んだ宮中祭祀の「空洞化」──原武史「宮中祭祀廃止論」への批判 (2008年5月7日)

(画像は宮中三殿。宮内庁HPから拝借しました。ありがとうございます)

 原武史教授の宮中祭祀廃止論への批判を、さらに続けます。

 わが国では言論も学問も自由で、いろんな天皇論がありますが、これほど天皇・皇室について、あるいは皇室の祭祀について、基本的理解の欠落した研究を読んだのは久しぶりです。

 そもそも議論の前提が間違っています。原教授は、月刊「現代」5月号掲載の論考で昭和史を振り返り、1

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「第2の栗栖弘臣」を報道した「週刊文春」昭和58年1月20日号の記事──宮内庁あげての宮中祭祀改変(2008年5月13日)

「第2の栗栖弘臣」を報道した「週刊文春」昭和58年1月20日号の記事──宮内庁あげての宮中祭祀改変(2008年5月13日)

(画像は宮中三殿。宮内庁HPから拝借しました。ありがとうございます)

 原武史・明治学院大学教授の宮中祭祀廃止論批判を今号も続けます。

 その前に、ひと言お礼を申し上げます。27号(4月15日号)から始まった原批判ですが、おかげさまで高名な大学の先生など、多くの方々から過分なる評価を受けました。あつくお礼を申し上げます。

▽1 前号のおさらい

 さて、前号では、昭和後期の宮中祭祀に関する歴

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宮中祭祀を改変させた「ラスプーチン」を代弁!? ──星野甲子久『天皇陛下356日』を読む(2016年7月8日)

宮中祭祀を改変させた「ラスプーチン」を代弁!? ──星野甲子久『天皇陛下356日』を読む(2016年7月8日)

(画像は宮中三殿。宮内庁HPから拝借しました。ありがとうございます)

 前回、昭和の宮中祭祀簡略化について、最初に公にしたのは、私が知るかぎり、読売新聞の皇室記者だった星野甲子久(ほしのかねひさ)さんによる『天皇陛下の356日──ものがたり皇室事典』(1982年)だとお話ししました。

 ただ、この本は上中下三巻のデラックス本で、図書館でもなかなかお目にかかれないようです。けれども、2年後の昭和

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これは「生前退位」問題ではない──陛下のビデオ・メッセージを読んで(2016.8.17)

これは「生前退位」問題ではない──陛下のビデオ・メッセージを読んで(2016.8.17)

(画像はおことばを述べられる陛下。平成28年8月8日。宮内庁HPから拝借しました。ありがとうございます)

 遅ればせながらですが、今月8日に発表された、陛下のお言葉をあらためて読んでみたいと思います。

 結論から先にいえば、これは巷間伝えられているような、「生前退位」の表明ではないと私は考えます。

 それはお言葉のなかに「生前退位」なる表現がどこにも見当たらないからではありません。制度上の制

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葦津珍彦の天皇論を学び直してほしい──竹田恒泰氏の共著『皇統保守』を読む 最終回(2016年5月29日)

葦津珍彦の天皇論を学び直してほしい──竹田恒泰氏の共著『皇統保守』を読む 最終回(2016年5月29日)

 現代を代表する伝統主義者の1人である竹田恒泰氏の天皇論を、10回にわたり、あえて批判的に読み進めてきました。

 他意はありません。伝統主義的天皇論の進化を心から願うからです。

 しかしどうしても理解できない人もいるようです。私の表現力がつたないからなのか、個人攻撃をしていると見る人が少なくないようです。

 くれぐれも誤解のないようにお願いします。誰が間違っているとか、悪いとかいうのではあり

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過去の遺物ではなく時代の最先端を行く天皇──竹田恒泰氏の天皇論を読む 番外編(2016年5月22日)

過去の遺物ではなく時代の最先端を行く天皇──竹田恒泰氏の天皇論を読む 番外編(2016年5月22日)

 竹田恒泰氏の天皇論を、八木秀次氏との共著『皇統保守』をテキストに、あえて批判的に読んできました。伝統主義的天皇論の進化を心から願うからです。

 きっかけは、3月の国連女性差別撤廃委員会の勧告騒動でした。女系継承を認めるよう日本の皇室典範の見直しを求めようとした委員会に、保守派が猛反発したのは当然でした。

▽1 起こるべくして起きた

 そもそも天皇とは何をなさるお立場なのでしょうか。

 憲

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葦津珍彦の天皇論に何を学んだのか──竹田恒泰氏の共著『皇統保守』を読む その9(2016年5月15日)

葦津珍彦の天皇論に何を学んだのか──竹田恒泰氏の共著『皇統保守』を読む その9(2016年5月15日)

▽1 祭祀を「天皇の国事行為」に

 竹田恒泰氏と八木秀次氏の共著をテキストに、竹田氏の伝統主義的天皇論をあえて批判しています。竹田氏は「戦後唯一の神道思想家」といわれる葦津珍彦に「学ぶ」と仰せですが、むしろ不一致点が目立ちます。

 私の天皇・皇室論は葦津の天皇論を一般に紹介することが出発点でしたから、竹田氏の天皇論は親近感と期待を込めて読み始めました。けれども、読めば読むほど相違点が明らかにな

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