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#夏の思い出

「ウィンウィンウィー」と「トゥクトゥクオーシ」─蝉の話

「ウィンウィンウィー」と「トゥクトゥクオーシ」─蝉の話

私が子どもだった頃、秋田にはミンミンゼミもツクツクボウシもいなかった。少なくとも私の町で鳴き声を聞いたことはなかった。

その頃の私のイメージでは、ミンミンゼミもツクツクボウシも、存在は知っているにしても、関東から西のほうにいる蝉であった。夏場に西へ旅行することもなかったので、私はその鳴き声を直に聞く機会がなく、TVドラマか昆虫番組で聞いて知っているだけであった。

それが、

小学から中学にあが

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芋虫の“魂魄(こんぱく)”は躰の外に存在する。

芋虫の“魂魄(こんぱく)”は躰の外に存在する。

アゲハチョウが、幼虫から蛹になるまでをご覧になったことがあるでしょうか。

蝶々が卵から孵って芋虫になり蛹になり、やがて蝶となる。この劇的な変化が彼らの身体に起きることは誰もが知っていることです。蛹から鮮やかな蝶が出てくる様ならば、実際に見ていなくても映像で見ている人はわりと多いのではないでしょうか。

しかし、その蛹となる前に、彼らに何が起きるのかを見る人は、多くはないかもしれません。

ある年

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「お父さん、オモチャのお城のようなあれは何?」(ある海岸の物語)

「お父さん、オモチャのお城のようなあれは何?」(ある海岸の物語)

子どもの無知の無邪気さ。大人になって思い返すと、あ~なんてことを言ったんだろうと恥ずかしくなる。そんなことって、ないですか。ええ。私はあります。

小学生の時です。
家族でドライブに行きました。運転は父、私が助手席、母と姉が後ろに乗っていたはずです。

今思い出してみるとあれは海沿いの道、秋田市方面から国道7号線を走っていたので、象潟の海にでも行ったのでしょうか。

岩城を過ぎ、

本荘に入り、

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本当の牛の姿。

本当の牛の姿。

母親の実家のすぐ近くに牛乳屋さんがあります。

S牛乳店と言って、小規模ですが母屋の奥は牧場で、ホルスタインが今日も元気にお乳を出してくれています。酪農地帯ではないので、民家が並ぶ中に牛達が暮らしている風景は、現代では少し珍しいものかもしれません。子どもの頃は家族で遊びに行くと、散策がてら父に連れられて、牧場脇の林道から、よく牛さん達を眺めていました。

まだ幼かったある日、実家で遊んでいると、S

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