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批評/時評

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校閲は小説家の仕事です

大手出版社の校閲のプロでも見逃すことはありえる「校閲」。これができていないと、小説のリアリティが減ってしまう場合があります。
「校閲」という言葉をご存じでしょうか? 似た言葉に「校正」という言葉がありますが、両者は似て非なるものです。校正は間違った字を直すことですが、校閲は書かれていることが事実かどうかを調べることです。

私は小説を書くとき、この校閲をしつこく行います。私の書いている小説は現代ド

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【追記】遠野遥『教育』のスポーツ・マンについて

遠野遥『教育』が翌年1月に発売されるそうです。野間文芸新人賞に候補作として挙げられたのですが、まあ、何を読んで候補になったのか分からないですね。音羽がというよりは、純文学界隈が、です。前回、遠野遥『教育』を、インテリたちの知の欺瞞を暴くことに成功したというふうにいいました。けれども、あまりうまく書けていなかったような気がしますので、追記します。

知の欺瞞とは何かといったら、遠野遥『教育』を読んだ

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遠野遥「教育」について

遠野遥「教育」について

それだけ評論家さんたちが激賞するのなら、単行本を出して広く世に問うて欲しい作品である。
基本的には箸にも棒にもかからない作品です。素人として応募したら、小説現代長編新人賞の1次は通るかもしれませんが、2次通過は無理なんじゃないでしょうか。

遠野遥「教育」のいいところは文壇の「知の欺瞞」をさらけ出したという、いわば、アラン・ソーカル的なところでしょう。それだけです。

最近、鴻巣友季子さんの「誤読

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一人称は簡単か?

一人称は簡単か?

※武田綾乃氏のファンには心証を害するおそれのあるエントリーです。

武田綾乃さんの著作『愛されなくても別に』の無料公開されている部分だけを読んで、「一人称小説は簡単」という話がなんとなく分かったので書いてみます。武田綾乃さんに敬意を表して言います。                おまえの文章を一言で表すなら、クソだ(注1)。あれはひどいですね。吉川英治文学新人賞を受賞した作品とのことですが、講談社

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批評と批評家(後編)

批評と批評家(後編)

前回は、鴻巣友季子さんの文芸時評や椹木野衣さんの「平成美術」展に対する作者や批評家の異議申し立てをについて書きました。それまで暗黙の了解として許されてきたであろう「批評行為」が批判の対象になっているという点において、この2つの事件は共通しています。

上記の2つの事件はいずれも、私が以前から「こういう批評行為は果たして許されるのか?」と疑問に思っていたことでした。ただ、批評に決まり事はあるようでい

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批評と批評家(前編)

昨日のエントリー『朝日新聞 文芸時評について』を書きましたが、本来はこのテーマについて話をしたかったのです。

先日の朝日新聞の文芸時評はテキストをおざなりに読んで深い読みをしたことが問題となりました。前のエントリーにも書いた通り、鴻巣さんがああいう読み方をすることは以前にもあったので、何ら驚きはありませんでした。文芸時評というフォーマットが理由では? との声もありましたが、当欄以外の文芸時評はわ

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朝日新聞 文芸時評について

朝日新聞 文芸時評について

朝日新聞の文芸時評に載った小説の解釈をめぐって、小説家の桜庭一樹さんと書評家の鴻巣友季子が争っています。鴻巣さんが書いた「批評」に対して、作者の桜庭さんが「誤読」が生じていると指摘したのです。鴻巣さんは桜庭さんに反駁し、「読みであり批評だ」と主張されました。

私自身、この一件については実は、何の驚きもありませんでした。桜庭さんのお気持ちは分かりますが、鴻巣さんはそもそもこういう書評家であったこと

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