Matsumaru Susumu

地域研究(D2)|人類学|ラテンアメリカの文化・社会|コロンビアの先住民族ワユー|手工…

Matsumaru Susumu

地域研究(D2)|人類学|ラテンアメリカの文化・社会|コロンビアの先住民族ワユー|手工芸品や手仕事|開発と自治|ポリティカル・オントロジー|時にはどうでもいい事も書きたい|モットー「とりあえず1回やってみる」|元・放送作家|HSS型HSP|※コロンビア渡航のため暫くお休み

マガジン

  • テキスト供養

    いろいろあって日の目を見ることのなかった「テキスト」を供養する場所です。テキストにも命があり魂があります。そんなテキストたちの成仏を心から願います。

  • 【読書メモ】を綴じたもの

    【読書メモ】がたまってきたので、マガジンとして綴じておくことにしました。どうでもいいですけど「玉子でとじたもの」も好きです。

最近の記事

  • 固定された記事

先住民族ワユーについて

自己紹介として、僕がお世話になっているラ・グアヒラ(La Guajira)県の先住民族ワユー(Wayúu)について、触れておきたいと思います。 南米コロンビアの北東部、カリブ海に面し、ベネズエラと国境を接するところに、ラ・グアヒラ県はあります。北部のカリブ海に突き出た半島部分は砂漠が広がり、他方、南部はシエラ・ネバダ・デ・サンタ・マルタ山地(Sierra Nevada de Santa Marta)がかかる山地で緑が豊かです。県都はリオアチャ市(Riohacha)です。

    • 「どっちもどっち」言説と「どっちか」言説の非有効性

      南米コロンビアで、4月末から全国的な大規模デモが発生し、5月10日現在も続いています。死者・負傷者も多数出ていて非常に深刻な状況となっています。報道では、新型コロナの感染拡大による財政逼迫を受けた税制改革が、デモのきっかけとされています。ただ一方で、実際にはもっと複雑な社会・経済・政治・歴史・文化的背景があるというのが、僕の理解です。 僕は、現在、現地で暮らしている/滞在している訳ではないので、現地の温度感は残念ながらわかりません。現地の報道や現地の友人・知人のSNSの投稿

      • 移民・難民をめぐる感情:ベネズエラ国民の意識とラ・グアヒラ県の人びとの葛藤

        ※本稿は、2019年1月に作成したものです。 はじめに本稿は、政情不安と経済危機に端を発するベネズエラからの移民・難民の流出と、それをめぐる諸問題について、人びとの「感情」の側面から考察する。より具体的には、ベネズエラ国民に対して実施されたアンケート調査に表出する意識の変遷と、ベネズエラから大量に人が流入するコロンビアのラ・グアヒラ(La Guajira)県の住民が移民に対して抱く感情と、その一方で生まれる連帯の動き、そうした葛藤する感情である。 本稿の構成は、次の通りで

        • 【読書メモ】首都圏に生きるアイヌ民族―「対話」の地平から

          『首都圏に生きるアイヌ民族―「対話」の地平から』関口由彦著、草風館、2007年。 本書は、文化人類学者の関口由彦さんによる、首都圏で暮らすアイヌ民族の人びとのライフストーリーの語りを集めた本です。著者は、アイヌ料理店のレラ・チセでアルバイトをしながら調査を行い、本書をまとめたそうです。 僕は、本書の中で言及される「見る者のまなざし」に着目しました。着目するきっかけとなったのは、次の一文です。 多様なズレを伴った意味づけを生じさせる歩く者の柔軟な日々の営みを、見る者のまな

        • 固定された記事

        先住民族ワユーについて

        マガジン

        • テキスト供養
          5本
        • 【読書メモ】を綴じたもの
          14本

        記事

          紛争・開発・ジェンダー:コロンビア/パナマ国境地帯の先住民族トゥレ

          ※本稿は、2018年に作成したものに修正を加えた。尚、民族名称のトゥレ(Tule)は、クナ(KunaもしくはCuna)とも表記されるが、Morales Gómez(1992)によると、Tuleがより正式であるとされる(Morales Gómez 1992: 65)。そのため本稿ではTuleを用いる。また本論においては「トゥレ民族」ではなく「トゥレ」と表記する。 はじめに半世紀以上に渡って国内紛争が継続しているコロンビアでは、非常に多くの国内避難民が発生してきた。国連難民高等

          紛争・開発・ジェンダー:コロンビア/パナマ国境地帯の先住民族トゥレ

          オンライン講演会:ラテンアメリカ・レクチャーシリーズ⑧「ラテンアメリカにおける先住民の暮らしから学ぶ―コロナ禍以降の世界をいかにして作るか―」(全3回)

          上智大学イベロアメリカ研究所主催のオンライン講演会が、12月7日/14日/21日の全3回、各回17:20より開催されます。 学内・学外のどなたでもご参加いただけますが、視聴参加には登録申し込みが必要です。以下、開催概要です。 ■開催趣旨: 2019年、ブラジルのアマゾン地域の森林火災の急増と深刻化が国内外のメディアで広く報道されました。「地球の肺」と称されるアマゾンの破壊は開発主義とグローバル経済により推し進められてきたものであり、こうした地球環境の急変は決して最近の問

          オンライン講演会:ラテンアメリカ・レクチャーシリーズ⑧「ラテンアメリカにおける先住民の暮らしから学ぶ―コロナ禍以降の世界をいかにして作るか―」(全3回)

          【読書メモ】メキシコ先住民女性の夜明け

          『メキシコ先住民女性の夜明け』ギオマル・ロビラ著、柴田修子訳、日本経済評論社、2005年。 本書は、スペインのジャーナリストのギオマル・ロビラ(Guiomar Rovira)さんの邦訳書です。この本を「伝統と束縛」に着目して読書メモを書いてみたいと思います。着目するきっかけとなったのは、本書の訳者あとがきで言及される次の一文です。 先住民というと『伝統社会に生きる人々』というイメージを持たれがちですが、伝統は不変的なものとは限りません(p. 289)。 本書では、メキシ

          【読書メモ】メキシコ先住民女性の夜明け

          『予告された殺人の記録』:アンヘラ・ビカリオの観点からの考察

          ※本稿は、2014年に作成したものです。 作品の要旨『予告された殺人の記録』(以下、『記録』)は、ガブリエル・ガルシア=マルケス(以下、マルケス)が1981年に発表した中篇小説で、コロンビアのスクレで実際に起きた事件を元に描かれたフィクション作品である。 物語の舞台は、河を通行する船だけが唯一の交通である閉鎖された田舎町。その町で起きた過去の殺人事件を追うために戻ってきた、町の出身者である「わたし」の目線で語られる。その事件は、外部からやってきた富豪バヤルド・サン=ロマン

          『予告された殺人の記録』:アンヘラ・ビカリオの観点からの考察

          【読書メモ】隣のアボリジニ:小さな町に暮らす先住民

          『隣のアボリジニ:小さな町に暮らす先住民』上橋菜穂子著、筑摩書房、2010年。 文化人類学者・上橋菜穂子さんの著書。上橋さんは「守り人」シリーズで作家としても有名です。 本書では、アボリジニが都市に住むことによって生じる、白人との関係性、さらにはアボリジニ同士の関係性の変化について描かれています。その中から、アボリジニ対白人という枠には納まらない、普遍的な構図について着目したいと思います。 第一章のローズマリへのインタビューの中で、「私たちは自分たちの『法』をもっていた

          【読書メモ】隣のアボリジニ:小さな町に暮らす先住民

          ラテンアメリカで大切なことはすべて『マファルダ』から学んだ

          ちょっと言い過ぎ感もあるタイトルですが、でも、どうしても『マファルダ』のことを書いておきたいのです。というのも、アルゼンチン出身の漫画家ホアキン・サルバドール・ラバド(Joaquín Salvador Lavado)さん、より知られた名前としてはキノ(Quino)が、9月30日に88歳で亡くなったからです。生まれ育った地のメンドーサ(Mendoza)で最後を迎えたそうです。 キノは何と言っても、漫画『マファルダ(Mafalda)』の作者として、特にラテンアメリカ地域では超有

          ラテンアメリカで大切なことはすべて『マファルダ』から学んだ

          オンラインワークショップ「新型コロナウイルス禍を生きる人びと―ラテンアメリカ地域研究からのアプローチ―」開催のご案内

          オンライン・ワークショップをZOOMにて開催します。開催概要は以下の通りです。 【開催趣旨】 新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大する中、ラテンアメリカ各国では外出制限措置がとられました。これにより経済活動に困難が生じ、社会・経済的に脆弱な状況にあった人びとの多くが日々の糧と生きる術を奪われました。しかし、問題はコロナ禍によって初めて生じたわけではありません。元来あった問題が、コロナ禍によってより強められ顕在化したといえます。 本ワークショップでは、コロナ禍によりラテ

          オンラインワークショップ「新型コロナウイルス禍を生きる人びと―ラテンアメリカ地域研究からのアプローチ―」開催のご案内

          『ブルシット・ジョブ』とトイレの清掃員

          デヴィッド・グレーバーの『ブルシット・ジョブ』を読んで【読書メモ】を書こうと思ったのだけれども、面白すぎてメモには収まりきれそうもない。本当に面白い本って、読みながら、また読んだあとも、色々と思うところが浮かんできちゃうものだと思います。 『ブルシット・ジョブーークソどうでもいい仕事の理論』デヴィッド・グレーバー著、酒井隆史・芳賀達彦・森田和樹訳、岩波書店、2020年。 アメリカ合衆国の文化人類学者でアクティヴィストのデヴィッド・グレーバー(David Graeber)の

          『ブルシット・ジョブ』とトイレの清掃員

          人は皆「カーニバル」に興じると思うなかれ

          南米コロンビアで、2月のカーニバルというと、カリブ海沿いのアトランティコ(Atlántico)県の大都市バランキージャ(Barranquilla)が観光としては有名なのですが、そこからもっと北東にあるラ・グアヒラ(La Guajira)県のリオアチャ(Riohacha)もカーニバルで盛り上がりを見せます。 2019年2~3月のフィールドワークでは、ちょうどリオアチャのカーニバルの時期と重なりました。カーニバルの時期に合わせて狙って行った訳ではなく、むしろ恥ずかしながら、現地

          人は皆「カーニバル」に興じると思うなかれ

          世界平和の「世界」とは、どこのことだろう?

          「世界平和」っていうフレーズは、理念として素晴らしいはずなんだろうけど、どこかしっくりとこないところがあります。「平和」それ自体は疑いようもなく良いとは思うのですが、それが一度「世界平和」ってなってしまうと、う〜む…って、考えこんでしまいます。 そもそも「平和」って概念は、世界共通なんでしょうか。 平和を希求する指向性は、どこの地域の人びとも共通に持っているような(そうであって欲しいという想いも過分に含みつつ)気がします。でも、希求するその「平和」、それが想定とするところ

          世界平和の「世界」とは、どこのことだろう?

          「固有」名詞では「共有」できない

          SNS(特にFacebookやTwitter)で投稿をするときは、自分の中のひとつのルールとして、「個人名など対象を特定させる言葉をできる限り使わない」というのを設けている。一般の人びと(私人)はもちろんのことだけど、政治家などの公人や有名人も対象としている。といっても緩やかなルールなので、時にはそれらを使ってしまうこともあるかもしれないけれど、そうであったとしても、心がけていることには間違いない。揚げ足取りは、やめましょう。 それは「個人攻撃をしたくない」という気持ちの表

          「固有」名詞では「共有」できない

          【鑑賞メモ】映画「彷徨える河(El abrazo de la serpiente)」

          今回は「読書メモ」ではなく、映画の「鑑賞メモ」です。 南米コロンビアのシーロ・ゲーラ(Ciro Guerra)監督の映画「彷徨える河(El abrazo de la serpiente)」は、2015年5月にコロンビアで劇場公開されました。2015年の第68回カンヌ国際映画祭で監督週間芸術映画賞を受賞し、2016年には第88回アカデミー賞の外国語映画賞に。コロンビア映画として初めてノミネートされました。 記事を書く順番は前後しましたが、この次の作品として、2018年公開の

          【鑑賞メモ】映画「彷徨える河(El abrazo de la serpiente)」