見出し画像

先住民族ワユーについて

自己紹介として、僕がお世話になっているラ・グアヒラ(La Guajira)県の先住民族ワユー(Wayúu)について、触れておきたいと思います。

南米コロンビアの北東部、カリブ海に面し、ベネズエラと国境を接するところに、ラ・グアヒラ県はあります。北部のカリブ海に突き出た半島部分は砂漠が広がり、他方、南部はシエラ・ネバダ・デ・サンタ・マルタ山地(Sierra Nevada de Santa Marta)がかかる山地で緑が豊かです。県都はリオアチャ市(Riohacha)です。

ここで暮らしているのが、国内最大の先住民族ワユーです。先住民人口は国内で30万人ほどです。隣国ベネズエラにも分布はまたがっていて、お隣では約40万人です。コロンビアでは、ワユー人口の約98%が、このラ・グアヒラ県に集中しています。

伝統的な生業としては、農業・漁業・牧畜が主だったものです。しかし、近年の気候変動の影響や経済活動の変化もあり、今では都市部で生活する人びとも多く、賃金労働や観光業(ツアーガイドや宿泊所経営)の従事者もいます。また現在では、ワユー女性たちが編む手工芸品(ワユーバッグやモチーラと呼ばれる)が、土産物やファッションアイテムとして注目されつつあります。

ワユーは母系制社会です。そして、ワユー女性にとって編物仕事は重要な意味があります。民話では、クモがワユーの人びとに編物仕事を教えたとされます。ワユー女性は初潮を迎えると、母屋とは別の離れに中・長期間こもって、母や祖母など年長の女性から編物仕事を習う、という慣習があります。そのようにして、編物の技法は母から娘へ受け継がれてきました。

僕がワユーの人びとと出会うこととなったのは、コロンビアへの1年間の留学がきっかけでした。もともと先住民研究に興味があった僕は、現地の大学の人類学部に所属して、コロンビアの先住民に関する講義をとりました。そのクラスメートのひとりが、ワユーとともに活動する市民団体フンダシオン・タレント・コレクティーボ(Fundación Talento Colectivo)を設立したコロンビア人女性を紹介して繋いでくれたのです。

2016年8月、初めてリオアチャ市を訪れ、市民団体のオフィスを尋ねました。その女性はワユーではないのですが、ワユー女性たちとともにフェアトレードの理念に基づいた手工芸品製作・販売を行っています。というのも、手工芸品を取り扱う中間業者の中には、不当に安い値段で買い取るところもあるからです。また、ワユー女性の中にはかかった労働時間や糸などの原価を基に販売価格を決めていない人もいて、中間業者や観光客の言い値で売ってしまうがために、売れども売れども赤字となっていることもあるようです。そうした状況を打開するため、その市民団体の活動は始まりました。

フンダシオン・タレント・コレクティーボのホームページ

コロンビアから帰国した後、ワユーについてまとめた卒業論文を書き、そして博士前期課程に進み修士論文も終えました。引き続き博士後期課程でも研究しています(←イマココ)。

初めは、ワユー女性たちの手工芸品製作に興味がありましたが、このところは、それとも密接に繋がっている開発にも関心を広げつつあります。ラ・グアヒラ県には世界最大級の露天掘り炭鉱があります。炭鉱のある地域では土地所有権の問題や環境破壊が取り沙汰されています。その一方で、炭鉱会社は地域コミュニティ開発支援事業も行っています。天然資源開発による悪影響を被る人びとや、有形無形の利益を得ている人びと……うーむ、絡まり合ってます。

なので、そのあたりのことをじっくり知りたいので、2021年3月から2年間、コロンビアのラ・グアヒラ県で現地調査を行う予定です。渡航までに、政情不安など何事も無いことを、ただただ祈るばかりです。

出発まで、あと1年。

その節目として、そして現地調査中にも発信したいなと思って、冷やし中華、じゃなくてnoteはじめました。


この記事が参加している募集

自己紹介

真心こもったサポートに感謝いたします。いただいたサポートは、ワユーの人びとのために使いたいと思います。