見出し画像

まいにち易経_0601【楽天知命】天を楽しみて命を知る。故に憂えず。[繋辞上伝:第四章b]

與天地相似。故不違。知周乎萬物而道濟天下。故不過。旁行而不流。樂天知命。故不憂。安土敦乎仁。故能愛。
天地と相い似たり。故にたがわず。万物にあまねくしてみち天下をすくう。故にあやまたず。旁行ぼうこうして流れず。天を楽しみ命を知る。故に憂えず。
土に安んじ仁にあつし。故に能く愛す。


孔穎達と朱子の解釈に従えば、「聖人」を主語にするが、原文では易そのものが主語である。

『知』は智。これは知識が単なる情報の集積ではなく、智慧として実践されるべきものであることを示している。『旁行』は、あまねく行きわたる。
易は天地の理に基づき、物事の吉凶を示し、その判断は狂うことがない。天地すらも易の法則に逆らうことはできないという意味である。易の智慧は万物に広く行き渡り、その道は天下を救済するに足るものだ。
『過』は差の意味である。易の変化は広く自在でありながらも、六位のうちを整然と往来し、放恣に流れることはない。
易の示すところは天の法則であり、人の運命である。天の法則は人にあっては運命となる。これを知ることが「知命」であり、どんな運命であっても喜んで受け入れることが「楽天」である。
つまり、運命を知り、それを受け入れることが天の法則を楽しむことである。易は「憂えるな」と教えるが、それは天がそもそも憂えることがないからだ。
また、易は位を重んじる。各々の位にふさわしい生き方を教える。人が他者を傷つけるのは、その位を越えた利己的欲望によるものであり、天地の無私なる徳恵を学ぶべきである。易は人に、地位に安んじ、利己的欲望に駆られることなく、天地のように仁徳に厚くあれと教える。それによって、人は広く他者を愛することを学ぶ。この一節は、易が天地の徳である智慧と仁を体現していることを説いている。易の道は人に、天地のように広大な智慧と無私の仁を持つことを求めている。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

「楽天」とは、天の理法を喜んで受け入れること、そして「知命」とは、自分の運命を理解し受け入れることを意味します。つまり、私たちに起こるすべてのことは、天から与えられた運命なのです。

しかし、その運命がどのようなものであれ、それを喜んで受け入れることが大切なのです。例えば、起業に失敗して借金を背負ってしまったとしても、「この経験を通して学ぶことができた」と前向きに捉えることができれば、それは運命を受け入れる第一歩になります。

一方で、「いつか大企業の社長になる」と夢を抱きながら、そこに執着し過ぎてしまうと、運命から外れてしまう恐れがあります。だからこそ、「夢は持ちつつ、与えられた状況に感謝する」という心構えが大切なのです。

この言葉は、人生に対するポジティブな姿勢を教えてくれます。「楽天」と「知命」という二つの考え方が含まれていて、どんな運命でも受け入れ、喜びと感謝の気持ちで生きていくことが重要だということです。

例えば、皆さんが困難なプロジェクトに直面したとき、どう感じますか?失敗を恐れて不安になるかもしれませんが、易経の教えに従えば、その困難もまた人生の一部として受け入れ、楽しむことができるのです。これは「楽天主義」の出典でもあります。

ここで、一つ面白い話をしましょう。かつて、ある国王が仙人に運命を占ってもらったところ、「王子は25歳で死ぬ運命にある」と告げられました。王は仙人に頼み込んで、命をつなげてもらったそうです。しかし、25年後の王子の誕生日、彼は宮殿の地下室で蜘蛛に噛まれて死んでしまったそうです。つまり、占いの言葉は的中したわけですね。

このように、我々には予期せぬ出来事がたくさん起こります。しかし、易経は「それらは全て天から与えられた運命なのだから、喜んで受け入れよ」と説いているのです。そうすれば、憂うことはなくなり、人生に喜びが湧いてくるはずです。

私も若い頃は、仕事で上司から厳しく指導されたり、大きなプロジェクトで失敗して業績が振るわなかったりと、辛い経験をたくさんしました。しかし、それらの経験があったからこそ、今の私があると思えば、心から感謝の気持ちに満たされるのです。

つまり、易経は「天の理法を楽しみ、自分の運命を生きる喜びを知れば、憂いはない」と教えているのです。運命とは、天から与えられた掟です。それを受け入れ、喜び感謝して生きていく。これこそが、本当の幸せにつながる道なのではないでしょうか。

皆さんも、これから様々な経験をされると思います。辛いことも嬉しいこともあるでしょう。でも、それらすべてを運命として受け入れることができれば、きっと人生は充実したものになるはずです。夢は持ちつつ、いつも感謝の心を忘れずに、前を向いて歩んでいってください。そうすれば、幸せな人生が待っているはずですから。


参考出典

の理法をしみ、自分の運を生きる喜びをるならば憂いはない。
「楽天」と「知命」は同じ精神である。いかなる運命でも受け容れ、喜び感謝して生きていく。これは、天の働き・情理を楽しむ精神である。
この言葉は、楽天家、楽天主義の出典である。易経は天の理法を学ぶ書。よく学んだなら、真の楽天家となりうるだろう。

易経一日一言/竹村亞希子

易は天地の理になぞらえて、事のよしあしを示す。故に吉凶の判断の結果は狂うことがない。違わずとは、天地すらこれに違う能わずの意味である。
易の含む智慧は。万物にあまねく、易の道は天下を救済するに足る。それは天地の広大な智慧と恵みに似ている。だからこの点でも易と天地とに差はない。
過は差の意味である。また易の変化は、ひろく自在に行きわたって常則がないが(=旁行)、六位のうちを整然と往来して、放恣(ほうし)に流れることはない。
易の示すところは天の法則であり、人の運命である。易は天の法則を楽しみ、おのが運命を知ることを教える。天の法則が人にあっては運命となるので、楽天と知命は別のことではない。運命を知って、それがいかなる物であっても、喜んで受容すること、それが同時に天を楽しむことである。だから易は憂えるなと教える。易が法とる天が、そもそも憂えることがないのだから。

易(朝日選書)/本田濟

#まいにち易経
#易経 #易学 #易占 #周易 #易 #本田濟 #易経一日一言 #竹村亞希子 #最近の学び #学び #私の学び直し #大人の学び #学び直し #四書五経 #中国古典 #安岡正篤 #人文学 #加藤大岳
#創作大賞2024 #オールカテゴリ部門


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?