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まいにち易経_0731【洞察力を養う~風地観の教え】

風地観の卦は、風が地上を広く吹き渡る象を表しているます。風が地上を吹き抜けるとき、その影響は万物に均しく及びます。古代の聖なる王は、この卦に倣い、四方を巡視して民の風俗を詳細に観察し、その土地や人々に適した政策と教化を行いました。
風地観の卦は、時の変化や方向を見極め、兆しを捉える洞察力を説いています。洞察とは、いわば風を観ることです。風は常に流れ続けており、目には見えず、耳で聞くこともできませんが、体感を通じてその強さや方向を知ることができます。時も同様で、目に見えず耳には聞こえません。しかし、周囲のすべてが今という時とその方向を示しているため、注意深く観察すれば見えてくるものです。
風の観察は、私たちの日常生活にも通じます。例えば、風の強さを肌で感じることは、物事の変化を敏感に察知する能力と似ています。風向きが変われば、船の帆を張る方向も変えなければなりません。これを怠ると、船は思わぬ方向に流されてしまいます。人生も同じで、時の流れや変化を見極めることが重要です。
また、古代の聖なる王が四方を巡視して民の風俗を観察したように、私たちも自分の周囲をよく観察することが求められます。人々の習慣や文化を理解し、それに適した行動をとることで、円滑な人間関係や社会の調和を築くことができます。
風の観察から得られる洞察は、現代においても貴重なものです。目に見えないものを見ようとする努力、耳に聞こえないものを聞こうとする意識が、私たちの洞察力を磨きます。風が吹くたびに、その流れを感じ取ることができれば、私たちもまた、時の流れに乗り遅れることなく、生き生きとした人生を送ることができるのです。
こうして観の卦は、風のように柔軟でありながらも、確かな洞察力を持つことの重要性を教えています。風の流れを感じることができれば、人生の風向きも見極められます。時の流れに敏感であることが、成功への鍵といえるでしょう。

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洞察力というのは、私たちの周りで起こっていることの本当の意味を理解する能力のことです。言わば、物事の表面だけでなく、その奥深くにある真実を見抜く力といえるでしょう。

易経の中に「風地観」という教えがあります。これは、洞察力を身につけていく過程を5つの段階で説明しているものです。この5つの段階を、皆さんにもわかりやすく解説していきたいと思います。

第一段階:童観どうかん
最初の段階は「童観す」、つまり幼い子供の目で物事を見ることです。子供は、目の前で何が起こっているかだけを観察します。例えば、雨が降ってきたとき、子供はただ「雨が降っている」とだけ感じます。これは現象そのものを見る段階です。

第二段階:うかがい観る
他人の見解を聞いて、物事を知ることです。まだ自分の視野は狭く、他人の意見や情報に頼ります。例えば、ニュースを見て「誰かが何かを言ったからそうなんだ」と理解するようなものです。

第三段階:我がせいを観る
主観的に観ることです。自分の経験や考えを基準にして物事を見る段階です。自分の視点から物事を見ているので、まだ客観的とは言えませんから、完全な洞察には至りません。

第四段階:国の光を観る
この段階に達すると、物事を客観的に見ることができるようになります。国全体の情勢やリーダーのあり方を、小さな兆候から察する力が身につきます。例えば、企業の経営者が市場の動向を読み取り、戦略を立てるときのような視点です。

第五段階:民を観て我が生を観る
これが最も高度な洞察力の段階です。周りで起こっていることを鏡のように観察し、そこから自分は何をすべきかを考えることができるようになります。

では、どうすれば洞察力を高めることができるのでしょうか?
いくつかのヒントをお伝えしたいと思います。
まず、好奇心を持ち続けることです。「なぜ?」「どうして?」と常に疑問を持ち、その答えを探る習慣をつけましょう。例えば、ニュースを見たとき、単に情報を受け取るだけでなく、その背景にある原因や影響について考えてみるのです。

次に、多様な経験を積むことです。異なる文化や考え方に触れることで、物事を多角的に見る力が養われます。旅行に行ったり、様々な分野の本を読んだり、異なる背景を持つ人々と交流したりすることが大切です。

そして、自分の考えや行動を振り返る時間を持つことも重要です。一日の終わりに、その日あった出来事や自分の行動について考える時間を作ってみてはいかがでしょうか。これは、自己洞察力を高める良い方法です。

「三人寄れば文殊の知恵」という言葉があります。これは、三人が集まれば素晴らしい知恵が出るという意味ですが、まさに洞察力を養うためのヒントになります。他人の意見を取り入れ、それを自分の視点と融合させることで、より深い洞察が可能になるのです。

また、アインシュタインが言ったとされる「重要なことは目に見えない」という言葉も洞察力に通じます。彼は、物理学の世界で見えない現象を数式で解明しましたが、私たちもまた、目に見えない部分にこそ真実があることを理解する必要があります。

最後に、忘れてはいけないのが、謙虚さです。自分の考えが常に正しいとは限らないことを知り、他人の意見にも耳を傾ける姿勢が大切です。これにより、より広い視野で物事を見ることができるようになります。

洞察力を高めることは、一朝一夕にはいきません。しかし、日々の小さな努力の積み重ねが、やがて大きな力となって現れるのです。皆さんが将来、どんな立場にいるにせよ、この洞察力は必ず役立つはずです。

例えば、ビジネスの世界では、市場の動向を読み取り、次の一手を打つ力になるでしょう。政治の場では、国民のニーズを正確に把握し、適切な政策を立案する助けになるはずです。また、日常生活においても、周りの人々の気持ちを理解し、より良い人間関係を築くことができるでしょう。


参考出典

洞察とは物事の裏にある本流を見抜くこと。また、外側に現れない人の心、内面の動きを読むことも洞察である。
洞察力を説く風地観の卦には、洞察に至る段階が次のように記されている。
第一「童観す」:幼い子供の目。何が起きているかという現象だけを観る。
第二「窺い観る」:人の見解を聞いて物事を窺い知る。広く世間を知らず、小さな視野で物事を観る。
第三「我が生を観る」:主観的に観る。
自分を省みて、出処進退の行動を判断するが、まだ客観視には至らない。
第四「国の光を観る」:物事を客観視できる段階。国民のささいな表情やしぐさから、その国のリーダーのあり方、国全体の情勢を察する。表面にとらわれず物事の質を観る段階である。
第五「民を観て我が生を観る」:起こっている物事を写し鏡のように観、物事全体を正しく導くために何をすべきかを知る。
要するに、現象だけを観る、人の話から物事を窺い観る、自己中心的に物事を観る段階では洞察には及ばない。深い洞察のためにはまず、全体を広く客観視する大局観を養わなくてはならないのである。

易経一日一言/竹村亞希子

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