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まいにち易経_0617【咸臨】咸じて臨む。貞にして吉なりとは、志正を行うなり。[19䷒地澤臨:初九]

咸臨貞吉。志行正也。

かんじてのぞむ。貞吉ていきちなるは、こころざせいを行うなり。


部下の信頼を得て、自分の道をしっかり歩むことで、運を味方につける。志を正しく持ち、人としての道を真っ直ぐに進んでいるからこそ、成功を手にするのだ。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

「咸臨」とは、上に立つ者と下にいる者が心で感じ合い、一致協力して事に臨むことを意味します。これにはリーダーとそのチームが心を一つにして、共に目標に向かって進む姿が描かれています。
1860年、勝海舟が艦長を務めた咸臨丸が日本初の太平洋横断を成し遂げました。この「咸臨丸」の名前も、まさにこの「咸臨」から取られています。太平洋を渡るという大事業を成し遂げるためには、全員の協力が不可欠だったのです。船の乗組員が一丸となり、互いの役割を理解し、協力し合うことでこの偉業を達成しました。
このエピソードから学べるのは、リーダーシップとは決して一人で成し遂げるものではないということです。リーダーはチームの一員として、みんなが喜んで協力し合える環境を作り出すことが大切です。そして、その協力があって初めて大きな目標を達成できるのです。
現代の企業でも同じことが言えます。あるプロジェクトを成功させるためには、リーダーがチーム全体をよく理解し、個々のメンバーの強みを引き出し、全員が目標に向かって一緒に進むことが必要です。それぞれのメンバーが自分の役割を果たし、互いに助け合うことで、プロジェクトは成功に近づくでしょう。

リーダーとしての役割は、単に指示を出すことではありません。むしろ、チーム全体の調和を保ち、みんなが自発的に動けるような環境を作ることです。この点について、私自身の経験を少し話させてください。
私はかつて、大企業の経営者として多くのプロジェクトを担当してきました。その中で最も成功したプロジェクトは、必ずと言っていいほど、チーム全体が一体となって取り組んだものでした。ある時、新しい製品の開発に取り組んだ際には、開発チーム、マーケティングチーム、販売チームのすべてが一つの目標に向かって動いていました。各部門のリーダーたちは、それぞれのチームメンバーと密にコミュニケーションを取り、全員が自分の役割を理解し、互いに助け合いました。その結果、製品は市場で大成功を収めました。

このように、リーダーシップには「咸臨」の精神が必要です。全員が心を一つにし、協力し合うことで、大きな成果を得ることができるのです。
また、リーダーシップのもう一つの側面として、信頼関係を築くことが挙げられます。リーダーが信頼される存在であることは、チームの一体感を高め、協力を促進する重要な要素です。信頼を築くためには、リーダー自身が誠実であり、透明性を持って行動することが求められます。言葉だけでなく、行動で示すことが大切です。

さらに、リーダーはチームメンバーの成長をサポートすることも重要です。メンバーが自分の能力を最大限に発揮できるように導くことで、チーム全体の力が引き上げられます。例えば、ある若手社員が新しいプロジェクトに挑戦する機会を与えられたとします。その際、リーダーが適切な指導と支援を行うことで、その社員は自信を持ち、新たなスキルを身につけることができるでしょう。そして、その成長がチーム全体の成果につながるのです。

最後に、リーダーシップとは常に学び続けることでもあります。自分自身の成長を止めず、新しい知識やスキルを積極的に取り入れる姿勢が大切です。時代や状況が変わる中で、柔軟に対応し、最適な判断を下せるリーダーであることが求められます。

今日の話を通じて、皆さんが「咸臨」の精神を理解し、それを実践することで、素晴らしいリーダーとして成長していくことを願っています。リーダーシップは一人ではなく、チーム全体の力で成し遂げるものです。皆さんが将来、どのような場面でも心を一つにして大きな目標を達成できることを期待しています。


参考出典

「咸臨」は上に立つ者、下にいる者、君臣が心で感じ合い、一致協力して事に臨んでいくこと。それぞれが悦んで応じ合い、正しい道を行き、志を行う。そのゆえに吉なりとある。万延元年(1860年)、日本人初の太平洋横断を成し遂げた咸臨丸(艦長・勝海舟)の船名はここからとった。太平洋横断という大事業を成し遂げるには、全員の協力が欠かせないことからの命名であろう。

易経一日一言/竹村亞希子

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