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まいにち易経_0717【疾風迅雷】風雷は益なり。君子もって善を見ればすなわち遷り、過ちあればすなわち改む。[42䷩風雷益:象伝]

象曰。風雷益。君子以見善則遷。有過則改。

象に曰く、風雷ふうらいあるは益なり。君子以て善を見てはうつり、過ちあれば改む。

風が吹くと雷がその力を増し、雷が鳴ると風がさらに勢いを増す。猛烈な風と雷が互いに影響し合うことで、増益の象徴となる。
君子はこれを理解し、他人の優れた点を取り入れて自らの徳を高める。良い行いを見ればすぐに見習い、過ちがあれば速やかに改める。こうして、絶えず自身の美徳を磨き続ける。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

「風雷益」という言葉を聞いて、どんなイメージが浮かぶでしょうか? 風が吹き、雷が鳴る……そんな激しい自然現象を思い浮かべるかもしれません。でも、この卦が教えてくれる本当の意味は、私たちの人生や成長に深く関わるものなのです。

まず、「益」という字に注目してください。これは「増える」「プラスになる」という意味です。つまり、風と雷が互いに影響し合うことで、何かが増えていく……そんなイメージですね。

自然界では、風が吹くと雷の力が増し、雷が鳴ると風がさらに勢いを増します。これって、まるで私たち人間社会のようじゃありませんか? 誰かの良い行動に触発されて、自分も頑張ろうと思うことってありますよね。それが「風雷益」の教えの本質なのです。

さて、ここで皆さんに質問です。自分の周りにいる人たちの、どんな点に注目していますか?

多くの人は、つい他人の欠点や短所に目が行きがちです。「あの人は〇〇ができていない」「××さんは△△が下手だ」なんて考えてしまうものです。でも、「風雷益」の教えは、そうではありません。

この卦が教えてくれるのは、他人の優れた点、良いところに注目することの大切さです。そして、それを自分の中に取り入れていくことの重要性なのです。

例えば、チームの中に、プレゼンテーションが上手な人がいたとします。その人の話し方や資料の作り方、聴衆への接し方などをよく観察し、「なるほど、こうすればより効果的に伝わるんだ」と学び取る。そして、次に自分がプレゼンをする機会があったら、その良いところを取り入れてみる。

これが「風雷益」の言う「善を見ては遷る」ということなのです。「遷る」というのは、「移る」「変わる」という意味です。つまり、良いものを見たら、すぐにそちらに移っていく、変わっていく……そんな柔軟さと積極性が大切だと教えてくれているのです。

「風雷益」の教えのもう一つの重要な点は、「過ちあれば改む」ということです。これは、自分の間違いや失敗に気づいたら、すぐに改善するということです。

ここで大切なのは、「過ち」を恐れないことです。誰でも間違いを犯します。完璧な人間なんていません。でも、その過ちにどう対処するかが重要なのです。

例えば、プロジェクトを進めている中で、自分の判断ミスで問題が発生したとします。そんな時、どうしますか? 言い訳を考えたり、責任逃れをしたりしていませんか?

「風雷益」の教えは、そうではありません。過ちに気づいたら、すぐに認めて改善する。それが本当の意味での成長につながるのです。

ここで、もう一つ興味深い例を挙げましょう。皆さんは「カイゼン」という言葉を聞いたことがありますか? これは日本の製造業から生まれた概念で、今では世界中で注目されています。

カイゼンの本質は、小さな改善を継続的に行っていくことです。大きな変革を一度にするのではなく、日々の小さな改善の積み重ねが、最終的には大きな成果につながるという考え方です。

これって、まさに「風雷益」の「過ちあれば改む」という教えと通じるものがありませんか? 小さな間違いや非効率な部分に気づいたら、すぐに改善する。それを継続的に行っていく。そうすることで、個人としても、組織としても、着実に成長していけるのです。

さて、ここまでお話ししてきて、皆さんの中には「そんなの簡単じゃない」と思う方もいるかもしれません。確かに、他人の良いところを見つけて取り入れたり、自分の過ちをすぐに改めたりするのは、言うは易く行うは難しです。

でも、ここで思い出してほしいのは、「風雷益」という言葉の本来の意味です。風と雷が互いに影響し合って、力を増していく……これは一朝一夕には起こりません。少しずつ、でも確実に力を増していくのです。

私たちの成長も同じです。今日から完璧になろうとか、一気に大きく変わろうとか、そんな無理をする必要はありません。毎日少しずつ、他人の良いところを見つけて取り入れる。小さな間違いに気づいたら、すぐに改善する。そういった小さな積み重ねが、やがて大きな成長につながるのです。

最後に、皆さんにお願いがあります。今日、この場を去る時、周りの人の良いところを一つ見つけてください。そして、それを自分の中に取り入れる方法を考えてみてください。また、自分の小さな改善点も一つ見つけてみてください。そして、それをすぐに実行に移してみてください。

これが「風雷益」の教えを実践する第一歩となるでしょう。そして、それを継続していくことで、皆さん一人一人が、そして皆さんが所属する組織が、着実に成長していくはずです。


参考出典

激しく吹く風と轟く雷。これに倣って、人の善い所を見たら風のように速やかに移り学び、自分に過失があったなら、雷のように決行して改めよ、と教えている。それは自分だけの益に止まらず、他人にも益をもたらすことになる。

易経一日一言/竹村亞希子

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