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まいにち易経_0714【分不相応が招く災難】負い且つ乗り、冦の至るを致す。[40䷧雷水解:六三]

六三。負且乘。致冦至。

六三は、る、こうの至るをいたす。

『負』は荷物を背負うこと:身分の低いことを示す。『乗』は車に乗ること:ほんらい車に乗るのは身分が高い人。『寇』は敵や賊を指す。荷物を背負って運ぶべき人夫が車に乗るのは、全く釣り合いが取れていない。これでは賊に襲われる危険がある。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

本日は、「雷水解」の「六三」についてお話しましょう。

『荷物を背負いながら馬車に乗り、そして強盗に襲われる』

一見すると、何だか変な状況に思えますよね。でも、これには重要な意味があるのです。

まず、「荷物を背負う」というのは、本来であれば身分の低い人がする仕事です。昔の中国では、身分の低い人々が重い荷物を背負って運んでいました。一方で、「馬車に乗る」というのは、身分の高い人がすることでした。

ここで問題が生じます。本来なら荷物を背負うべき人が、なぜか馬車に乗っているのです。これは、言わば「分不相応」な状態です。自分の立場や能力に見合わない高い地位にいる状況を表しているのです。

そして、その結果どうなるか。「強盗に襲われる」のです。これは比喩的な表現で、周りの人々から批判や攻撃を受けるということを意味しています。

皆さんも、学生時代に「生徒会長」や「クラス委員長」などの役職に就いた経験があるかもしれません。もし、その役職に必要な能力や経験が不足していたら、どうなるでしょうか? クラスメイトからの信頼を得られず、批判の的になってしまうかもしれません。これが、まさに「強盗に襲われる」状態なのです。

ここで、私の経験をお話しさせていただきます。私が若かりし頃、ある大きなプロジェクトのリーダーに抜擢されたことがありました。その時、私はまだ経験も浅く、必要なスキルも十分ではありませんでした。しかし、上司の期待に応えたいという思いから、その役割を引き受けてしまったのです。

結果はどうだったでしょうか。チームメンバーからの信頼を得られず、プロジェクトは混乱に陥りました。私は日々のストレスに押しつぶされそうになり、最終的にはプロジェクトを途中で降りることになってしまいました。これは、まさに「荷物を背負いながら馬車に乗り、強盗に襲われる」状況だったのです。

この経験から、私は重要なことを学びました。それは、自分の能力と立場を正しく認識することの大切さです。

皆さんは、将来のリーダーとして期待されている方々です。だからこそ、この教訓を心に留めておいてほしいと思います。野心を持つことは素晴らしいことです。しかし、その野心は現実的で、自分の能力に見合ったものであるべきです。

たとえば、プロジェクトリーダーになりたいと思ったら、まずはチームメンバーとして経験を積むことから始めましょう。そして、小さなタスクのリーダーを任されたら、それをしっかりとこなす。そうやって、一歩一歩、着実に経験と能力を積み重ねていくのです。

これは、ちょうど階段を上るようなものです。一段飛ばしで上ろうとすると、転んでしまうかもしれません。しかし、一段ずつ確実に上っていけば、最終的には高いところまで到達できるのです。

また、自分の能力を正しく認識することも重要です。これは、自分を過小評価せよということではありません。むしろ、自分の長所と短所を冷静に分析し、それを踏まえて行動することが大切なのです。

例えば、あなたが数字に強く、分析力があるとします。しかし、人前で話すのは苦手かもしれません。そんな時、いきなり営業部門のトップになろうとするのは賢明ではないでしょう。まずは、自分の強みを活かせる財務部門などで実績を積み、その間に弱点を克服していく。そうすることで、将来的により大きな責任を担えるようになるのです。

さて、ここで皆さんに考えてほしいことがあります。自分の現在の立場と能力を冷静に分析してみてください。そして、次のステップとして何を目指すべきか、どのようなスキルを身につける必要があるかを考えてみてください。

これは、単に謙虚になれということではありません。むしろ、自分の可能性を最大限に引き出すための戦略を立てるということです。自分の能力を過大評価せず、かといって過小評価もせず、正確に把握すること。そして、その認識に基づいて、着実にステップアップしていくこと。これが、真のリーダーシップの基礎となるのです。

また、周りの人々の声に耳を傾けることも大切です。自分では気づかない長所や短所を、他人は見抜いているかもしれません。謙虚に他者の意見を聞き、それを自己分析に活かすことで、より正確な自己認識ができるようになります。

最後に、失敗を恐れないことも重要です。「荷物を背負いながら馬車に乗る」ような状況に陥ってしまっても、それは貴重な学びの機会となります。失敗から学び、次に活かすことができれば、それはむしろ成長の糧となるのです。

ただし、できる限り大きな失敗は避けたいものです。そのためにも、自分の能力と立場を正しく認識し、着実にステップアップしていく姿勢が大切なのです。

皆さんには、大きな可能性があります。その可能性を最大限に引き出すためにも、今日お話しした「雷水解」の教訓を心に留めておいてください。自分を正しく知り、着実に成長していく。そうすることで、皆さんは必ず素晴らしいリーダーになれると信じています。

これからの人生で、様々な挑戦や困難に直面することがあるでしょう。そんな時は、この「雷水解」の教訓を思い出してください。そして、自分の立場と能力を冷静に見つめ直し、次のステップを慎重に選んでいってください。

皆さんの前途には、輝かしい未来が待っています。その未来に向かって、一歩一歩着実に歩んでいってください。私は皆さんの成長と成功を、心から応援しています。

参考出典

荷物を背負い、馬車に乗り、強盗に襲われる、という意味。これは実力のない者が分不相応な高い身分に就くことに喩えられる。分不相応であるが故に世聞から好奇の目で見られて、位を奪われるということである。
分に過ぎた地位にいることは、自分から災難を招くようなものだと教えている。

易経一日一言/竹村亞希子

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