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まいにち易経_0716【知者は水を楽しむ】険の時用大いなる哉。[29䷜坎為水:彖伝]

險之時用大矣哉。

険の時用大じようおおいなる哉。

険は険難~苦しみ悩む険しくて困難なさま。時用とは、ネガティブな時をあえて用いること。困難が重なるほど、人の本性が輝くもの。坎卦は困難を克服する道理を示す。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

まず、「坎為水」という言葉の意味からお話ししましょう。
「坎」は険難や苦難を表し、「水」はその象徴なのです。つまり、この卦は人生における困難な時期を表しています。

皆さんも、様々な困難に直面することでしょう。時には、その困難が何重にも重なって、まるで深い谷底に落ちたような気分になることもあるかもしれません。しかし、易経はそんな時こそ大切だと教えているのです。

「険の時用大いなる哉」
これは、困難な時期こそ、大きな意味があるということを示しています。私たちは往々にして、困難を避けたがります。でも、実はその困難こそが、私たちを成長させる最大のチャンスなのです。

孔子は「知者は水を楽しむ」と言いました。これは一見、矛盾しているように思えます。水は危険で、時に人命を奪うこともあります。でも、水は同時に生命の源でもあるのです。賢い人は、その水の性質を理解し、うまく活用する方法を知っているのです。

皆さんも、困難に直面した時、その困難から逃げるのではなく、どうすればその状況を活かせるか、考えてみてください。それが「時用」、つまり時を用いるということなのです。

私自身、会社経営の中で幾度となく危機に直面しました。倒産の危機もありました。その時は本当に苦しく、逃げ出したくなりました。でも、その危機に正面から向き合い、社員と一緒に乗り越えたことで、会社は強くなり、私自身も成長できたのです。

今、振り返ってみると、あの苦しかった時期こそが、私の人生において最も価値ある時間だったと感じています。これこそ、易経が教えている「険の時用大いなる哉」の意味なのです。

皆さんにも、これから様々な困難が待ち受けているでしょう。新しい仕事に挑戦する時、大きなプロジェクトを任された時、人間関係で悩んだ時……。そんな時、この「坎為水」の教えを思い出してください。

困難は、皆さんを押しつぶすものではありません。それは、皆さんを鍛え、成長させるチャンスなのです。水が岩を削るように、少しずつでも確実に前進していけば、必ず道は開けます。

そして、困難を乗り越えた後に振り返った時、きっと皆さんも「あの時の苦労があったからこそ、今の自分がある」と感じることができるはずです。それが、「険の時用大いなる哉」の真の意味なのです。

こうして見てみると、「坎為水」の教えは、単に困難を乗り越えることだけでなく、人生をより豊かに、より意味深いものにする知恵が詰まっていることが分かります。

皆さんがこれから歩む人生の道のりは、決して平坦ではないでしょう。でも、その一つ一つの困難が、皆さんを成長させ、より強く、より賢明な人間に変えていくのです。

ですから、困難に出会ったとき、それを避けようとするのではなく、「よし、これは成長のチャンスだ」と前向きに捉えてください。そして、その困難と正面から向き合い、乗り越えていってください。


参考出典

坎為水の「坎」「水」は険難・苦難を表す。壮絶な険難が度重なる時である。険難という時は用い難いが、あえて用いて学ぶことを「時用」という。これは人生において絶大な効用があると教えている。
孔子は『論語』の中で「知者は水を楽しむ」と説いている。「苦しみを楽しむ」など非常なる苦しみの渦中にあっては考えられないが、逃げずに乗り越えた後に振り返れば、あの苦難は大いなる時であったとさえ思える、と易経はいうのである。

易経一日一言/竹村亞希子

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