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まいにち易経_0607【危うき者】危うき者は、その位に安んずる者なり。亡ぶる者は、その存を保つ者なり。乱るる者は、その治を有つ者なり。[繋辞下伝:第五章]

子曰。危者。安其位者也。亡者。保其存者也。亂者。有其治者也。

子曰く、危うき者は、其のくらいやすんずる者なり。亡ぶる者は、其の存を保つ者なり。乱るる者は、其のたもつ者なり。


孔子はこう述べている。「常に現状に危機感を抱く者は、その地位を安定して保てる。常に滅亡の可能性を考え自戒する者は、その存続を維持できる。常に乱れることを心配する者は、その安定した状態を長く保てる。だからこそ、君子は安定しているときも危機感を持ち、存続しているときも滅亡を念頭に置き、治まっているときも乱れることを警戒する。これにより、地位を確固たるものにし、国家を長期にわたって治めることができるのだ」と。

安泰は決して盤石ではないというのは、歴史の教訓である。思えば、強固だと思われていた王朝や帝国が、何度もその座を揺るがされてきた。例えば、ローマ帝国。古代世界の覇者として繁栄を極めたが、内紛や外敵の侵入により、その巨大な領土は崩壊へと向かった。安定していると思われる時こそ、油断は禁物だ。まさに「平時の油断が戦時の惨事を招く」というわけだ。

状況は常に変わる。これは物理学的にも言えることだ。エントロピーの増大は避けられない自然の法則であり、秩序ある状態から無秩序へと向かう力が働く。つまり、完璧な安定などというものは、自然界においても存在しないのだ。だからこそ、私たちは常に変化に対して敏感であるべきだ。

安定期にはしばしば「壊乱の兆し」が現れる。例えるなら、静かな湖面に突然生じる波紋のように、見逃しがちな小さな変化が大きな問題へと発展することがある。この兆しを見逃さず、早めに対処することで、大きな危機を回避できる。日常生活でも、職場でも、国家運営においても、同じことが言える。

要は、安心しきってはいけないということだ。常に自戒し、警戒を怠らず、状況の変化に敏感であることが求められる。これこそが真の安泰を保つための秘訣であり、永続する繁栄の鍵となるだろう。歴史や自然の教訓を胸に、我々は今日も気を引き締めて生きていかなければならない


参考出典

盤石ばんじゃくと安心しきっていると地位が危うくなる。いつまでも存続すると思っていると亡ぶ。よく治まっていると気を抜けば乱れていく。
時は常に変化して状況は変わる。盤石の安泰などあり得ない。
壊乱かいらんの兆しは必ず油断する安定期に生ずる。自戒警戒して対処に備えるべきである。

易経一日一言/竹村亞希子

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