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まいにち易経_0901【みるみるわかる観る力】国の光を観る。[20䷓風地観:六四]

六四。觀國之光。利用賓于王。 象曰。觀國之光。尚賓也。

六四は、国の光をる。もって王にひんたるに利あり。 象に曰く、国の光を観る、賓たらんことをこいねがうなり。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

「国の光を観る」とは、その国の風俗や習慣、そして民の働く姿を観察することを指します。例えば、皆さんが新しいプロジェクトを始めるとき、その会社のオフィスや社員の様子を観察することで、どのような文化が根付いているか、経営方針がどのように反映されているかを理解することができます。

ここで重要なのは、ただ見ているだけではなく、「観る」ことです。つまり、表面的なことだけでなく、深層にある真実を見抜くことです。皆さんがリーダーとして成功するためには、この深い洞察力が必要です。

では、なぜ「国の光を観る」ことが大切なのでしょうか?

それは、表面的なものだけでなく、その奥にある本質を見抜く力を養うためです。例えば、会社の中を歩いてみて、社員の机の状況を観察するだけで、その会社のリーダーの在り方や経営方針が分かることがあります。整理整頓された机が多ければ、規律正しい会社文化があることが推測できますし、個性的な飾りつけが許されているなら、自由な雰囲気の会社かもしれません。

これはまさに「観光」の語源にもつながります。「観光」とは、観察することで未来を予測し、計画を立てることです。リーダーとして皆さんも、このような観察力を磨いていく必要があります。

ここで、私が若い頃に経験した話をひとつ。

新入社員のころ、上司から「工場を見てこい」と言われました。最初は何をすればいいのか分からず、ただぼんやりと見て回っていました。しかし、何度も足を運ぶうちに、少しずつ見えてくるものが変わってきたのです。

例えば、作業員の方々の動きを観察していると、無駄な動作が多い工程があることに気づきました。また、休憩時間の様子を見ていると、部署間のコミュニケーションが不足しているようにも感じました。

これらの「気づき」を上司に報告したところ、「よく観察している」と褒められました。そして、その後の業務改善プロジェクトに参加する機会をいただいたのです。

このように、「観る」ということは、単に目で見るだけではありません。心で感じ、頭で考え、そこから新しい価値を生み出すことなのです。

ここで大切なのは、単に出世するためだけに「観る」のではないということです。真の目的は、組織や社会全体をより良くすることにあります。そのために必要な洞察力を養い、それを適切に伝える能力を身につけることが重要なのです。

皆さんの中には、「でも、新入社員の私たちに何ができるの?」と思う方もいるかもしれません。しかし、心配する必要はありません。新鮮な目で見ることができるのは、むしろ皆さんの強みなのです。

長年同じ環境にいると、人は「当たり前」と思うことが増えてきます。しかし、新しく入ってきた人の目には、その「当たり前」が不思議に映ることがあります。それが新しい発見や改善のきっかけになることも多いのです。

ですから、皆さんには恐れずに「観る」ことをお勧めします。職場の雰囲気、先輩たちの働き方、お客様の反応、すべてが学びの対象になります。そして、その観察から得た気づきを、適切なタイミングで、適切な相手に伝えていくのです。

今日お話しした「観る」という行為は、実は人生のあらゆる場面で役立つスキルです。ビジネスの場だけでなく、家族との関係、友人との付き合い、地域社会との関わりなど、様々な状況で活かすことができます。

人生は長いようで短いものです。しかし、「観る」力を磨き続ければ、その一瞬一瞬がより豊かなものになるはずです。


参考出典

観光
観光旅行の「観光」の語源になった言葉である。
「国の光を観る」とは、一国の風俗や習慣、また民の働く姿を観て、国勢や将来を知ることである。
会社組織でいえば、社員の机の状況を観ただけで、その会社のリーダーのありさまや経営方針を察知するようなものである。
これには深い洞察力が要求される。そのように兆しを察する能力を「観光」という。

易経一日一言/竹村亞希子

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