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まいにち易経_0615【釣瓶を壊す】汔んど至らんとして、またいまだ井に繘せず、その瓶を羸るは、凶なり。[48䷯水風井:卦辞]

汔至。亦未繘井。羸其瓶。凶。

ほとんど至らんとして、たいまだせいつりいとせず、そのつるべやぶる。凶なり。


井戸の水を汲もうとして釣瓶つるべが水に届かなかったり、また釣瓶自体も準備していなかったり、あるいは釣瓶が壊れていたりしたら、せっかくの井戸も活用することができない。管理者失格!

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

『水風井』の卦辞は、井戸とその管理を通じて、組織運営やリーダーシップの重要性を説いています。

まず、井戸の話から始めましょう。皆さんは井戸というものを見たことがありますか?昔の井戸は、地面を掘り下げて水を汲み上げるためのものでした。現代の私たちが水道の蛇口をひねれば水が出ることに比べると、とても手間がかかるものです。しかし、この井戸というものが、実は組織やリーダーシップについて多くのことを教えてくれるのです。

井戸を掘ること自体が大きな労力を必要とします。これは、組織を築き上げることに似ています。優れた組織を作るためには、時間と努力を惜しんではなりません。そして、井戸の底には常に新鮮な水が湧き出しています。これは、組織の現場で働く人々、つまりフロントラインのスタッフたちを象徴しています。彼らは組織の生命線であり、常に新鮮なアイディアやエネルギーを提供してくれる存在です。

次に、井戸の水を汲み上げるためには「釣瓶(つるべ)」が必要です。釣瓶はバケツのようなもので、井戸の水を汲むための重要な道具です。この釣瓶がしっかりしていなければ、水を汲み上げることができません。これは、組織における中間管理職やリーダーたちの役割に相当します。彼らがしっかりと機能しなければ、現場の力を活かすことができず、組織全体が機能しなくなってしまいます。

例えば、どれだけ立派な井戸があったとしても、釣瓶のロープが途中で切れてしまったり、釣瓶自体が壊れてしまったりすれば、水は汲み上げられません。このような事態は、組織においても同様です。中間管理職がうまく機能しなければ、現場の意見やニーズが経営陣に届かず、組織全体が停滞してしまうのです。

では、どうすれば釣瓶をしっかりと管理し、井戸からの水を絶えず供給できるのでしょうか?ここで重要なのは、常に管理を怠らないことです。皆さんが将来リーダーとなる際には、現場の声に耳を傾け、管理体制をしっかりと整えることが求められます。

例えば、ある大企業での話ですが、新しい製品のアイデアが現場の若手社員から上がってきたことがあります。しかし、そのアイデアは中間管理職のフィルターを通る際に、多くの修正や却下を受け、最終的には経営陣の耳に届きませんでした。結果として、その企業は市場のニーズを見逃し、競合他社に先を越されてしまいました。このような事例からも、現場の声を正確に、そして迅速に吸い上げることがいかに重要かがわかります。

さらに、井戸の水が常に澄んでいるかどうかを確認することも大切です。これは、組織における人材の質を意味します。優れた人材がいることで、組織は健全に機能し続けることができます。しかし、不正や怠慢があれば、井戸の水は濁り、組織は腐敗してしまいます。

皆さんがリーダーとして組織を率いる際には、常に人材の質を高め、維持する努力を怠ってはなりません。例えば、ある会社では定期的に社内研修やスキルアップのためのプログラムを実施し、社員一人ひとりの成長を支援しています。このような取り組みが、組織全体の活力を維持し、競争力を高めることにつながるのです。

以上が、易経『水風井』から学べるリーダーシップと組織運営の教えです。皆さんがこれからリーダーとして成長し、組織を率いていく際には、この井戸の教えを心に留めておいてください。現場の声を大切にし、中間管理職の役割をしっかりと果たし、人材の質を維持することが、成功への道を開く鍵となるでしょう。


参考出典

水風井は井戸の性質、その用い方を説く卦。そこから組織の人事や管理についての教えを得ることができる。
井戸は川や泉と違い、人の手によって築かれる。水を汲むには管理が必要である。
「井」という字は古字では「丼」と書く。真ん中の「丶」は井戸の釣瓶である。
立派な井戸があっても、水を汲み上げる釣瓶が水面に届かないとか、縄が途中で切れるとか、瓶が壊れるなどしたら、水は汲み上げられない。井戸は用をなさず、死活問題になる。
井戸の構造、効用から会社組織を考えるならば、井戸の底は新鮮な水が湧き出す現場で、内壁は中間管理職や取締役にあたる。
経営者の役目は全体を把握することである。深くまで目を行き届かせるためには、しっかりとした管理体制が必要になる。
人々を養う水は澄んでいるか、優れた人材が用いられているか、釣瓶が至らないような怠慢や釣瓶を壊すような不正はないか、常に管理を怠ってはならない。

易経一日一言/竹村亞希子

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